第22期新人王戦決勝観戦記(2回戦)

第22期新人王戦決勝観戦記
2回戦

【担当記者:中島由矩】

2回戦(黒田-晃平-柊-藤井)

1回戦終了時のスコア表を見て、この縦長の展開はどこかであったなぁ…考えたところ、昨年の第21期新人王戦決勝戦と酷似していることを思い出した。

第21期新人王戦決勝戦の新林淳三は、1回戦で+99.5ptをたたき出したものの、同じ1回戦で△57.2ptという4着に沈んだ夏目ひかりが2回戦からの3連勝で逆転戴冠することになった。

第22期新人王戦決勝戦は、1回戦で柊みれいが+78.9ptを稼いでリードを築き、4着だった黒田遼河は△59.7pt。
この両者の差は実に138.6ptにもなる。

全5回戦あるとはいえ、この2回戦で柊が再びトップなら、柊が新人王に向けて大きく前進することになるし、黒田がまた4着なら、黒田は1人戦線から離脱することにもなりかねない。
また、2回戦のトップをねらっているのは晃平や藤井も同じ。
四者それぞれの戦いを時系列に見ていこう。

【黒田遼河 背水の陣】

起家になった黒田が、東1局にいきなりチャンス手をもらう。

ドラのがトイツで入っており、数牌の並びも悪くない。
役牌のを重ねてから仕掛けての5800・12000や、ピンズもしくはソーズのホンイツ、リーチドラドラの7700なども逃せない。
から切り出し、他家の動向から山にある牌を探っていく。

先制を取りたかった黒田の気持ちとは裏腹に、12巡目に他家から火の手があがる。
黒田が2枚持っていて重ねづらいドラを1枚抱えて進行していた北家の柊だが、リャンメンリャンメンのイーシャンテンから、を引いてテンパイ。
他家からリーチや仕掛けも入っていないし、ここはドラを横に曲げてリーチを宣言する。
ソーズの下は柊以外の3家がパラパラと切っており良さそうに見える。

ここに向かっていったのは南家の晃平。
柊のリーチに対してもさほど強い牌を勝負することなく、こちらもリャンメンリャンメンのイーシャンテンからを引いてテンパイ。
自身の目からともに3枚ずつ見えており、ねらい目に見えただろう。

ここで真打登場。
ドラドラ配牌の親番・黒田が、これまたリャンメンリャンメンのイーシャンテンからを引き入れてテンパイ。
ここは待ちの良さが不明であるものの、アガれたときのリターンはピカイチだ。

いきなりこの2回戦の趨勢を決める三軒リーチ対決は、黒田がリーチした次の1牌で雌雄が決した。

晃平がをつかんで一発で黒田に放銃。
リーチ・一発・ピンフ・ドラドラに裏ドラも2枚乗って18000。
いきなり2回戦のトップを決定づける大きなアガリをものにした。

【藤井啓志 決意のリーチ】

風貌は四者の中で1番落ち着いている藤井啓志。
しかし1回戦では後手を引いても押し返していく力強い麻雀が印象的だった。

東1局1本場では、前局18000をアガった黒田がさらなる加点を目論む。

ダブポンから発進すると、ポンでテンパイ。
現状7700だが、トイトイ変化での更なる打点アップのルートもまだ残している。

しかし、このポンにより、藤井にカンが入った。

ドラのが出ていくのでなかなか取りにくいテンパイ。
だが戦前のインタビューで「普段の麻雀では怖がった選択が多く、準決勝戦までの試合を重ねていく中で、それを修正できたと思っている。」と語った藤井は、蛮勇を奮ってリーチ。
見事一発ツモの1000/2000は1100/2100に仕上げた。

【晃平 匠の技】

晃平はこの1回戦から2回戦までの休憩時間をどのように使っただろう。
というのも、1回戦南4局でトップ目の柊を追う2着目の親番・晃平は、第1ツモを取り忘れてしまい、少牌でアガリ放棄になってしまったのだった。
取れるはずのトップを取り逃したとまでは思っていないだろうが、追い上げムードを自ら消してしまったのは間違いない。

4人の中で唯一の18期入会で今回が新人王戦ラストイヤーとなる晃平には、麻雀プロとして一日の長がある。

自身で3枚使っているに対し機敏にポンの声をかけると、ぞくぞくとソーズを引き入れてテンパイ。

しかし、このままではホンイツのみなのでチンイツに変化するのを待ちたいところ。
そこに晃平の上家の黒田から切りリーチがかかる。

晃平は、このをチーして打

待ちはリーチ宣言牌のタンキになり、打点は2600から8000にアップ。
この待ちに飛び込むの誰だ…と思って見ていたら、

次巡、晃平がそのままツモアガリ。

【柊みれい 三色同刻へ】

1回戦で大きなトップを取ってからここまで、大きなアガリも放銃もなかったのは柊だ。

東1局で先制リーチを打ったものの、結果は18000の横移動。
そして、その放銃をした晃平がアガリを重ねて自身と同点にまで迫ってきた。
ここは1つアガってラスを遠ざけ、返す刀で2着目以上を見たいところ。

柊はのポンから発進する。
をシュンツとして使うなら三色同刻の仕掛けということになるが、が重なったなら話は別だ。
柊は打としてトイトイに決め、のつり出しを図った。

この安めが、ドラタンキテンパイの入った晃平から放たれる。

 ロン   ドラ

トイトイのみだが、2600に2本場の600と供託1本を加えると4200もの収入となった。

【オーラス 着順をめぐる攻防】

オーラスを迎えて、点棒状況は以下の通り。

南4局1本場
東家・藤井 26300
南家・黒田 38900
西家・晃平 15700
北家・柊 19100

トップ目の黒田は相手が藤井でなければマンガンを放銃してもトップでいられるものの、1回戦が4着だったので素点も大切にしたいところ。

2着目の藤井は親番のためトップを目指し進めたいが晃平に8000以上を打つと4着も見えるため、状況次第では2着を受け入れることもありそうだ。

3着目の柊は2着まではマンガン出アガリor3900は4200直撃を見たい一方で、4着目の晃平が3900は4200での着アップを目指してくるのも気になるところ。

4着目の晃平は先の柊のところで書いたように、3900は4200で3着になれる。

四者四様の思惑が交錯する中、5巡目晃平の一声で場が動き出す。

ドラのポンだ。
これにより、黒田は晃平の応援に回り、柊と藤井は攻めるか守るか立場をはっきりさせなければならなくなった。

晃平はテンパイを入れると、下家の柊からとらえることに成功した。

1回戦とは着順がまるごと入れ替わり、上下の幅がグッと詰まった。
これがもしここまでのように3回戦トーナメントであれば、次の最終半荘でそのトップ者が通過となるが、これは決勝戦。
むしろこの2回戦までをほぼ横一線と考え、残り3半荘でトーナメントを勝ち上がってきたその麻雀を見せてほしい。