第22期雀王決定戦観戦記 4日目/最終日(20回戦)
第22期雀王決定戦観戦記
4日目/最終日 20回戦
【担当記者:五十嵐毅】
座順 仲林―浅井―矢島―堀
まず、この場所に解説者として座っていた者として、謝罪しなければならないことがあります。
東1局、どう見ても役牌バックの親・仲林の仕掛けに中盤を、ド終盤にを切り出した堀の意図がまったく読み取れなかった。この点に関して番組をご覧になっていた皆様、及び堀にお詫びを申し上げます。
どういうことか、この場を借りて解説したい。
4巡目に親の仲林がドラ表示牌のをカンチャンで喰いつく。次巡のリャンカンにをスッポリ入れてイーシャンテンに。
ドラ
8巡目に下家・浅井がツモ切り。当然これをポンしテンパイ。
11巡目、浅井はこの手になる。
ドラ
このを矢島がチーしてタンヤオのカンテンパイを入れるのだが、この巡目に堀がションパイのを切った。
17巡目、浅井はをツモる。
ドラ
浅井はこのが切りきれず、切りとした。
次巡、浅井ツモ、打とすると、すぐに矢島からが出てポンテン。
ドラ
ここで堀はを切り飛ばした。勝負でもなんでもない。手牌は七対子でもメンツ手でもリャンシャンテンである。
堀は「を打たれた同巡だったから」と語っている。
もう一度、仲林の手を振り返ってみよう。
ドラ
この手は本来、をポンして–待ち。あるいは–をツモるかチーをしての待ち。これが順当なコースである。
は本来は雀頭候補であった。
しかし、このが出たためにポン。もちろんポンテンに取るのだが、このため役牌との片割れがであることが堀には透けて見えたのである。
堀は「(シャンポンの)相方は100%」
と語っている。そうはいっても100%はないんじゃないのか?
とかとかからの打ちもあるのではないかと思えてしまう。
しかし、いま局面をあらためて見ると(以下、牌譜参照)
仲林は3巡目にを切っている。すると、
、の形はない。あれば、ここで出来メンツとなっての雀頭が確定する。
は仲林がポンテンを入れた2巡後にツモ切っている。そのための形もない。あればフリテンとなる。(その後、は場に3枚見える)
つまり、仲林の手に残された7枚、出来メンツのは定かではないが、
(出来メンツ)+(役牌トイツ)+()
の組み合わせであることは特定できるのである。
1枚目のは矢島がチーして捨て牌から消し、2枚目のは直後に打たれたをポンして堀と矢島のツモ番を飛ばしている(ポン抜け)ので画面上ではわかり辛くなっているが、堀が打ったとはどちらもが打たれた同巡であり(ポン抜けがあった場合、厳密には同巡ではないが、仲林のツモ番を経過していないという意味では同意)この一巡は「当たれない牌」と、まさに100%の読みがあって切られた牌なのである。
一方、の同巡に役牌を打ち出した堀に対して、仲林は「さすがだなぁ」と思っていたという。仲林にこういう鳴き読みを教えたのが他ならぬ堀だったからだ。
しかし、読み切っていて技術点は高くても、ノーテンはノーテン。しかも一人ノーテンである。
1本場も堀はノーテンで差は開く。
2本場、矢島がとのシャンポンリーチ。これに仲林がで放銃するが、点数は1300+600と安く、堀ラスのまま。
東2局は親の浅井がリーチして流局。仲林一人ノーテン。
1本場、ドラがで仲林がカンマチのリーチ。堀がタンキで追っ掛けたが、仲林がツモって1300・2600。このアガリは大きい。
東3局、仲林が終盤、この手からを切る。
すると、浅井がこれをポンしてテンパイ。
喰い流れたをすでに形テンを入れている矢島がツモ切ると、堀がチーテン。
連鎖反応が起きるように3人テンパイとなった。仲林、しまったと思っただろう。またも一人ノーテンか、と覚悟したにちがいない。
しかし……
浅井の手はドラアンコだが、役は頼み。その發は矢島と持ち持ちだったのでアガリはないと思われていたのだが、矢島のツモったハイテイ牌は浅井のシャンポン待ちの片割れ。
矢島はテンパイなのでツモ切ると、浅井がホウテイでアガれたのである。
満貫を放銃した矢島だが、東4局に堀とのリーチ合戦に勝って1300・2600のアガリ。
浅井と矢島は最終戦開始前に自分の親番が終わるまではアガリにかけると明言していた。こうして3者が交互にアガるなか、堀はなんとノーホーラのままラス前に。
その南3局、親の矢島が仕掛ける中、堀はテンパイを入れ、仮テンをツモる。
ドラ
1000・2000ツモで良しとしていられる場面ではない。一人大きく離されているのだ。
ということで、場をじっくり見渡した堀は切りフリテンリーチを敢行。
これが3枚残りと山読み正解で、すぐにを引き戻して満貫。
しかし、まだまだ点棒が足りない。
オーラス、協会の規定でラス親は堀。浅井と矢島はもうアガリには来ないだろう。あとは堀がどれだけ連荘できるか、仲林が終わらせられるかの勝負である。
オーラス、仲林は5巡目に堀の切ったをペンチャンでチーしてバックの仕掛けを入れ、そのをアンコにしてテンパイ。待ちは–。
圧倒的有利と思われたが、この–はすでにヤマになかった。
しかし、そのが出そうだったのが七対子イーシャンテンの堀。
ドラ
ドラは。ドラを引いても、ドラ待ちになっても、3枚持ちのは出て行く。
しかし、この手にを引いたところで考えた堀はを手放した。
「ドラで打っても何しても、ここで終わったら負けは一緒」
ということで、テンパイ重視で受けを広くしたのである。
堀はすぐに仲林の切ったをポン。
ドラ
これでが出ていかないことが確定した。加えて、堀のトイトイのアガリは十分ある。さらに、形テンでも良しとするなら、も有効で、非常に広い受けである。
トイトイテンパイとなるは2枚、は1枚、は1枚、形テンのは3枚、は2枚(は場に4枚切れ)と計9枚もヤマに残っていた。
仲林のアガリがなくなったことで、解説の私は「これでもう1局あるのは確定ですね」などと言っているが……
なんと、堀はをポンした後の5巡、計9枚の有効牌がひとつも引けずに終局したのである。
第22期雀王・仲林圭。おめでとうございます。
やっと勝ったか、というのが正直な印象である。
メンゼン主体で、相手から攻められても粘り強く回し打つタイプで、成績は安定している。リーグ戦の成績を見ても危なっかしいポジションにいることはあまりない。
防衛戦となる来期の決定戦だが、仲林の場合、少なくとも中盤までに大きく離されたりすることはなさそうだ。
終盤になって首位に立っているか、首位走者に食らいついているか、そんなイメージである。
そう考えると、連覇の期待も高まるのである。