第22期女流雀王決定戦観戦記3日目/最終日(15回戦)

第22期女流雀王決定戦観戦記
3日目/最終日 15回戦

【担当記者:五十嵐毅】

座順 水崎-奥村-澄川-逢川

逢川が首位で最終戦を迎えた。他3者の優勝条件は澄川は33900差のトップラス、水崎は52300差のトップラスである。奥村は10万点以上の差を付けてのトップラスなので、4人分の点棒を全部かき集めてみないと条件が見えてこない。

東1局、奥村がこの手に麻雀牌:九索をツモる。

テンパイだが、一瞬も止まることなくツモ切り。次巡、一発ツモだった麻雀牌:八索ツモだが、これは織り込み済み。麻雀牌:二筒を切ってフリテンリーチ。2巡後に麻雀牌:三索をツモって満貫。

逢川にしてみれば、奥村が高い手をアガるのは歓迎だ。澄川、水崎にとって壁になるからだ。
東2局は澄川が3900をアガって連荘(放銃・水崎)。
その1本場、逢川は麻雀牌:中ポンで積極的に局を進めに行く。結果は、澄川ピンフ、水崎ピンフ三色、奥村ホンイツ七対子、それぞれがイーシャンテンのところでツモアガリ。なんというか、仕掛けと速度がピッタリ合っている。
東3局はピンフをテンパイ。もちろんヤミテン。これを奥村から。
東4局、自身の親は、3者が攻める中、余裕の1人ノーテンで流す。逢川、東場は完璧なゲーム回し。他3者は「もう一周しかない」という気分になっただろう。

南1局、澄川がピンズのチンイツ、親の水崎がタンヤオで仕掛ける。水崎はソーズが非常に広い受けのイーシャンテンだったが、終盤まったく引けずに親が流れる。上家の逢川、七対子のイーシャンテンになっても手に溺れず、水崎に喰われないように麻雀牌:九索のトイツ落とししたのが印象的。
2本場で流れてきた澄川の親は5本場まで粘るも決定打は出ないまま。ここでまだ親が残っている奥村がこのテンパイ。ドラのダブ麻雀牌:南が鳴ければハネ満まであるが、現状麻雀牌:発ポンドラ2の3900。

ここに逢川が麻雀牌:八筒で放銃。差し込んだわけではないが、澄川からリーチが来る前に終わらすのは望むところだった。
南3局の奥村、テンパイ連荘を続けた3本場、麻雀牌:二筒麻雀牌:五筒でリーチ。

ここにホンイツ七対子をテンパイした澄川が麻雀牌:三萬待ちで追いかけ、見事にツモりあげる。

この大物手で、オーラスの澄川の優勝条件が一気に現実的になった。
奥村40900 澄川39000 水崎10400 逢川9700
33900差のトップラスにするには、逢川からの2600、奥村からの5200、または800・1600以上のツモ。

この状況下でテンパイを入れたのは親の逢川だった。
8巡目、麻雀牌:東なら出アガリがきくメンゼンテンパイ。ドラは麻雀牌:六萬で手にはなく、出て2000点である。

これはアガるべきかどうか難しい。わずか2000点の加点では澄川の条件がさほど難しくならないままにもう一局やることになる。
対局後に逢川はこう答えている。
「アガるつもりでした。でも、捨て牌3段目(13巡目)になってからはアガらないほうがいいなと思っていました」
逢川は15巡目に1枚切れの麻雀牌:発を引いたところで「これまで」としてオリた。
一方の澄川はその15巡目にこの形。

残る2巡でリャンシャンテンでは「勝負あった」である。
結局、全員ノーテンで終了した。

逢川夢恵、これで4回目の女流雀王。それだけでなく、決定戦6年連続出場でかつ7年連続を確定させた。もちろん誰も成し得ていない記録である。
印象的だったのは、逢川の攻撃を受けて水崎が何度か見せた苦笑いである。
「そうだよね~、逢川さん、ここははずさず来るよね」――強い逢川と打てている喜び、そんなふうに受け取れる苦笑であった。
奥村は、「誰をマークするってわけじゃないんだけど、逢川さんにリードされたらもう難しくなっちゃうから、それだけは気を付けていた。だから初日はよかったんだけどねぇ」(1月7日「リモトーーク」での発言)
逢川の強さ、隙の無さはこの二人だけでなく、協会女流誰もが認めるところである。
もはや協会女流No.1であることに異論はないだろう。