第3期関西雀王決定戦観戦記 2日目

1日目2日目最終日

第3期関西雀王決定戦観戦記 2日目

【担当記者:山本司】

‐奈良の独走、許すまじ 関西のてっぺんは譲らない!‐

11月よりスタートした第3期関西雀王決定戦、第1節を終えてのスコアは以下のとおりである。

初の決定戦出場となった奈良篤志が大きく抜け出す展開となった。守備的なスタイルながら、要所ではしっかりと勝負手をまとめた盤石の戦いであった。

今の奈良は充実の冬を迎えている。

まずはこの第2節が行われる1週間前、当会香川支部のプロアマ戦において、奈良は上位12名が進める決勝戦へと勝ち上がった。

さらに、先日行われた第7回白虎杯(協会・最高位戦・RMU・麻将連合の選手が関西に会したワンデーの交流大会)において、奈良は並みいる強豪たちのなかで見事4位入賞を果たしている。
これにより来年のヴェストワンカップ本戦への出場権を手にした。ビッグタイトルの本戦でも、結果を出してくれるだろう。

奈良の現在までの麻雀プロ人生の中で1,2を争うであろう充実期を迎えている。

『天高く馬肥ゆる秋』

中国唐代の漢書にある言葉で時候の挨拶としても用いられるが、「空が高く空が澄み渡って晴れ、馬の食欲が増し肥えてたくましくなる秋」という言葉の意味から転じて、「心身ともに快適に暮らせる秋の気候」というのが現在ではこの言葉の意味として定着している。

奈良もまさに心身の充実を感じさせるここ最近の活躍ぶりであるが、こんな言葉で言い換えてもよいのではないだろうか。

『天高く奈良、燃ゆる冬』

奈良篤志 237.2

奈良のスコアは、あまりにも高く遠い。さながら澄み切った秋の空のようである。しかしながら、残り2節10半荘もある。2位以下の3名も決して黙ってはいないだろう。

堀 良三 61.3

奈良とともに初の決定戦進出となった堀も、ベテランらしい老獪な攻めを数多く見せてここまで2位。180弱の差は決して小さくはないが、まだまだその目はあきらめていない。

中村一 ▲74.5

リーグ戦を圧倒的なスコアで駆け抜けた中村、だが今回の決定戦では苦しい展開が続く。得意の仕掛けを生かした早い展開に持ち込めれば300以上の差を埋めることも難しくなさそうだ。

柴 卓司 ▲224.0

ここまであまりにも不幸な展開が続いている柴。第1節でも引き出しの多さ、総合的な雀力の高さをまざまざと見せつけてくれた。450もの差を残りで逆転しろというのは酷であるが、柴ならひょっとして?と思わせるだけの力は備えている。

王手をかけたい奈良、そうはさせまいと追いすがる3名の第3代関西雀王をかけた熱い戦い、その第2幕が幕を開けた。

‐堀の見事な山読み、奈良の守備的戦略-

6回戦

東2局1本場

親番の奈良がをポンして打。ドラを2枚抱えているので自然な7700や親満コースか。

これを受けて堀、ツモ。678の三色を目指していたのであまりうれしくはない。単純な受け入れ枚数なら打としていくところだろう。をもってくれば再び三色を狙える。

だが堀の選択は打
は奈良が3巡目に切っていて、は中村と柴が早々に切っている。索子の上がかなり山に残っているのでは?という読みであろう。この次巡、堀はを引き入れてリーチ。

高めのはまだ山の中に1枚生きている。堀としてはしてやったりという一打であろう。

これを受けての奈良。なんとドラを引き入れてのテンパイ!しかもは堀の現物である。
3枚切れではあるが、今ならだれから切られてもおかしくはない。やはり今日も奈良の日になってしまうのか…。

だが、こので奈良は打。待ちをへと変える。
見た目枚数なら2枚増える。または堀のツモ切ったの筋。この選択もやむを得ないか。

奈良、堀のロン牌を掴まされる。やや逡巡があったが、あっさりとここはオリを選択した。
少々弱気にも見えるが、トータル2位ながら、この半荘ラスに沈む堀に甘い牌は打てないということであろうか。
あるいは切りのあと、柴からすぐにが打たれたことでネガティブな思考に陥ったのかもしれない。

この局は堀が最終手番で高めのをツモ!奈良はドラ3を生かせず、堀に復活の目を与えてしまったようにも見えた。

堀 リーチ・ツモ・平和・イーペーコー 1300/2600(+300)

