第17回オータムチャンピオンシップ観戦記(2回戦)

第17回オータムチャンピオンシップ
決勝観戦記 2回戦

【担当記者:中島由矩】

2回戦(矢島-宮崎-岡見-渋川)

現雀王の渋川難波、雀王戦A1リーグに所属する矢島亨と宮崎和樹。
3人の上位者と相対することになった岡見健利は、18期前期入会で、21期後期雀王戦はC3リーグに在籍している。まるで十両の力士が横綱の胸を借りるような構図だが、結論から言うと、筆者はこの半荘で岡見の麻雀に魅了されることになる。

オータムCSには一発や裏ドラなどの偶発役がなく、高打点を作るにはドラや手役が必要になってくる。岡見の配牌からの構想力、河を見て山を読む判断力、押し引きをする際の決断力は、決して先輩A1リーガーたちに劣るものではなかった。

宮崎の2000/4000が決まって、宮崎リードで迎えた東3局1本場、岡見が興味深い手順で手役に寄せる。

まずは岡見の配牌。が暗刻だが、岡見は東場の東家でいわゆるオタ風。まずは打として、他家の動向をうかがいながら方向性を探る。これを下家の渋川がでチー発進。

さらに上家宮崎からポンが入った後の4巡目、岡見はツモを見て打とトイツ落とし。ピンズに照準を合わせる。

注目すべきは河の3枚目(5巡目)にあるだ。他家から岡見がピンズのホンイツに向かっているようには見えにくい。ではこの打がロスになるかというとそうではなく、でブロックは足りているというわけだ。また、この時点では渋川とモチモチながら、は全て山で、ポンテン12000の出アガリや、ポンの後ツモっての6000オール、さらには役満・四暗刻16000オールの可能性も残している。

しかしここはを仕掛けていた宮崎が、ノベタンのをツモって400/700は500/800のアガリ。岡見の大物手を未然に防ぐ。

南2局1本場では、岡見の好判断が場を翻弄する。ダブホンイツの満貫を目指してカンからの仕掛け出し。ドラのを重ねた跳満・倍満も視野に入れている。

キー牌のダブも鳴けると、ドラのを手にとどめ、まだ跳満・倍満の可能性を残した形に構える。

岡見をいつまでも自由に打たせたくない渋川は、9巡目に三色確定のリーチで勝負に出る。道中678と789で難しい選択があったものの、見事に789を捉えた。待ち牌はドラのタンキ。

しかしここは矢島が、のみアガれる待ちを、リーチ者渋川から打ち取る。

岡見のイ―シャンテンはもとより、渋川のリーチも満貫、ツモれば跳満という大物手だった。東3局の宮崎同様、かわし手が大物手の成就を封じていく。

トップ目の宮崎までわずか3000点にまで迫った南3局、今度は岡見の決断力が光る。

岡見の手牌だけ見れば、なんてことはないタンヤオのリャンシャンテンで、しいて言えば三暗刻が視野に入っているくらいなのだが、特筆すべきは3巡目に河に放ったドラのだ。これは、どこからポンの声がかかってもおかしくない牌で、もしこのを手にとどめるとすれば、前巡打となるから、このを重ねることはできなかったはず。

鳴かれたらその時対応を考えればいい。「初の決勝卓」「A1リーガー3人が相手」という特殊な状況下でも、岡見の麻雀は大きく堂々としていて、決してブレることはなかった。

岡見はこの後、高めイーペーコーの形でテンパイするも、四暗刻への変化を見てリーチはせず。をツモったときも、まるでアガることが不本意であるような無念さをにじませたが、とにもかくにもこの1000オールで暫定トップ目に立つ。

逆転を許し、トップ目の宮崎とわずか500点差の2着目で迎えた南4局1本場では、岡見の先を見通す力が冴える。

ツモ ドラ

のポンだけに頼るのではなく、チートイツも見据えて打とすると、すぐ次巡狙いの1つだったツモを捉え、チートイツタンキのテンパイに取る。ツモ・出アガリともに当然逆転できる点差で、なおかつこの時点では3枚とも山にいた。岡見の麻雀は、横綱の足が徳俵にかかるまで押し込んでいたのだ。

しかし、ここも宮崎がカンタンキの選択を間違えることなく、をツモり上げて終局。岡見のトップは許さない。

1回戦を3着で終えていた宮崎は、嬉しい初トップとなり、トータルもプラス域に浮上。残り3戦での逆転Vを見据える。岡見は1回戦同様悔しい2着。3着に渋川、4着矢島という並びになった。

半荘自体は、1回戦が矢島、2回戦が宮崎と、先輩A1リーガーが制したものの、連続2着の岡見がここでトータル首位に躍り出た。大舞台で大きな麻雀を魅せる新鋭から、今後も目が離せない。