第6回関西チャンピオンシップ決勝観戦記

【担当記者:小田進也】

第6回関西チャンピオンシップ、決勝に残ったのが以下の4名だ。
■A卓1位通過 小南 昌平(日本プロ麻雀協会)

 13期前期入会、出られる対局には全て出るというスタンスで5年間駆け抜け、一度退会したが、22期前期より復帰。

■B卓1位通過 中出 雄介(麻将連合)

 2016年度よりツアー選手として活動。小南同様出られる対局には全て出るというスタンスを今でも貫いている。

■A卓2位通過 内藤 岳(最高位戦日本プロ麻雀協会)

 45期後期入会、東海支部に所属しているが関西でも東京でもよく名前を見かける。彼に限らず東海支部の選手は遠方の対局にも積極的に参加している印象。彼が関西の対局に参加した際に話す機会があり、麻雀に対する熱意を強く感じた。また、とある局面で何を切るかの話をしたのだが、彼の意見は非常に勉強になった。今回の対局は非常に楽しみである。

■B卓2位通過 城戸 大生(日本プロ麻雀協会)

 22期前期入会。元々最高位戦にも所属していたがトータルのキャリアでも今回の4人の中では一番の若手。私は1半荘しか対局経験がないが、その中で丁寧な麻雀を打っているなと印象に残った局が2局あり、私が勝手に期待している若手の一人である。
実はこの4人の中に「何故こんなに周囲からの評価が低いのだろう?」
私が常々そう思っていた選手が二人も決勝に残っている。小南昌平、中出雄介である。

私は彼らが新人だった頃からずっとそばで見てきた。彼らは明らかに見下されていた。本人たちも気づいていただろう。そんな彼らが様々な対局に出場し、経験を積み、この舞台に立っている。
「結果が出ない」
彼らは私にこう言った。結果とはもちろん「優勝」、この二文字だ。
しかし、予選通過率を見ていればわかることがある。彼らは確実に一歩ずつ成長し、力をつけてきている。そうでなければ、あの予選通過率は説明できない。今回、彼らは「結果」を手にすることができるのか?それとも、新しい世代が未来をつかむのか?非常に楽しみな5回戦が始まる。

■1回戦
5半荘もあるのか、5半荘しかないのか?感じ方はそれぞれ違うだろう。だがこのルールでは最低でも5半荘のうち2回のトップが欲しい。さて、この4人はどのように1回戦目を戦うのだろうか?東1局、まずは小南の自己紹介のような仕掛けが始まる。

この配牌から、最終的に1000点のアガリ。
テンパイを維持したままホンイツも視野に入れた仕掛け、いつも通りの小南だが、今後のためにできればあと1副露しておきたかったのではないだろうか。

一方、東3局の中出。

挨拶代わりにリーチをするものだと思ったがダマを選択。これは正直意外だった。そして親の小南から仕掛けが入る。

この仕掛けと直後の中出のドラ麻雀牌:四索のツモ切りを見てか、内藤はかなり慎重に打牌選択をし始めたように見える。城戸も半信半疑のまま、安全策をとっていたように見える。小南もホンイツ一直線ではなく少し中出をケアしたようだった。結果は中出の1人テンパイ。
私の予想では自己主張のぶつかり合いのような半荘になると思っていたのだが、お互いがお互いを牽制しあうような展開になっていった。

南2局2本場 ドラ麻雀牌:発
内藤が最初にテンパイするが1枚も見えていない麻雀牌:発をツモ。麻雀牌:六索のトイツ落としを始める。それを見て中出が今まで切れなかった麻雀牌:発を切って1人テンパイ。トイツ落としの間にテンパイし直しているリスクはあるが、可能性はかなり低い。中出の上手さが光った1局だった。

南4局
ピックアップしていないがここまで丁寧にまとめ、きっちりアガリを手にしていた城戸がトップに立っている。
2着目の内藤

前巡にドラの麻雀牌:北を離してここから麻雀牌:三筒をチー。2着を取りにいった内藤の打点が絞り込めた城戸はアシストに徹する。結果は内藤のアガリで1回戦が終了する。丁寧な選択だが、城戸は自身の加点にもう少し意識を向けても良かったのではないか?また、内藤は終局間際の麻雀牌:四索を見逃しても良かったのではないか?
城戸はほぼノーテン、小南はテンパイ濃厚、親の中出がテンパイで流局すれば次局マンガンツモでトップになる。最低2回のトップが必要になると考えれば、欲張っても良かったのかも知れない。
【1回戦結果】
城戸 +58.7
内藤 +7.3
中出 △22.4
小南 △43.6

■2回戦
1回戦は城戸と内藤が丁寧にまとめた。城戸は恐らく1回戦のような戦い方をベースに組み立てていくのだろう。城戸を追いかける形となった他の3人はどう組み立てていくのか?