-三色か、清一色か?柴、苦渋の選択の結末-

南1局

微差だがトップ目で迎えた柴、4巡目にして早くも何を切るかという局面に。

選択肢としては、ドラがであるが清一色を目指して筒子や索子に手をかけるか、あるいは平和形や三色を逃さない打あたりか?他家の捨牌にはこれといった情報はない。

かなりの長考であったが、柴は打とした。
柴のここまでの戦い方を見ると、このまま清一色へ向かう可能性が高いと思っていたのでやや意外ではある。親番であることも踏まえ、リーチのみすらやむなしの手順ということか。

この後、何度か有効牌を引き入れたのち打のリーチへと至る。

だが、この宣言牌が奈良につかまった。

奈良は5巡目にして早くもこのテンパイを入れていた。

はよい待ちではないのでいい待ちに変わるまでダマテンにしていたところひょっこり、といったところか。

柴は痛恨の放銃だろう。こんな交通事故のような待ちに刺さってしまうほど状態が悪いのか…。同情を禁じ得ない。

柴→奈良 タンヤオ・七対子・ドラ2 8000

この手が決め手となり、奈良が今決定戦早くも5勝目。強すぎる奈良、トータル2位の堀をラスに沈める最高の並びを実現し、早くも逃げ切り態勢を築きつつある。野球であればマジック2や3といったところか。

奈良 62.2 (299.4)
中村 4.5 (▲70.0)
柴 ▲21.7 (▲245.7)
堀 ▲45.0 (16.3)
()内はトータル

‐がっぷり四つのぶつかり合い 思惑が交錯した終盤を制したのは?-

7回戦 東1局4本場

全員の手がぶつかった好局である。

まず7巡目 親番中村 下の形から打

これに解説の矢島亨・四冠王から厳しい一言が飛ぶ。

「なんで残してるの?縦引きしかうれしくないじゃん。残すならでしょ」

たしかにこの手、すでに3メンツ完成の一向聴。さらに両面ターツがあり、しかも789の三色に絡むので切られることはないだろう。となれば、あとは雀頭探しである。
さしてが重なりそうという情報はないが、はすでに1枚見えている。ビジュアル枚数(見た目枚数のこと 矢島の最近のお気に入りフレーズから引用)や、万が一の他家のリーチに対して最も危険な牌であるを残す必要性はなさそうだ。

中村は矢島が主宰する勉強会、通称やじ研が関西で開催されるときは必ず参加している。矢島も中村に目をかけているからこそ、このような叱咤につながったのであろう。

2巡後、中村はをツモってしまう。重なっていたのはあくまで結果論に過ぎないが、こういった細かい積み上げができるか否かがタイトルをとれるかどうかの差なのかもしれない。

この場面から2巡後、堀がを両面でチー、さらにポン。
バックであるが、終盤の入口へ差し掛かって来たことと、自身の目からドラが4枚見えたことで形式テンパイでも押し返しやすくなったという主張であろう。あわよくばタンヤオ移行か。

奈良がこの動きに合わせる。を両面チーして三色、嵌待ちテンパイ。打点は安いが速度を合わせに行く。

だがここに満を持して乗り込んできた男がいた、柴である。待望のリーチ、が自身の目から3枚ずつ見えているためこの待ちは絶景に見える。

奈良、を引かされる。が早いので切ってもよさそうだが、ここは回す。打

堀、ツモ。
をそのまま切り形式テンパイを維持しつつ、通っていない牌が来たらをトイツ落としで回せるようにするか、現物のを切り待ちテンパイにとるかというところ。

一長一短だが堀の選択は打。供託と本場を合わせて2200点を取りに行く強気の選択を見せた。

状況が目まぐるしく動く。今度は中村、を引き入れ待ちのリーチ。三色こそ崩れたが、三門張ならと踏み切った。

リーチを受けた奈良、手詰ったがタンヤオのないほうの。トイツ落としでさらに回す。

これを受けた堀、一発目に持ってきたのは中村のロン牌。一応形式テンパイは維持できる打。しかし次の危険牌を持ってきたらテンパイを崩さざるを得ないだろう。打3が裏目に出た格好だ。

2巡後奈良、なんとテンパイ復活。待ち、しかも役ありである。

同巡堀、ひかされたのはまさかの…。テンパイ維持にはこだわらずを抜き打った。

奈良、最終手番。そこにいたのは…、であった。決して叩きつけることないソフトなツモ所作が奈良の持ち味であるが、この時ばかりはその手に喜びがにじんでいるようにも見えた。やはりこの決定戦は奈良のペースで最後まで進むのだろうか?そう感じてしまう和了であった。

