第21期雀王決定戦観戦記 3日目(14回戦)

日本プロ麻雀協会 第21期雀王決定戦観戦記 3日目

第21期雀王決定戦観戦記
3日目 14回戦

【担当記者:坪川義昭】

13回戦を終えて浅井が抜け出した格好となった。
2位の渋川でさえ170p差、松本が230p差、仲林に関しては300p近いポイント差を付けられている。
今回は見どころが多いため、東2局1本場の仲林の見事な手順などは文字数の関係上カットしたものの、なかなか真似出来ないようなプレーが満載なので是非読者の皆様はこれを読んだ後に実際の対局を観ていただきたい。

『ワン・フォー作戦』

一体何のことと思うでしょうが、日本プロ麻雀協会のオールドファンならニヤリとしてしまうこの戦略。
今から15年前の第6期雀王決定戦で当時優勝争いをしていた鈴木達也が発案した戦略である。

戦略といっても『リードしている相手をラスにした上で自分がトップを取る』という至ってシンプルであり、戦略なのかも不明なこの作戦だが実際この時達也は逆転優勝を果たしており、その記憶は今でも当時のファンや協会プロの中で残り続けている。
協会21年の歴史の中で最優秀観戦記賞と称されることも多い記事なので興味がある方は是非ご覧ください。
第6期雀王決定戦観戦記

20回戦中の14回戦というのがまだ7回残っていると感じるのか、もう7回しかないと感じるのかは選手によって違うと思う。
しかし一人だけは、もう7回しかないと考えている選手がいた。

東4局
ポイントリーダーの浅井が超弩級の3巡目リーチを敢行。

親番の仲林も、もしこれがフラットな状況であれば親とはいえ無筋を4枚も抱えたチートイツのイーシャンテンで勝負することはなかっただろう。
しかし、仲林の中では300p離された相手に追いつくまで『もう7半荘しか残ってない』のだ。
無理な勝負でも道をこじ開けていかねば優勝はない。
浅井のあまりにも非情な手牌が開かれた。

南3局
こちらも浅井にトップを取られるわけにはいかない親番の渋川が1巡目に役牌のをアンカンして臨戦態勢。

とドラのを渋川からポンした仲林、待ちのハネマンテンパイ。

イーシャンテンの松本が同巡危険なを先に処理しようとしたが間に合わず…

しかし、これにロンの声をかけない仲林。

次巡更に松本がをツモ切る。
これはさすがにロンの声をかけるだろうと思った。
何故なら点数表示を見て欲しいのだが、仲林はまだ3着目なのだ。この手をアガらなかったら浅井のポイントを減らす前に自分のポイントは増えない。
自身がトップ目で余裕があるから、見逃して浅井にダメージを与えようとするのはわかる。
これが空振った時にトップが取れない方がよっぽど大激痛じゃないだろか。

『おいおい…そんな何回も切るなよ…』という表情にも見えてくる。

しかし、それが実る時がやってきた。
親の渋川からリーチが入り、ドラのを切っている渋川とをポンした後が二度も切られて声をかけてない仲林に挟まれた浅井が切ったに仲林からロンの声。

こんなにも鮮やかに決められるものなのだろうか。
こんなにも苦しくて辛い戦いが雀王決定戦なのだろうか。
正直、空恐ろしい。こんな重圧を受けるくらいだったら、決定戦など一生やりたくないとさえ思ってしまった。

この直撃で浅井を3着に落とした仲林はトップ目でオーラスを迎えるわけなのだが…

オーラスはここまで話題に上がらなかった松本が浅井から8000点を直撃して仲林を逆転。
まさかの松本による『ワン・フォー作戦』達成となったのだ。

ここまで完璧に作戦を遂行してきたのに美味しいところを攫われた仲林もこの表情である。

松本は『仲林さんありがとう。意志は引き継ぎます。』といったところか。

この後筆者は気分転換に近所の麻雀店に顔を出した。隣の卓では毎日のように麻雀を嗜むオヤジがこんなことを言っていた。

『見逃されたやつはツクんだよなぁー!ほらきた!ツモ!ハネマン!』

これもまた、あるのかないのかわからない所謂オカルトの1つだ。
そんな事は信じてないのだが、長く麻雀をしていると数え切れないくらい遭遇する不思議な場面。

なんだか前半戦苦しんでいた松本が来るんじゃないだろうか?そんなオカルトな気分になって帰宅した。