東3局
小南の先制リーチに内藤が押し返す。

1回戦とは別人のような内藤の選択が実った局だった。

南1局
終始丁寧に打っている城戸だが、なかなかリーチが実らない。
中出が3副露からきっちりとオリて流局。悩むそぶりもなくスッとオリていることから先に決めていたことが伺える。

南2局2本場

1回戦の内藤はリーチしただろうか?そもそもテンパイをとっただろうか?

結果は2000/4000は2200/4200のツモアガリ。これが決め手となり2回戦は内藤がトップとなった。

【2回戦結果】()内はトータル
内藤 +59.9(+67.2)
中出 +10.7(△11.7)
城戸 △19.6(+39.1)
小南 △51.0(△94.6)

■3回戦
2回戦が終わり、2ラスの小南はどうしてもトップが欲しい。中出も少なくとも内藤よりは上の着順で終えたいところだが、その中出の東1局。

フリテンの麻雀牌:一筒麻雀牌:四筒を固定する。恐らく遠くに少しだけ見える234に引っ張られてしまったのだろう。これでアガリを逃したわけではないのだが、せっかくの親番、もう少し柔軟に構えても良かったのではないか?少し焦り始めたようにも見える。

東2局

内藤がリーチ。
1回戦の内藤ではなく2回戦以降の内藤が本来の姿ではないか?活き活きとしているように見え、リーチにためらいがない。このリーチは実らなかったが、ここから内藤がアガリを決め先行する。しかし城戸も必死に食い下がる。

そして迎えた南4局3本場。

この小南のテンパイに城戸が12000は12900の放銃。城戸は2着→4着に。
これは小南も嬉しいが同時に内藤にとっても嬉しいアガリ。当面のライバルが2着順落ちたのだ。
城戸目線で見た時、この麻雀牌:四萬を止めることは出来るだろうか?小南はここまでほとんど手牌を相手に見せる機会がなかった。そのため、小南の仕掛けを評価するのが難しい。だが、麻雀牌:一萬をポンして早々にドラの麻雀牌:一索を切り飛ばし、麻雀牌:三萬をリャンメンチー。
役牌アンコだとしたらドラが早いので、チンイツ濃厚なのだ。麻雀牌:発が見えていないので、残していた麻雀牌:発が重なって2900ということもあるかも知れないがやはりチンイツが本線だろう。だが自身は喉から手が出るほど欲しいマンガンのテンパイ。

もちろん腹をくくって勝負する選択もあると思うが2回戦までの城戸を見ていてこの麻雀牌:四萬を勝負するとは思わなかった。小南は親なのでテンパイしていてくれればまだ半荘は続く。自身がトップになれない時は小南にテンパイまでアシストし続け、内藤を捲ってもらうというビジョンもあった。
焦りと緊張なのか、もったいない放銃に見えた。
次局は4着と1000点差未満の中出が渋々3着をキープするアガリを決め、内藤の連勝で3回戦が終わった。

【3回戦結果】()内はトータル
内藤 +56.7(+123.9)
小南 +7.2(△87.4)
中出 △20.4(△32.1)
城戸 △43.5(△4.4)

■4回戦
大きく差が離れているように見えるが、このルールではまだまだ勝負の行方はわからない。トータルスコアと真逆の並びでフィニッシュすれば小南にも現実的な条件が見えてくる。そしてリードした内藤はどのように組み立てていくのか。

東1局1本場

親の小南の先制リーチに対して内藤が追いかけリーチ。
決勝戦でなければ当たり前のように見えるが、これまでのリードを一気に失う可能性もあり、内藤の立場でこのリーチは怖いものだ。
このリーチ合戦は流局に終わる。

城戸が加点し迎えた南2局3本場。

城戸に30000点以上リードされている内藤がこの手をリーチ。河にも注目してほしい。ダマならすぐにでも中出か小南から出てきそうに見えないだろうか?まるで出すなと言わんばかりのリーチだ。これが実り、2000/4000は2300/4300のツモアガリ。

南3局、本人以外は誰も望んでいない内藤の親番が終わらない。オーラスを迎えた時には城戸に15600点差をつけて内藤がトップに立っていた。中出が粘るも内藤が逃げ切り。

【4回戦結果】()内はトータル
内藤 +82.8(+206.7)
城戸 +20.8(+16.4)
小南 △26.4(△113.8)
中出 △77.2(△109.3)

■5回戦
それぞれに逆転の条件はあるものの実質コールドゲームだ。できれば追われる立場に立った内藤がどのように打ちまわして行くのか興味があったのだが、それも叶わないほどの大差となった。
第6回関西チャンピオンシップは内藤の優勝で幕を閉じた。

恐らく彼はまだまだ満足していない。次のタイトルを求めて東海支部を拠点にチャレンジし続けていくだろう。これからのさらなる活躍が楽しみだ。