奈良 タンヤオ 300.500 (+3200)

‐このドラ、切れる?切れない? 柴、見事な鳴き読み‐

東3局

15巡目、奈良が形式テンパイへ向かうためをポン、打。これを受けた堀の手が以下である。

七対子の一向聴。だがテンパイは相当きつそうだ。
一方、ドラのを切れればかなりテンパイに向かえそうではある。特にポン材のは堀の視点から見て、今ツモってきたら全員切ってくれそうにも見える。

問題は奈良の仕掛けをどう評価するかである。すでに以外の役牌がすべて見えており、役牌バックのケースは暗刻の時以外ロンされることはない。

ではトイトイはどうか?それもポンした時の打でかなり否定されている。なぜなら5巡前にもを切っており、実質トイツ落とし。トイトイならかなり鳴けそうなは手の中に残しそうだ。

よって奈良の仕掛けにドラで放銃となるケースはかなり限定的であろう。ここはドラとはいえ自身のテンパイ目指してを切ってもよさそうだが、堀はを切って七対子を目指した。

局面進んで柴の手牌。

ツモ番残り2回でこのテンパイ。一見するとドラを打ってまでテンパイに取るのは無理があるように見える。だが、柴の手には暗刻である。前述の理由を合わせて考えると、柴からは奈良に役があるようには見えない。

ゆえにリーチに踏み切った。もし柴がポイント状況に余裕があればリーチはしないだろうが、ここは少しでも打点をといったところか。

残念ながらこの手は流局となってしまったが、ぎりぎりのところまで踏み込んだ柴の一打にあっぱれと言いたいところだ。なんとか展開が向かないだろうか?

奈良、柴 2人テンパイで流局

この半荘は序盤に大きく抜け出した中村が今決定戦初のトップを獲得!さらに奈良を4着、堀を3着にすることができたので中村にとっては最高の並びである。中村は堀をかわして2位に浮上。今期リーグ戦1位通過の中村、面目躍如といったところでほっとしたであろう。ここから奈良との差をどこまで詰められるか。

中村 73.9(3.9)
柴  1.6(▲244.1)
堀 ▲18.8(▲2.5)
奈良▲56.7(242.7)
()内はトータル

8回戦

‐奈良に見えた隙‐

東1局

親の奈良、ダブをポン。打とする。

次巡、上家の柴からが出てくる。チャンタや七対子を見据えた一打であろう。ここで奈良がをチーしてテンパイ、誰もがそう思っていた。

が、なんと奈良の手はツモ山に伸びていた。たしかにチーしても待ちはのシャンポンのため良くはない。またドラのも切ることになるのでそれは嫌だということか。あるいはのポンテンなら取る予定ということか。

しかし、この選択は相当損に見える。まず残りが14巡ほど、ここでテンパイしておけばこのあとこの手を和了できる可能性が格段に上がる。
また、この2副露+ドラ切りで他家に与える印象は相当怖いものだろうし、オリてくれれば一人旅というのも期待できる。逆にまだテンパイではないだろうと早い段階なら向かってきてくれてロン和了も期待できる。さらにという6種の両面変化の抽選が受けられる。加えて、格段に打点が上がるのがドラのを引くくらいしかない。

上の画像はダブをポンした時のものである。

を切りたくないなら、この打のときにを切る選択はあったのではないだろうか。
これなら単騎を目指す道や、トイトイのルートも見える。打としたのはかなり形を限定するうえ、ドラを切ってでもこの手は和了に向かいますよという主張があったのではないだろうか。そう考えるとやや矛盾の見える選択だった。

対照的にトータル2位の堀の選択がハマる。まず奈良がテンパイを取らなかった同巡、堀はいったんこのテンパイにとる。リーチのみの愚形では不満というところか。

次巡、堀はテンパイを外す。ツモって来たにくっつけて一盃口や三暗刻を目指すということだろう。

結果すぐにを引きテンパイ。出和了こそリーチのみだが、ツモれば三暗刻の手だ。堀、今日一の気合の乗ったリーチ宣言である。

2巡後あっさりと最後のをツモ。見事満貫に仕上げて見せた。結果論だが奈良がテンパイにとっていればこの和了はなかったかもしれない。

堀 リーチ・ツモ・三暗刻 2000/4000

‐陰る勢い‐

東2局

6巡目 前巡より単騎でテンパイしている奈良、ここにツモ

奈良の選択は打。一見テンパイを崩しているが、萬子は何を引いてもテンパイ復活(は役なしでうれしくないが)。おまけには平和高めタンヤオ三色になり、はイッツー完成形、は高めイッツーのフリテンリーチ、は高め三色のリーチが打てそうという、なんとも欲張りな一向聴である。

