第21期新人王戦決勝観戦記(1回戦)

第21期新人王戦決勝観戦記
1回戦

【担当記者:武中進】

今期の決勝進出者およびデビュー期は以下の通り。

■はじめ(19期後期)
■姫川ちより(18期前期)
■夏目ひかり(17期後期)
■新林淳三(18期後期)

昨年度のりんのなおのように、既にビッグタイトルを獲得している選手は今年はいない。
各選手の事前情報もほとんど無く実力的にも未知数の4人による争い、どのような展開になるのか個人的には非常に興味深い。

1回戦(はじめ-夏目-新林-姫川)

東1局、親番のはじめに好配牌。

マンズ10枚で無理なく染め手を狙える形、のトイツ落としから入る。
4巡目にをポンしてあっさりとイーシャンテン。

ダブやドラのの重ねは勿論、この巡目であれば2手先のチンイツも望める形。
…であったのだが、ここから恐ろしい程マンズも字牌も引かない。
ようやく有効牌が来たのはなんと最終手番1つ手前の17巡目であった。
10巡以上ひたすらツモ切りを繰り返すこの局のもどかしいツモは、振り返ってみるとこの半荘の彼の厳しい展開を象徴するかのような局だった。
この後もとにかくかみ合わないツモと恵まれない展開に彼は翻弄される事になる。

さて一方で、はじめの仕掛けを受けた3者の対応の違いが印象的だった。

まず夏目の進行。
手の価値が低いことやドラのが浮いている事を考えると早々のオリを決める人もいそうな局面だが、彼女はここから切り。
はじめがツモ切りを繰り返しており進行が見られない点を考慮しての選択とは思われるが、かなりの前傾姿勢である事は明白。
本決勝を基本的には「攻め」で突き進む彼女の意志が垣間見えた。

それは姫川も同様。
中盤になっても手替わりのないはじめの様子を見て、あまり打点は上がらないであろう形ながらも切ってぶつけにいく。

一方、違う方向性の対応を見せたのが新林。
はじめの切りを見てスピードでは明らかに後れを取っている事から、慎重に受けにまわる。
当然の選択の一つなのだが、夏目・姫川であればトイツ手にハマった時の打点の高さを考えてマンズを先に処理し、「鳴かれたら考える」という攻めの余地を残した進行をしそうだと感じた。

攻めから入った女性2人とは逆ルートを選んだ新林。
だが、勝負の女神はそんな彼の姿に魅せられたと言わんばかりの噴火タイムがこの後訪れる事になる。

ここまで点棒的には姫川が東1局1本場と東2局のアガリで一歩リードして迎えた中、親の新林がまずはリーチタンヤオ裏1の7700を夏目より出アガリ。

1本場ではリーチピンフドラ2の12000は12300を同じく夏目から出アガリ。

この2回のアガリで姫川をかわしてトップになった後も、新林の淀みない手順にツモと展開が噛み合い点数を伸ばし続ける。
一方で好配牌をもらいながらもツモが噛み合わずアガリに結びつかないはじめと、積極的な攻めの姿勢が裏目の展開になっている夏目がとにかく厳しい展開。

5本場では新林が2着目の姫川からダブ東ドラ1の7700は9200を直撃しトップをさらに盤石に。
6本場のノーテン流局でようやく親が終わったときにはすでに6万点オーバー、2着と4万点以上の差をつけていた。

さて、その直後の東4局7本場、新林が6巡目にまたしても先制のテンパイ。

ピンフのみだが供託1本と7本場を得て場を流すだけで十分ゆえにダマテンとする。
だが直後にを引いて高め三色テンパイとなるとリーチを宣言。

この選択は少々意外だった。
たしかにこの場がタイトル戦の決勝である事を考えると、更なる加点を目指す選択もある。
だが東1局に彼が見せた守備的な選択を考えると、ここは無難にダマテンを続行するだろうと予想していた。

「5半荘をトータルで勝ち切るために、アドバンテージがある局はきっちり攻める」
そんな彼の意気込みが聞こえてくるかのような選択だった。

直後に同じく勝負手が入っていたはじめが新林の高めであるをアンコにして追っかけリーチ。

だがそれも想定内、親相手なら多少は怖いが、子のカウンターはこの点棒状況なら恐れるに値しない。
そして直後のツモ牌はこの半荘を完全に我がものとするかのような4枚目の
裏も乗っての3000/6000は3700/6700と大きな加点を成し遂げた。
はじめからすれば悲しくて言葉にならない結果である。

南場は完全に3者の着順争いとなったが、姫川が東場のリードを守って2着を死守。
夏目はオーラス着順アップを目指した見逃しからのツモアガリを決めるも、裏ドラが乗らずに4着脱出ならず。
1回戦は新林・姫川・はじめ・夏目の順で終了。
新林がトップ2回に匹敵する大きなリードを得る事となった。

個人的には姫川・夏目の前傾姿勢が2半荘目以降どのようになるのかが注目ポイントと考える。

特に夏目に関しては、きわどいながらも2着を死守した姫川や悲しい展開が続きながらも3着を確保できたはじめと異なり、この半荘の結果が選択にブレが生じないかが気になるところ。

残り4半荘、優勝は誰の手に。