第14回チャンピオンロード ~女流雀王シリーズ~

【担当記者:清水堅斗】
【優勝】神埜美冬 【2位】伊勢高博 【3位】上山英樹さん 【4位】水崎ともみ
18時35分。都内某所、静寂が支配する会場に、ついに最終決戦の火蓋を切る合図が響いた。日本プロ麻雀協会の記者として、私はこの「女流雀王シリーズ」の結末を記録する。
全6回戦を終え、トータルポイントは以下の通り。
伊勢:+276.3
上山:+210.9
水崎:+193.6
神埜:+187.1
トータルトップの伊勢を、残る3名が追うという明確な構図。しかし、点差以上に現場には「何かが起きる」予感が漂っていた。開始時の持ち点は、1000点が1ポイントに換算されるこの舞台において、89.2ポイントの差を逆転するのは容易ではない。だが、追いかける3人の瞳には一点の曇りもなかった。
東1局0本場:神埜の速攻
親番・神埜の配牌は以下の通り。
ドラ
トータル最下位からの大逆転を狙う神埜は、1巡目から意志の強さを見せる。をポンして積極的に仕掛け、自ら場の主導権を握りにかかったのだ。4巡目、上山からリーチが入り場に緊張が走るが、神埜は怯まない。リーチを正面から受け流し、見事に1300オールのツモアガリ。トップ目・伊勢の背中を捕らえるための、まずは挨拶代わりの一撃となった。
東1局1本場:伊勢の反撃
連荘を狙う神埜の配牌は
ドラ
しかし、ここでトータルトップの伊勢が動く。13巡目、伊勢が以下の形でリーチを敢行。
ドラ
待ちは–
。神埜の親を流し、リードを守り抜くという強い意志を感じさせる。力強く引き寄せたのは
。700-1300(+300)のアガリ。
東2局0本場:戦慄の一発放銃
上山の4巡目、ドラのを2枚、さらに
を対子で抱えた勝負手が舞い込む。逆転を期す上山にとって、ここは是が非でも加点したい場面。だが、暗雲はトップ目・伊勢から漂う。
11巡目、伊勢が–
–
待ちでリーチを宣言。この時、上山の手はドラを暗刻にした勝負のイーシャンテン。一歩も引けない局面で放った
が、最悪のタイミングで伊勢の「一発」に捕まる。8000点の横移動。伊勢のアガリは、上山にとってあまりにも残酷な、そして伊勢にとっては優勝を盤石にする大きなリードとなった。
東3局0本場:神埜の勝負強さ
水崎が6巡目に
ドラ
という好形を維持するが、神埜の踏み込みがそれを上回る。4巡目、ドラのをポン。場に強烈なプレッシャーをかける。8巡目、水崎がリーチで対抗するも、神埜は一歩も引かない。自ら
をツモりあげ、發・ドラ3の2000-4000。執念の満貫ツモである。
東4局0本場:上山の追撃リーチ
点差を離された上山だったが、4巡目にを切りリーチを宣言。
ドラ
この勝負手を、8巡目に水崎が放ったで射止める。リーチ・西・裏1の5200点。追い込まれてもなお牙を剥く、上山の意地が垣間見えた。
南1局0本場:優勝をたぐり寄せる親跳満
後半戦、南1局。卓上の空気はさらに重くなる。トータル首位の伊勢が点差を何度も確認する様子は、優勝への重圧を感じさせていた。
親番の神埜の配牌は
ドラ
8巡目、神埜は以下の形で魂のリーチを放つ。
ドラ
ここで、決定打となるを引き寄せた。6000オールのツモアガリ。この瞬間、卓上のスコアボードは激変し、優勝の二文字が神埜の視界に鮮明に映り始めた。
南1局1本場:上山の高打点仕掛け
上山は配牌
ドラ
から1巡目にをポン。なりふり構わぬ猛追を見せる。伊勢もタンヤオ仕掛けで応戦し、火花が散る展開となったが、最後は上山が
をロン。ダブ南・赤2・ドラ1の8000は8300点を伊勢から直撃。伊勢のトータルポイントが削られ、条件戦はさらに複雑さを増していく。
南2局0本場:水崎の粘り
10巡目、水崎が以下の形で高めタンヤオのリーチ。
ドラ
上山も13巡目に、
ドラ
という勝負手でリーチを被せるが、その宣言牌が水崎への放銃となった。3900点のアガリ。水崎が粘りを見せ、局面はクライマックスへ。
南3局0本場:神埜、王手
2巡目時点の伊勢は
ドラ
と苦しい。
対する神埜は4巡目で、
ドラ
と、その充実ぶりは明らかだった。
9巡目、その神埜がリーチ。
ドラ
待ちは。これを力強くツモりあげ、裏ドラも乗り、2000-4000の加点。ついに伊勢をトータルポイントでも完全に抜き、王手をかけた。
南4局0本場:オーラス、栄光の瞬間
運命のオーラス。
神埜と伊勢のトータルポイント差は、わずか1.9ポイント――すなわち、ゲームスコアにしてわずか1900点まくっていたのだ。
伊勢は3巡目、
ドラ
という苦しい形。
親の水崎は8巡目に神埜からをポンしてタンヤオトイトイ三暗刻へ向かう。伊勢も必死のチー・ポンで条件を満たしにいくが、その表情には焦燥が滲む。
しかし、神埜は冷静だった。平和のテンパイを入れると、上山から打ち出されたを捉える。「ロン」。
自らの手で、1900点の薄氷を踏むようなリードを守り抜き、優勝を決定づけた。
結び:対局後のコメントと表彰式
対局終了後、会場は拍手に包まれた。
「南1局の8000点放銃が、結果的に最後まで響いてしまった。本当に痛い一局でした」と肩を落とした伊勢。
水崎は「いつもは運営ですが、たくさん麻雀が打てて良かった」と微笑み、上山は「実力の差を感じて悔しいですが、楽しかったです」と語った。
なお、一般参加の上山には松本プロの著書や奥村プロのバッグが贈呈され、会場に和やかな空気が流れた。
そして、栄冠を掴んだ神埜は以下のようにコメントした。
「4度目の正直です。今日は美味い酒が飲めそうです」
実は今日、担当記者の私は大塚会場から柳本店に来るまでのタクシーが一緒だった。車内では4回戦終了時点では、33ptしかないので、もう今日は無理なんじゃないかと話していました。でも、終わってみれば5回戦6回戦決勝戦で238.6ポイント勝っての優勝!
33ptの状況で、崖っぷちから這い上がった不屈の精神。チャンピオンロード決勝4度目の挑戦でついに「女流雀王シリーズ」の頂点に立った神埜。彼の勝負強さに、心からの敬意を表したい。い。神埜プロ、本当におめでとう!