だがこの手がなかなかテンパイしない。や~っとテンパイも、三色やタンヤオがない平和のみというつまらない手。しぶしぶテンパイにとる。

だがここで1巡回してリーチ。ツモ切りリーチのため、他家には愚形に見える。外のがかかるリャンメン待ちには見えないだろうという策略か。

ちなみにこういった役ありリャンメンのツモ切りリーチについて、解説の矢島亨著作『高打点鳴き麻雀』には詳しく書かれている。まだお手に取られていない方はぜひご一読いただきたい。

だが、この選択がまたも裏目。一発目に持ってきた牌はずっと待ち望んでいた高めタンヤオ・平和・三色のテンパイとなる

この局は終盤に形式テンパイを入れた中村から奈良が和了もリーチ・平和止まり。奈良、関西雀王を意識して気持ちの焦りがなければよいが。

中村→奈良 リーチ・平和 2000

この半荘は最終的に中村が制した。中村は連勝で奈良に大きく迫る。奈良はやはりあの東1局以降、勝負手が和了できず二の矢が放てなかった。一方柴は5度目のラス。マイナスが300近くなり、タイトル獲得は相当厳しいと言わざるをえなくなった。

中村 52.9(56.8)
奈良 9.7 (252.4)
堀 ▲11.1(▲13.6)
柴 ▲51.5(▲295.6)
()内はトータル

9回戦

‐これぞテクニシャン! 柴卓司はまだ死んでいない‐

東3局2本場

点数の移動がほぼない中、迎えたこの場面。

西家の柴 配牌ですでに七対子の二向聴である。ここから柴が技巧を凝らす。

まずはを中村からポン。
はっきりと混一色が見えるので当然か。あわよくばトイトイまでつけたい。

次巡柴、ツモ。効率なら切りだがここはなんと切り!
を残しても2枚のポン材しか増えず、またここでの切りは索子の混一に見せることができる。真似したくてもなかなかできない一打だろう。

さらにこの後、ツモを空切り。他目線では完全に柴が嵌のターツを払ったようにしか見えない。待ちになれば強すぎる河である。

こういう時はあっさりとテンパイできるのも麻雀なのか。あっという間の混一テンパイ。
こんなもの誰が止められるだろうか。劇画じゃあるまいし、これを止められる人間は人智を超越しているといっていいだろう。

無論そんな人間などいるはずがない。テンパイを入れていた中村からがこぼれた。中村も手牌を開けられてさぞ驚いたことだろう。

中村→柴 混一・中 5200

‐北はどこだ! 柴、反撃の国士無双なるか?‐

南1局

トップ目で迎えた柴、かろうじて関西雀王になる道を残すにはもう1戦も落とすことはできないだろう。しかし、配牌はこれ。げんなりするしかない。とりあえず国士無双を狙いつつ、筒子か索子のホンイツやトイトイが本線か。

5巡目奈良 ドラを引き入れ両面を固定する打

しかしドラ2のこの手、まだ5ブロックも決まっておらず、単純にのどれがくっつきづらいですかという比較をすると、やはり四を暗刻で使っている分使いづらくなっている切りが良いように見える。

奈良はこうした場面で両面固定をして待ちをぼかすのがとてもうまい。だがこの局面ではいささか損に見えた。

そうこうしているうちに10巡目、柴が国士無双の一向聴。

奈良は柴の切ったをチーすればテンパイにとれるが動かず。このあと次巡のもスルーした。

そうこうしていると堀からリーチ。役あり愚形で国士無双をしている柴がいるが、を暗刻、をトイツにしているので国士無双はかなり厳しそうということもありリーチに踏み切った。

だが実際には最後のは柴が持っている。そして待望のを引き入れテンパイ!当然の勝負。

このを見て奈良が長考。はかなり強い牌だ。柴が国士無双をテンパイしたかもしれない。をチーすればテンパイだが、はどちらも堀に通っていない。ならばいっそスルーして、最悪トータル4位の柴が役満を和了してもよいだろうと静観する手もあるか?

