第24期雀竜位決定戦観戦記 最終日(12回戦)

【担当記者:中島由矩】

12回戦(渡邊-大川-尻無濱-澤崎)

「お疲れ様です。雀竜位決定戦の観戦記者を募集します」

という問いかけに対し、

「12回戦を希望します」

という返信をしたのには理由があって、筆者はまだタイトル戦特有の駆け引きについて、ちゃんと理解していないのだと思う。だから後半13回戦〜15回戦までを書くのは、まだ時期尚早だろう、と。

ところがこの12回戦は、早くもできた【大川冬馬包囲網】に対し、大川が必死に打開しようとする姿が視聴者の胸を打ち、渡邊暁大・澤崎彰太郎・大川冬馬による三軒リーチのめくり合いが目を釘づけにし、打倒大川の急先鋒である尻無濱航のオーラスの立ち回りが多くのファンを魅了した。

この純情な感情の、わずか3分の1も伝えられないかもしれないが、とにかく今見たことを書いていく。

まずはポイント状況から整理しよう。

トータルポイント首位は大川+240.4pt。2位の尻無濱+37.3ptとは、実に200pt以上離している。16回戦の大トップでプラスに転じた澤崎は+15.2ptの3位。対照的に16回戦で大きなラスとなった渡邊は、ただ一人マイナスの△148.1ptとなっている。

残りは4戦。大川の立場から考えると、自身がトップを獲る度に雀竜位戴冠に近づくが、もしトップが遠い場合は、トータルポイントの少ない渡邊を応援したい。

【東1局0本場】

さらに、大川の作戦がもう1つ明らかになる。

この4巡目リーチだ。

一般論として、リーチのみは、押し返しを受けやすいとされている。

打点アップの肝となるドラが4枚あり、それを手にした他家に向かって来られるというわけだ。

それでなくとも、首位の大川はねらわれやすいポジションにいるわけだが、ロンアガリできないままもじもじしていて、ツモったときだけアガるというのでは、局が消化できない。ポイント差があるうちに、リスクを取って、大川は懸命に前に出た。

まずは1つ目のハードルをクリア。ライバル尻無濱から差し出された1300を手にし、次局へと歩を進める。

【東3局1本場】

この局も、大川は攻める。3巡目に麻雀牌:四筒麻雀牌:七筒待ちの先制リーチを放ち、1局進めにかかるが、

実は、先にテンパイを入れていたのは渡邊。現状は、自身で1枚使っている麻雀牌:八筒タンキ待ちだが、

タンキ待ちが両面待ちに変わる、そして大川の待ち牌でもある、麻雀牌:四筒を持ってくると、即追いかけリーチを敢行。勝負をかけた。

大川の受難は続く。

澤崎がドラの麻雀牌:九索タンキで、さらに追いかけリーチ。三軒リーチのめくり合いになった。

通常、両面待ちは山に8枚、タンキ待ちは3枚とされる。しかし今回の場合、麻雀牌:四筒麻雀牌:七筒が山に1枚、麻雀牌:九索タンキは2枚あった。

大川がつかんだのは、偶然か、必然か。

「ロン」

澤崎が手牌を倒すと、裏ドラが1枚乗って、8000に。

大川は、そっと点棒を置いた。

【南3局1本場】

6巡目に先制リーチを打ったのは、2着目の渡邊。トップ目の尻無濱までは、7200点差ある。

これに対して、箱下1万点であるラス目大川が打ったのは、

一発目に、打麻雀牌:二筒

両面の麻雀牌:二筒麻雀牌:五筒はもちろんのこと、ドラが麻雀牌:一筒ということで、カン麻雀牌:二筒にも当たりうる1枚だ。しかし、ここはロンの声がかからず。

ドラ色のピンズを本線と読んで、ツモ切りの打麻雀牌:九筒

さらには、ドラそのものである打麻雀牌:一筒

ション牌の打麻雀牌:白。シャンポン待ちなら高めになる牌を河に並べていく。

自身の着アップが望めない現状、トータル2位の尻無濱がこの12回戦のトップになるよりも、トータル4位の渡邊がなった方がいい。

麻雀は、野球やサッカーなどのフィジカルスポーツとは異なり、汗が飛び散ったり歯を食いしばったりする場面が少ない競技だが、大川は必死だった。

こうしてようやくたどり着いた麻雀牌:三萬に、

渡邊の手牌が開かれた。裏ドラは乗らず、5200に。

【南4局0本場】

東家・澤崎彰太郎 28200
南家・渡邊暁大 42800
西家・大川冬馬 △15500
北家・尻無濱航 44500

トップ目尻無濱と2着目の渡邊は1700点差。澤崎は親なので、連荘したい。ということは、澤崎からリーチ棒が出てきやすい局面とも考えることができる。

案の定というか、親の澤崎から先制リーチ。タンヤオ・チートイツ・ドラドラで、ツモアガリのみならず、出アガリでも18000だ。

澤崎からリーチ棒が出た。渡邊は1000点でもトップになれる。

そう思った瞬間。

場風の麻雀牌:南を暗刻にしていた尻無濱がチーテンを入れた。澤崎のロン牌でもある麻雀牌:六筒を1枚内蔵した尻無濱は、

見事にツモアガリ。大川から渡邊へのアシストを跳ね返し、トップを守り切った。

第24期雀竜位決定戦12回戦を制したのは、尻無濱航。元より優勝にしか価値のないこの決定戦。尻無濱は、トータル首位の大川のみ、真っ直ぐに見据えて残り3戦に臨む。ポイント差はわずかに59.6pt。射程圏と言っていい。

2着になったのは、渡邊暁大。東3局1本場では、気をてらった字牌タンキリーチを打たず、じっくりと力をため、先制リーチのアタリ牌を吸収して、同テンに持ち込んだ。残り3戦での逆転戴冠に向けて、今はただ心と体を整えたい。

3着は澤崎彰太郎。この12回戦だけで大川とのポイント差を62.2詰め、163.0にまで迫った。3連勝は必要ない。ライバルたちとの条件戦を、檜舞台で存分に楽しみたい。

4着になったのは、大川冬馬。16回戦の3着もそうだが、『大川包囲網』がその効力を発揮しつつある。この12回戦、たった1半荘で143.5ptも詰められたのは苦しいが、それでもまだトータル首位だ。雀竜位初戴冠に向けて、しっかり立て直してほしい。