第22期雀王決定戦観戦記 2日目(7回戦)
第22期雀王決定戦観戦記
2日目 7回戦
【担当記者:中島由矩】
(矢島-堀-仲林-浅井)
6回戦は、1日目を終えての総合順位とまったく同じ着順になり、徐々に差が開きつつ迎えた7回戦。視聴者としてはそろそろ下位陣の巻き返しも見たいところだ。オープニングムービーを見ながら、今後の展望をまとめてみよう。
インタビューでは「恵まれて…」という言葉を多く使う堀慎吾。配牌に恵まれて育てた手を、幸運に恵まれてアガり、展開に恵まれてトップを量産している、という意味だろう。しかし、その類まれなる実力は、誰もが認めるところだ。
また、普通は勝負できない牌を通し、常人には止められない牌を止めて、点棒を増やしたり、減らさなかったりしているのも、視聴者にはしっかり伝わっている。「(ポイントを状況をあまり気にせず)普通に打てるのが嬉しい」と語る堀。+245.2ptの暫定首位、まだ当面は普通に打てそうだ。あるいは最終20回戦までも。
「トップが偉い」と形容される協会ルールにおいて、あまり効率がいいとは言えない2着をたくさん取ってきたのは仲林圭。しかし筆者は、2回戦オーラスでハネツモ逆転トップを目指してテンパイを外した瞬間を見た。
この7回戦でも、後に紹介する執念の見逃しがあったし、トップを目指した手組みが随所で見られることだろう。仲林いわく「4回に1回は勝てる」ゲームに、今回が4回目の挑戦となる。パイレーツのチームカラーである「確率」に沿った、いい偶然を引き寄せたい。
ここまで苦しい展開が続くのは、人気・実力ともに押しも押されもせぬ看板選手となった第21期雀王・浅井堂岐。
浅井は「逆襲のヘラクレス」という二つ名を持っている。重厚な手組みで機をうかがい、相手の先制攻撃に対して高打点で押し返していく麻雀を見せたい。
当会初のグランドスラム(雀王・雀竜・オータムCS・日本オープン)を達成し、つい先日第18回オータムCSで連覇を果たした矢島亨。
決定戦においてはここまで、あと1牌が遠い展開だが、内容自体にさほど大きな不満はない。いつも通りの麻雀で、いつも通りの勝利を手中に収めたい。
麻雀は、東4局1本場、親番浅井の配牌から見ていこう。
ドラのを含む3トイツ。ホンイツならソーズ、トイトイならドラのダブを鳴ければ十分形になるだろう。
ここに、イーシャンテンの矢島からが河に放たれる。
ダブドラ3の浅井vsのみの矢島、が見られるかと思いきや、浅井はこのダブをスルー。
すぐ次の手番で絶好のを重ね、タンキでリーチに行く。
すると、このリーチを受けた一発目の矢島がツモで三面張テンパイを果たす。即リーチで勝負。しかし、ここで矢島に大きな誤算があった。
––の残り枚数だ。順に見ていこう。まずは河にが2枚、矢島自身が引いてきたが1枚、
堀の手にが2枚とが1枚、
仲林の手にが1枚、そして極めつけは、浅井の先制リーチの牌姿を思い出してもらいたい。
が2枚、が2枚だ。合計11枚。
つまり、––vsタンキは、1枚vs2枚でタンキの方が枚数で勝っている。こんなこともあるのが麻雀だ。
果たして、確率通りにが先にいて、矢島がそれをつかみ、浅井が牌を倒した。
リーチ・チートイツ・ドラドラにウラウラが乗って18000。6回戦では堀の18000が飛び出し、勝負を決定づけたが、この7回戦も18000が命運を分けるのだろうか。
しかし、浅井は40000点を超えたところから矢島にチンイツの8000を献上し、2着目の堀にグッと接近。さらに南1局0本場の1人ノーテンで、ついに逆転も許してしまう。
先制リーチは、トップ目の堀まで11600差にまで迫った仲林。
冒頭にも書いた通り、ここまで2着になることが多かった仲林だが、オーラスはトップ目をまくるための手作りをしていた。
筆者が観戦記を担当した1日目2回戦オーラスでは、上のテンパイからイーシャンテンに戻すに手を掛けた。14600上にいるトップ目の矢島をハネツモでまくるためだ。
今7回戦では、手なりで打てばの形で–待ちのピンフテンパイになっているはずの手を、、と外していき、234の三色を目指した。
できればタンヤオと三色の両方が確定するツモがよかったものの、ぜいたくは言ってられない。仲林はを横に曲げ、リーチを宣言した。待ちは––だ。
仲林のリーチ宣言牌を、親番浅井がチー。できれば門前で進め4000オールや6000オールに仕上げたかったところだが、
■仲林がリーチで
■三色が確定する方のであれば
渋々といったところだろう。待ちは–になった。
このピンズ対決、まずは浅井が仲林のアガリ牌であるをつかむ。しかし、仲林はこのを見逃し。あくまでも–ツモの3000/6000でトップを取ることにこだわった。
これで–ツモということになれば、仲林の二つ名「龍を継ぐ者」になぞらえて「龍が出たぞ」ということになるのだが、
仲林がツモってきたのはで、これは浅井のアガリ牌。
龍を継ぐのは簡単じゃない。
こういうやり取りがあって迎えたオーラス1本場では、さっきの放銃でいったんラス目に落ちた仲林が、今度は切り替えて2着取りに向かう。
自風のを暗刻にして、マンズにいこうとした矢先に重なるツモ。2回戦の、あるいはつい先ほどのハネツモ逆転トップがある状況では、仲林も3000/6000を目指すのだが、今回はトップ目の堀まで15500離れており、1本場を加味しても100足りない。また、2着目の浅井までわずか1900差ということもあり、仲林はこのを採用し手に留めた。
仲林はこの重なりを足掛かりに、ピンズで678のメンツを作ることに成功し、タンキのテンパイを入れると、
を引き入れてイーペーコーを完成させ、打。–の両面テンパイに取ると、安めのだと1300は1600となり打点が足りない。
最後は矢島から打ち取り、2着に再浮上して終局となったのだが、誰かがリーチ棒を出していたら、裏ドラ期待で仲林もリーチしたかもしれない。
7回戦トップは堀。これで7戦5トップとなり、自身2度目の雀王戴冠を力強く引き寄せた。
2着には仲林が滑り込み、これまた7戦して2着が5回。もどかしい展開が続く。
横移動により3着に上がったのは浅井。ヘラクレスの逆襲はどこから始まるのか。
オーラス痛恨の放銃によりラスへと転落したのは矢島。高打点のアガリは要所で決まっているので、あと一押しどこかで復調のきっかけをつかみたい。
そういえば、実況や解説も途中で代わることが多いようだが、この観戦記も8回戦からは交代になる。
後半戦もぜひお楽しみいただきたい。