奈良の選択はチーして打。むずかしい選択だが、打では放銃時にドラが絡む危険性があるのでここはやむなしか。

堀にとっては待ってましたの奈良直撃。裏ドラも乗せて6400。

一方、柴にとっては無念の横移動。これを和了すれば反撃ののろしとなりえたのでダメージはいかばかりか…。

奈良→堀 リーチ・白・裏 6400

この半荘はこの後、堀が柴をまくり逆転トップ!2勝目をマークし、再び中村をかわして2位に浮上した。一方奈良は痛恨のラス。堀との差が少しずつ縮まってきた。柴はこれで一人負債を請け負う形に。トップが遠い…。

堀 64.4(50.8)
柴 9.1 (▲286.5)
中村 ▲24.5(32.3)
奈良 ▲49.0(203.4)
()内はトータル

10回戦

長期戦が続いていたこの日、最終戦は打って変わってわずか8局、30分ほどでのスピード決着。制したのは…。

ついに、やっと、ようやく柴の我慢が身を結んだ。

小場でけん制しあう展開が続いたが、南3局で狙い通りの七対子単騎を自ら手繰り寄せ、そのまま逃げ切っての初トップ!10戦トップが取れないなどざらにあるが、これほどまでにトップをとることが難しいと感じたことはないだろう。

一方、奈良はまたしても痛恨のラス。陰りの見え始めた8回戦以降、チャンスらしい手が少なかったということもあるが、本人すら気づかないうちに守りを強く意識してしまったのではないだろうか。

柴  55.9 (▲230.6)
堀  10.6 (61.4)
中村 ▲21.2(11.1)
奈良 ▲45.3(158.1)
()内はトータル

こうして第3期関西雀王決定戦第2節は幕を閉じた。
前節の奈良無双とは一転、全員が1回ずつトップを取りあった末、馬群が少し縮まった。

3分の2を終えてトップで折り返したのは奈良。2日目でトータルスコアを80弱減らしてしまったものの、2位とは100近い差を保ったまま最終日を迎えられる。守備的な打ち手の奈良なら、この差を守り切ることも十二分にあり得るだろう。

第2節開始時からわずか0.1ポイントだけ増やした堀。耐え忍んで着順を死守する場面もあっただけに、わずかでもポイントを増やせたうえ1位との差を大きく詰められたのは、やはりベテランの妙技あってのものなのかもしれない。実際、奈良をラスにするための戦略をとろうとしたことも口にしていた。最終節はどんな技を見せてくれるか期待したい。

第2節で唯一2勝した中村。開始時300以上あった差はついに170を切った。中村の爆発力をもってすればもうとらえたも同然、といった心境であろうか。この日も中村の仕掛けから局面が動く場面が多かった。周りをかき回して自らのペースに引き込めれば、リーグ戦での無類の強さをここ一番で発揮してくれるのではないだろうか。

開始時より差は詰めた柴、10回戦で初トップをとりようやくといったところだが、自身のトータルスコアだけ見るとまたマイナスしてしまった。最終節は少なくとも奈良とトップ・ラスを4回は決めなければ逆転は厳しいと思われるが、今決定戦で最も見せ場を作ってくれている柴ならもしかして…、と思わせる能力はあると思う。最終節も魅せてほしい。

第3期関西雀王戦は次回が最終節である。

新年になって間もない1月14日(土)11時より雀サクッTVにて配信予定だ。
実況は協会の配信ではおなじみとなった夏月美勇プロ

解説は先日の第1期一久杯電風戦で見事優勝した松浦裕充プロ。

そしてこの決定戦ではレギュラー解説となっている角谷ヨウスケプロでお送りする予定となっている。

『天高く馬肥ゆる秋』

冒頭に記したこの言葉であるが、実はこの言葉は現代になるにつれ意味が変わっていったのだという。かつての意味はこうだ。

「秋になると肥えてたくましく育った馬に乗って敵が攻め込んでくるから警戒せよ」

まさに今の奈良はさながら、3者が肥えた馬にまたがって今にも自らの首を狩ろうとする敵に見えて仕方ないのではないだろうか。

はたしておよそ100ポイント差という万里の長城を築く王朝「奈良篤志」が崩壊するのか?はたまた馬にまたがった3名のうち、だれかが将軍となって王を討ち果たさんとするのか?

そしてすべての戦いが終わったとき、われわれの前に現れる新たな関西の王はどんな景色を見るのか…。

読者の皆様もぜひその目に焼き付けていただきたい。