第17回オータムチャンピオンシップ観戦記(1回戦)

第17回オータムチャンピオンシップ
決勝観戦記 1回戦

【担当記者:庄司麗子】

決勝進出を果たした4名を紹介しよう。

■宮崎 和樹(みやざき かずき)
第30期王位
オータムとほぼ同じルールであるビッグタイトル「王位」を歴代最年少で獲得している。
(プロ歴19年目・雀王戦A1リーグ所属)

■岡見 健利(おかみ たけとし)
今決勝の台風の目。二次予選から勝ち上がってきた。
タイトル獲得により雀王戦の特別昇級権を得る唯一の選手。
(プロ歴4年目・雀王戦C3リーグ所属)

■矢島 亨(やじま とおる)
第19期雀王・第17期雀竜位・第13回日本オープン優勝
当会タイトルの4冠目の獲得を目指す。
(プロ歴16年目・雀王戦A1リーグ所属)

■渋川 難波(しぶかわ なんば)
第20期雀王・第11期雀竜位・第15回日本オープン優勝
MリーグKADOKAWAサクラナイツ所属。
矢島と同様4冠がかかっている。
(プロ歴12年目・現雀王)

一発・裏ドラなし、オカはなく順位ウマは5-15
我々協会員の主戦場であるルールとは異なり、より競技性の高い麻雀が求められる。
叩き合いのような展開は少なく、我慢や胆力の勝負といったイメージで観ることになるだろう。
ドラの価値が高く、手役・打点に寄った手牌進行となる。
一着順差が10000点(10ポイント)のため、順位取り以上に素点が重要である。
各者の点棒推移にも注目しながら一回戦目を見てみよう。

東1局 ドラ
早々に南家の渋川がをポン、親の宮崎がをポン、北家の岡見がオタ風のをポン。
牌譜上での4巡目が終わり、親の宮崎に手番が回った時点での盤上は以下の通り。

決定戦の一回戦目、開始直後に4フーロも晒されている盤上はめったに見れない。
宮崎は親で連荘狙いであがりを目指す。
渋川はマンズ、トイトイも視野にいれているか。
矢島はドラのない手牌、門前で対応するのか。
岡見はドラ1・東・ソーズの染め・チャンタもあるのか。

局が進むにつれて、渋川・岡見の染め合戦になりそうな展開に。
親の宮崎はドラのを抱え、重なりか単騎テンパイを目指し迂回。
西家の矢島はチートイツの一向聴になるがが3枚になったところで撤退。
対面同士が染め手になることでよくある展開となった。

終盤、を暗刻にした岡見から出たを渋川がポンして3フーロ。
待ちにせず、生牌の単騎とした。
次巡ツモであがり逃しとなってしまうも、やはりドラ色で染めている岡見もいる中では打てない。

岡見はソーズを1枚引けばれテンパイするが、ここでツモ
3フーロの渋川にノーテンからマンズを押すことはしない。
とすると直後を引いてギリギリのテンパイ取りに成功。
開局は二人テンパイでの流局となった。

無理せず・様子を見ながら・点棒が少しでも増えるように・減らさないように。
スタートこそ急展開だったが、終わってみるとこのルールらしい開局の印象だった。

奇しくも決勝当日は日本列島を台風が通過している最中行われていた。
局地的な豪雨と晴れ間が交互に、観戦中の視界に入ってくる。
荒れそうだな・・・という予想が天気だけでなく
今対局にも当てはまるとはまだ誰も予想していなかった。

東2局 ドラ
6巡目、南家・矢島の手牌。

悩ましいところ、矢島は打とした。
そこ後のツモは怒濤のごとく、と引きリーチ。

勝負手だった宮崎・岡見も一向聴だったが後退。
親の渋川は仕掛けて片あがりの三色のみのテンパイをいれるもをつかんで一旦迂回。
最終手番でを引き、辛うじてテンパイを組めた。
リーチ時には4枚・2枚あった山も短くなり、王牌を除き残り2枚。
仕掛けを多用する打ち手の本手リーチほど怖いものはない。
A1リーグで数多く対戦してきた渋川・宮崎にとっては『矢島の!』、しかも一発裏なしルールでのリーチである。

