第16回オータムチャンピオンシップ観戦記(1回戦)

第16回オータムチャンピオンシップ
決勝観戦記 1回戦

【担当記者:武中進】

改めて決勝メンバーの顔触れと簡単な経歴を見てみる。

■サイコロ太郎
第5期前期・関西所属
本大会の第2回優勝者であり決勝進出はなんと4回目。 A1経験もある関西の雄。

■江崎 文郎
第13期後期・本部所属
第15,16期雀竜位
昨年の本大会準優勝。 最終戦オーラスでの大逆転の雪辱を晴らすべく2年連続の決勝進出。

■富永 修
第7期後期・本部所属
現雀竜位
初タイトル獲得の勢いのままに2つ目のタイトル奪取を狙う。
ちなみに現雀竜位のオータムCS優勝は過去にも3件事例があり(吉田基成、伊達直樹、仲林圭)、データ上は優勝本命か!?

■のへ 和也
第19期後期・本部所属
デビュー2年目の新鋭。
放送対局は初と、一切データの無い未知数の新人。
マーチャオ系列でメンバーをしており、麻雀経験数自体は豊富と思われるがその実力は如何に。

さて、展開予想をするにあたりこの大会の特徴である「一発裏無し」について筆者の私見を述べておきたい。
このルールを聞くと「偶発性が少ない競技ルール」とイメージする人が少なからずいるが、これは誤解の部分が多い。
確かに偶発性の要素数は世間で慣れ親しまれているルールより少ないが、逆に言えばこれは残った要素への運比重を大きくしているともいえる。
極端な例を言えば配牌でドラが3枚誰かに入った場合、このルールでは他家がこれに対抗する手を作る事が難しい。
一発裏ありであれば『①リーチ』+『②一発や裏ドラ(カンドラ)』+『③手役』を合わせて対抗できるが、②が存在しないルールとなると、選択肢が限られるためだ。

つまり「要素数が減る≠運比重が減る」というのが事実があり、経験値のある選手であれば基本的なルールに合わせたバランス調整はすれど思考スタンスが大きくぶれる事はない。
普段のルールと実はそこまで大きくは判断に差は無いのである。

ただしこれは前述の通り「慣れていれば」という前提が存在する。
そして巷で触れる機会が少ないルール故に、慣れている人間と慣れていない人間との技量差が出やすいのも事実。この点についてノヘがどの程度対応できるかが気になるところ。
何より初決勝・初放送対局などの緊張からか、強く勝負が出来ない選手というのを過去に見てきた。それも含め、彼の打ち筋に特に注目していきたい。

1回戦(江崎-のへ-富永-サイ)
※観戦記上では「ノヘ」と記述

そのノヘに東1局からいきなりのチャンス手。

ドラのを重ねた後、親の江崎の集める索子を早めに切り飛ばした進行がうまくハマってのタンヤオ・七対子・ドラドラをテンパイ。
一方で親の江崎がとポンして索子のホンイツであることは明白。

ノヘが少しでも弱気になっていれば、次巡に引いたなどに待ち替えをしていた可能性もあった。
だが躊躇せずにタンキでの勝負を続行し、結果富永から8000を和了。大きなファーストヒットを決める。

この後もノヘの積極的かつ場を的確に判断した進行が光る。
東2局親番では江崎・サイの積極的な仕掛けにもひるまずに勝負。結果は江崎からサイへ5200の横移動となったが、ノヘのバランスの良い進行と勝負に行く姿勢にとても好感が持てる一局だった。

東3局はこの配牌から打

その後さらにをポン、チャンタとドラを絡めたルールに非常にマッチした進行を見せる。

もはや冒頭で考えていた、このルールへの適応力や初決勝による緊張への不安はほとんど感じさせない内容の立ち上がりだった。

このノヘの勢いに待ったをかけたのは優勝経験者のサイ。

チートイツのテンパイから場況を見て待ちでの即リーチを打たず、次巡持ってきたでリーチ。
これが2件リーチに挟まれたノヘの手詰まりを引き起こし、3200の直撃に成功。

南2局ではリーチドラ2の5200を江崎から和了、2着目のノヘを15000ほど突き放す。
ノヘもオーラスに逆転手のリーチをかけるが成就せず、サイ・ノヘ・江崎・富永の順で1回戦終了となった。

サイの多種多様な判断が光った1回戦。
ここでは一部しか取り上げていないが、彼の独特の進行バランスは是非とも対局動画などで観ていただきたいところである。

また、ノヘの攻めの姿勢も目を見張るものがあった。優勝も十分にあり得ると期待させる内容であった。

江崎・富永については展開に恵まれない内容だった。
特に富永は和了もまだ出ていない状況。2戦目以降の挽回を期待したいところだ。