第22期雀王決定戦観戦記 2日目(6回戦)

第22期雀王決定戦観戦記
2日目 回戦

【担当記者:中島由矩】

(矢島-仲林-堀-浅井)

その日の第1試合(1回戦・6回戦・11回戦・16回戦)前にはインタビューがあり、4選手はそれぞれ前節を振り返って、今節への意気込みや戦い方を示す。麻雀はプレイ中に自分の思考を語ったりしないゲームなので、観戦記者にとってこの時間はありがたい。

タブレットの両端に手を添えながら、各選手の言葉を聞き、胸に刻む。

1日目3ラスで△128.0pt暫定4位となっている矢島だが、表情は明るかった。矢島の代名詞であるホンイツ・トイトイを織り交ぜながら、めくり合いに持ち込むことはできている。あとは最後の1牌と巡り会える瞬間を待つだけであり、それは今日になるのかあるいはもう少し先になるのか。

ところで、とある関係者が「矢島さんて、本当にあんなにホンイツにいくんですね!」と舌を巻いていたというから、この6回戦で矢島が一色手へと舵を切ったシーンをご覧いただこう。

東2局、北家の5巡目。先に1枚切れの麻雀牌:東を放し、タンヤオ・ピンフなどを視野に入れながらも、ツモ麻雀牌:七萬に矢島のセンサーが反応した。麻雀牌:五索麻雀牌:七索のターツを麻雀牌:五索からリリースし、一色手を目指す。

ここに、仲林が参戦。Mリーガーである仲林は、インタビューで「今日(自分が所属する)パイレーツでパブリックビューイングをしてくれるんですよ」と嬉しそうに語っていた。

ドラドラ(麻雀牌:一索)ながら、メンツ手とトイツ手を天秤にかける難しい進行。仲林はこの手の要所であるツモ麻雀牌:七筒を引き入れ、息をひそめてその時を待つ。パイレーツ関係者もドキドキしながら見てくれているだろうか。

この対決、先手は矢島。上家の浅井から出た麻雀牌:八萬麻雀牌:七萬麻雀牌:九萬でチーしてチンイツのテンパイを入れた。待ちはノベタンの麻雀牌:三萬麻雀牌:六萬麻雀牌:九萬だ。

ここに仲林が追いつく。まずは11巡目、ドラの麻雀牌:一索を引いて、トイツ手としてのみならず、メンツ手としてのイーシャンテンにも取ると、14巡目にカン麻雀牌:三索を引き入れてイーペーコー・ドラ3の12000テンパイ。自身で5枚使っている麻雀牌:一索麻雀牌:四索ではなく、河に麻雀牌:五筒が3枚見えていて場況のいい麻雀牌:三筒タンキに取った。

しかし、最後の1枚は矢島。麻雀牌:三萬をツモって2000/4000とした。親番の仲林は4000の支出となり、一時ラス目に後退した。

東2局は矢島の一色手だったが、東3局は堀の一色手が成就する。ドラ麻雀牌:南トイツの堀は、5巡目に麻雀牌:西を重ねて5トイツ。マンズターツ(麻雀牌:六萬麻雀牌:四萬)を払い、ソーズに寄せる。

このような手になったとき、メンホンチートイにするかホンイツトイトイにするか、もし筆者がこの席に座っていたら悩むところなのだが、

堀の選択は、麻雀牌:西ポンから発進。

すると、麻雀牌:南ポン麻雀牌:六索ポンと、立て続けに鳴けて、麻雀牌:二索麻雀牌:四索のシャンポン待ちで18000のテンパイ。

試合前のインタビューで「初日好調(+168.0pt暫定首位)の要因は?」という質問に対し、「裏ドラの乗り具合ですかね?」とまぜっかえした堀。この手は裏ドラ無関係で高打点に仕上げた。

さて、堀のフーロがすべて下家からであることに気づいてもらえただろうか。露骨なホンイツ模様の堀に対し、ドラの麻雀牌:南を含む3枚切ってきた下家は何をやっているのだろう。その答えは、現雀王・浅井堂岐の手牌をご覧いただく。

元々まとまっていた手牌から、上家である堀が3フーロして手番が増えたことも利用し、浅井は絶好の麻雀牌:五筒を引き入れて三面張リーチにこぎつけていた。まだ4回しか手番を行っていない矢島・仲林がなすすべなく見守る中、

麻雀牌:五萬
麻雀牌:六萬
麻雀牌:七萬
麻雀牌:二筒
麻雀牌:三筒
麻雀牌:四筒
麻雀牌:四筒
麻雀牌:五筒
麻雀牌:六筒
麻雀牌:七筒
麻雀牌:八筒
麻雀牌:四索
麻雀牌:四索

ドラ

麻雀牌:南

浅井は倍の8回手番を行い、8枚目を横に曲げる。ただでさえ三面張vsシャンポンは三面張に分があるのに、今回は堀のシャンポンの片割れである麻雀牌:四索が浅井の雀頭になっており、初日を3位(△122.0pt)で終えていた浅井にとってまさに「反撃の狼煙」になるはずだった。

しかしここで思い出してもらいたいのは、麻雀が「待ち枚数の多い方が勝ち」ではなく「待ち牌が先にあった方の勝ち」というゲームだということだ。

麻雀牌:三筒麻雀牌:六筒麻雀牌:九筒をつかまなかった堀に対し、麻雀牌:二索をつかんだ浅井。1日目を終えて暫定首位の堀が、さらなる飛躍を遂げるアガリだった。ホンイツ・トイトイ・ドラ3の18000。

堀のシャンポン待ちの片割れが自身の手の雀頭だったことを、その目で確認した浅井。心中はいかばかりか。

一方の堀は、自身や浅井の待ちの枚数など知る由もない。場に出された点棒をスッと点箱にしまい、次局に向かう。

オーラスは、

東家・浅井11200

南家・矢島14300

西家・仲林18000

北家・堀56500

で迎えた。堀以外からの出アガリでは、仮に役満を作っても届かない3者は、2着を目指して手組みをする。

先制テンパイは矢島。三色にイーペーコーもついて打点が5200で確定する、麻雀牌:九筒を引いてきてテンパイ。待ちはペン麻雀牌:七索。どこから出ても2着浮上できるのでダマテンに構えたのだが、現状トータル2位の仲林が2着目なので堀からの差し込み期待のリーチという選択肢はなかっただろうか。

しかしここに仲林が追いつく。2着目の仲林にとっては「着アップ」はほぼないものの、もし「着ダウンしなかった」ということになれば、それは「着アップ」と同じ価値を持つ。首尾よく三色になるツモ麻雀牌:五筒を引き入れて、高め三色のテンパイだが安めでも全く問題ない。

2着をめぐる三色対決は、矢島が麻雀牌:五萬をつかんだことにより、仲林に軍配が上がった。

6回戦は、1日目5半荘トータルの着順と同じ並びになり、縦長がより顕著になった。トップの堀は「(ポイント状況をあまり気にせず)普通に打てるのが嬉しいです」と言う。

一方の仲林・浅井・矢島は、この辺で堀の独走を止めておかないと、後々苦しくなることが分かっている。普通に打つ堀vs堀の着順を気にする3者の決定戦は、7回戦に突入していく。