矢島の最終ツモはラス牌の
このルールでは最高に嬉しい2000-3900のアガリとなった。

東3局 ドラ
5巡目、西家・宮崎の手牌は早々に自風のが暗刻。
ツモでマンズは何を引いても好形テンパイとなる、より広い一向聴にしたところ。
6巡目ツモでリーチ。

7巡目 ツモ。一発はないので1300-2600のアガリ。
配牌のがトイツの時点でマンズのホンイツにするか否か、が暗刻になった時点で仕掛けるか否か。
いくつかの選択肢があった中から、最速のリーチと速攻のアガリをものにした。

東4局 ドラ
6巡目、親・岡見の手牌。

岡見は打とし、ピンフの一向聴とした。
その瞬間の渋川の手牌。

ドラ1あり門前で三色が狙える一向聴のため岡見のはスルー。
狙い通りにピンフ移行できた岡見だったが、そのためののトイツ落としがこの局の命運を分けてしまった。

8巡目 渋川のリーチはこの形。

渋川が岡見からを出あがり6400点を加点。
現役A1リーガー3人がそれぞれリーチを1回ずつあがり配給原点を上回り、岡見だけが見せ場を作れないまま東場が終了する。

4年目でまだ新人の岡見。
「一人だけ異世界に来てしまったような・・・」と自分でも言っていたように、相手はトッププロ3名。
だが岡見も予選からここまで勝ち上がってきた実力者である。
随所で光る瞬間を感じることができたが南入してからも展開に絡むことができず、3局続けて渋川・矢島が安手でさばく。

南3局 ドラ
7巡目で先制リーチを打ったのは岡見。

一向聴の宮崎から出たでロン。
点棒は寂しいものの、初あがりでオーラス親番を迎える。

点棒状況
東家 岡見:23000点
南家 宮崎:29000点
西家 渋川:35100点
北家 矢島:32900点

南4局 ドラ
トップ目渋川が親の第一打から仕掛ける。
矢島・宮崎の着順アップの条件が比較的軽いため、自分で終わらせることが渋川にとってトップへの近道である。

8巡目、渋川が3フーロのテンパイ。
 

10巡目、満を持して親の岡見がリーチ。

嵐の一巡。
親リーチの一発目、3フーロの渋川からが河に放たれる。
トップ目だった渋川はこの放銃によりラスまで落ちてしまう。
岡見にとっても、あがったのは自分なのにまるで雷が落ちたような心地だったろう。

南4局1本場 ドラ

岡見は配牌で一向聴。
慎重に13枚を理牌し、しっかりと視聴者に見せる間を作ったところで山に手を伸ばす。
これがだったらメークドラマだが、そんな都合良くはなかった。
それでも6巡目、岡見がリーチ。

宮崎・矢島が慎重に進行する中、渋川は強気の進行で10巡目にテンパイ。

ドラがなのでツモればトップ。
これをヤミテンに構え、ツモか矢島から直撃ならトップ、他からの出あがりは2着になる。
しかしテンパイ直後にまたもや渋川が掴んでしまう。
安目ので岡見が5800は6100を加点しトップ目に立つ。
この展開を誰が予想できただろうか・・・まさにジャイアントキリング。
だがベテラン3人も黙って見ているわけにはいかない。

南4局2本場 ドラ
宮崎が9巡目にリーチ

ドラのツモならトップ、ツモなら矢島をまくり2着。
満貫以上のあがりが欲しい渋川はピンズのホンイツ一向聴。
矢島はドラ1枚使って仕掛けている。
宮崎から出たリーチ棒により2600の出あがりなら供託と積み棒でどこからでもトップ。

そして12巡目、矢島テンパイ。
 ツモ 

としカン待ちの2600点。
すると直後に宮崎からを出あがり、岡見を300点捲りトップで終了。

一発ウラなしの麻雀でスピード感とテンポのある局進行。
このルール特有のジリジリとした重い展開はあまり見られなかった全11局。
一回戦目からとても見ごたえのある半荘だった。