第12回関西女流スプリント決勝観戦記(4回戦)

第12回関西女流スプリント
決勝観戦記 4回戦

【担当記者:新田友一】

●4回戦(大島-夏月-鳥井-小松)

接戦となっているが、カメラにポーズを決める余裕を見せる選手達。
しかし、その笑顔の裏側には絶対に勝ってやるという野心が満ち溢れているであろう。

ここまでは攻撃派が多く高打点の手組みも多かったが、4回戦の東場のアガリは1300が2回と300/500のみ。
この半荘に限って言えば別のゲームを見ているような感覚に陥った。

トータルトップでやや優位な立場の大島のこの局面。

安牌は足りる、どうしてもアガりたい手でもないが無筋のを勝負する。
小松のリーチはレンジが広く、リーチのみの手も多いことが判断基準となったかもしれない。
しかしこのときの小松はドラのをアタマにした待ちと打点も待ちも充分だった。
ここを見事にすり抜けテンパイ料を逃さずに拾っていく。

さて、南1局にようやく夏月がドラ単騎の1600/3200を決めて一歩リードする。

改めてトータルポイントとこの半荘の点棒状況を確認する。
大島はこの半荘のトップの価値が極めて高い。
トップを取れば周りに厳しい条件が突きつけられる。

一方他の三者は、大島より上であればこの半荘トップではなくとも最終戦にトップを取れば十分優勝に届くポジションである。
そのため、大島に大きな手を決められるのは致命傷となりうる。
ここまで圧倒的な攻撃姿勢で押し続けてきた小松でさえもガードを強化し流局へと持ち込んだ。

オーラスを迎え、2着目の大島とトップ目の夏月との差はたったの1900点。
親の小松が大島から2400をアガるも、まだ大島と夏月との差は4300点。
そして1本場、全員が恐れていた大島のリーチが飛んでくる。

鳥井は三色ドラ1のイーシャンテンでトップも見える。
しかし、それ以上にマズいのは大島に放銃して大島トップ自身がラスに落ちること。
少なくともこのままで終わることができれば大島、夏月との差は約70ポイント差なのでトップさえ取ることができればそんなに難しくない。

しかし一発で、次のも押した。
だが次に持ってきた無筋かつドラので鳥井の手が止まる。
さきほど述べた条件を思い返す時間だっただろうか。
実は大島のリーチ後に鳥井以外に小松もトップ目の夏月も押していた。

鳥井は小松、夏月に委ねてオリることを選択した。
押すことも勇気がいるが、オリることにも勇気がいる。

この決断が功を奏し、夏月がアガりきりこの並びを維持した。
あの局面でもし鳥井がを勝負していると大島のアガリとなり優勝の行方はほぼ決まっていただろう。
全員で作り出した物語は、まだ終わらない。

夏月 +53.2(+38.0)
大島 +4.3(+39.3)
鳥井 △17.4(△31.6)
小松 △40.1(△45.7)
(カッコ内はトータルポイント)