第21期雀竜位決定戦観戦記 3日目(最終日)(12回戦)
第21期雀竜位決定戦観戦記
最終日 12回戦
【担当記者:中島由矩】
12回戦(江崎-安藤-小池-堀)
12回戦を見終わって、つい2日前に読んだ当会代表・五十嵐毅のコラムを思い出した。
みなさんドラって好きですか?
僕は好きですよ。…自分のところにくれば。
他の人に行っていたら嫌いです!
ドラが3つあるだけで、タンヤオのみが満貫になる。
こんな理不尽なものはないと思っています。
12回戦では、豊富なドラを使いこなして高打点をたたき出したシーンと、それとは対照的に手役を駆使して対抗したシーンを切り取っていく。
ドラが手役を蹂躙するのも、手役がドラを凌駕するのも、どちらも麻雀の魅力だと思う。
東1局、南家の安藤から4巡目にリーチ宣言。
これが甲子園なら「サイレンも鳴りやまないうちに」と形容したいところ。
待ちはカンと心もとないが、ドラドラを内蔵しており打点は十分だ。
しかしここは親の江崎が仕掛けて500オールのアガリでかわす。
安藤は攻勢を緩めない。
続く東1局1本場、再びドラドラのリーチ。
14巡目と深いものの、今度は3メンチャン。
前局安藤の先制リーチをうまくいなした親の江崎が今局再び立ちはだかる。
カンを引き入れて愚形ながらテンパイを入れると、決断良くリーチ。
安藤に回ればツモ切ってくれそうなカンで勝負する。
しかしここは形の良さで勝る安藤に軍配。
リーチ・ツモ・ドラドラの2000/4000は2100/4100で江崎に一撃を返した。
「トップが偉いルール」かつ「一発裏あり」で1万点のリードは決してセーフティーとは言えない。
東2局親番を迎えた安藤、三度ドラドラの配牌をもらうと役牌のポンから発進。
打としてドラドラを固定した。
ここに対抗したのは南家の小池。
を重ねてチートイツをテンパイ、待ちでリーチとした。
ここにドラドラの安藤がバランスを取りながら攻め、とのシャンポンテンパイにたどり着くと、
最後はドラのをリーチ者小池から召し取って12000のアガリ。
安藤は東3局でも3巡目にドラのを暗刻にし、さらなる加点を目論む。
しかしここは親番の小池がやり返す。
リーチ・一発・ツモ・發の4000オール。
ドラを持たない小池は、一発で役牌をツモり4000オールとした。
次は堀が高打点を目指したシーンを紹介しよう。
ドラのを限界まで引っ張って手に留めたが、テンパイを入れるとドラを放つもののリーチは宣言せず。
トータルポイントを考慮しても、この12回戦の着順としても、リーチして打点アップを目指すのが自然な選択に思えたが、
堀の思考はさらにその上。
安藤から出たもも見逃し、ツモでのアガリを拒否しての打フリテンリーチ。
しかしここは流局で、堀の思い描いた未来にはならず。
南3局1本場では安藤がチートイツドラドラのツモアガリで2000/4000は2100/4100、リードを広げてオーラスを迎える。
安藤 58400
小池 18600
江崎 11900
堀 11100
点棒状況だけを考えれば安藤のワンサイドゲームで、他家がつけ入るスキはないように見えた。
2着目の小池は役満ツモや三倍満直撃でのトップよりも、下を見る戦いになりそう。
しかし、このテンパイが入ったらどうだろう。
ドラを持たない者による、手役を尽くした必死の抵抗。
小池はリーチを宣言した。
この高めがトップ目の安藤のもとに訪れたことにドラマを感じざるをえない。
ここまで11局もの間、ドラと手役の間で戦ってきた。
手役、最後の一太刀。
トップ目の安藤は前述の通り、倍満までの放銃ならトップでこの12回戦を終えることができる。
自身もテンパイのため、この1枚くらいはいってもいい。
それだけのたくわえを築いてきたのだから。
リーチ・南・ホンイツ・チャンタ・イーペーコーは16000点。
トータルトップから「32pt差を縮めた」と言う他ないアガリは、こうして生まれたのだった。
12回戦トップは安藤。
11回戦からの連勝で、ポイントを大きく伸ばした。
2着は小池で、念願の初タイトルに向けて必死に食らいつく。
3着江崎、4着堀は両者ともマイナスがかさんできたため、残り3戦は自身のトップだけでなくトータル首位の安藤を沈めることも意識した戦いになるだろう。
しかしそれができる百戦錬磨の選手たちなだけに、13回戦以降にも目が離せない。