第21期雀竜位決定戦観戦記 3日目(最終日)(11回戦)
第21期雀竜位決定戦観戦記
最終日 11回戦
【担当記者:庄司麗子】
以下の点棒状況で半荘を終えた時のポイント推移の一例。
選手A・40000点 ⇒ +60
選手B・30000点 ⇒ +10
選手C・20000点 ⇒ △20
選手D・10000点 ⇒ △50
各者間のポイント差の縮まりはA対Bは50ポイント、A対Cは80ポイント、A対Dは110ポイント。
この並びとポイント差を意識して臨むのがタイトル戦の醍醐味である。
一局単位の得失点を重視した選択ではなく、ターゲットの持ち点やポイント状況から並びを意識する選択を迫られる一日。
この雀竜位決定戦でも多くの選手たちがこの一日に挑んできた。
最終日ならではの苦渋の選択に泣き、また僥倖の勝利に微笑んだ選手もいた。
首位から4着までのポイント差が約200。
まだ全員に現実的な優勝のチャンスがあるとはいえ、追う堀・江崎は早くも並びを意識した戦いを強いられる。
さあ、最終日の初戦が始まった。
11回戦(堀-江崎-小池-安藤)
東3局2本場 ドラ 供託2
開局から2局続いて流局となり初アガリは江崎。
ピンズが二度受けの形だったが、ツモで–待ちの先制リーチ。
をツモって供託も獲得、膠着状態から一歩前に躍り出た。
東4局 ドラ
親の安藤が二向聴の好配牌から4巡目リーチ。
三色の高目は山に0枚だったがを一発ツモ。
裏ドラがで6000オール。
ここからさらに3局連続のアガリで60000点の大台に乗った。
さあ後半戦、この半荘で安藤を追う一番手は誰になるのか。
南1局 ドラ
ここまで苦しい展開が続いた堀だったが親番で一閃。
裏も乗り6000オールで2番手に浮上。
南1局1本場 ドラ
堀にまたもや好配牌。
8巡目にリーチをかけるとこれが山に6枚。
4000オールのアガリで安藤を射程圏内に捕える。
南1局2本場 ドラ
堀と満貫ツモ圏内になってしまった安藤だが、ここでまとまった配牌をもらいこの形。
–待ちのテンパイだが、四暗刻の一向聴でもある。
が場に1枚ずつ出ているが、ピンズの上は場況良しと見ればヤミテンでの出アガリやツモで堀の親落としもできる。
他三者がこの手牌だったならばどうだったろうか?
また、初日の一回戦目ならばどうだったろうか?
今日この時の安藤は、このままリーチを選択。
見事高目をツモり、24000点差をつけて2番手堀の親を終わらせた。
これはトータルポイントを考えると好選択だったのではないだろうか。
南2局1本場 ドラ
堀が2巡目に七対子ドラドラのテンパイ。
生牌の単騎に変えたところに、親の江崎から––待ちのピンフリーチが入る。
それに合わせる形で堀も同巡にツモ切りリーチ。
江崎
堀
アガリ牌は共に山に残り3枚ずつだったが、堀が掴んだで江崎に軍配が上がった。
南4局 ドラ
江崎・小池の着順アップ条件は倍満ツモ。
堀は安藤がリーチした後に跳満直撃か倍満ツモと縦長の並び。
現実的な妥協点として素点の回復がテーマになるだろうか。
トップ目の親の安藤は稼げるだけ稼いで特大トップを狙いたい。
9巡目、堀が最初にテンパイを入れた。
堀
役無しの–待ちだが、すでに4枚見えのためヤミテン。
13巡目にツモで打のシャンポン待ちに変化したがここもリーチはせず。
親の安藤も一向聴だったが、14巡目には堀の現物の抜いて撤退。
この時小池はというと。
四暗刻の一向聴、ポンしても倍満ツモが見える手牌だ。
先述のテンパイを入れていた堀に再度選択が訪れる。
残りツモ回数は3回。
四暗刻をツモれる可能性もゼロではない。
1局単位の期待値であればこのままテンパイを維持することが得策であろう。
しかし僅かな可能性に賭ける価値が決定戦にはある。
打でテンパイを崩し、四暗刻に向かう。
だが時すでに遅し、両者ともにテンパイを果たすことなく全員ノーテンで長かった半荘が終わった。
四暗刻の出現率は0.04%。
12種ある役満の中では最も出現率が高い。
南1局2本場の安藤の選択と、オーラスでの堀の選択。
トータルポイントと現状の持ち点でその選択に違いが出ることを痛感した半荘であり、この選択の差こそがこの決定戦を物語っているように感じた。
役満による大逆転は奇跡のようだが、それを実現したシーンを数多く見てきた。
残り4半荘にどんなドラマが待っているのか。
まだ誰にも分からない。