第22期女流雀王決定戦観戦記2日目(6回戦)

第22期女流雀王決定戦観戦記
2日目 6回戦

【担当記者:中島由矩】

(逢川-りんの-水崎-澄川)抜け番:奥村

2022年10月22日に行われた、第21期雀王決定戦12回戦のオーラスを思い出す。筆者はその時の観戦記を担当していたのだが、あまりの劇的なアガリに、それまで考えていた構成を変え、他の局をまったく書かず、南4局のみを切り取って描いた。

東家・松本吉弘11600
南家・浅井堂岐31700
西家・仲林圭38300
北家・渋川難波18400

麻雀牌:二萬
麻雀牌:三萬
麻雀牌:七萬
麻雀牌:九萬
麻雀牌:一筒
麻雀牌:一筒
麻雀牌:一索
麻雀牌:二索
麻雀牌:三索
麻雀牌:七索
麻雀牌:八索
麻雀牌:九索
麻雀牌:八萬

ドラ

麻雀牌:一筒

トップ目まで19900差の渋川が、リーチ・一発・ツモ・ジュンチャン・ドラドラの4000/8000は4100/8100をツモって逆転勝利を収めた試合だ。大きな点差が一撃でひっくり返る、麻雀の醍醐味を味わった。

ところで、麻雀というのは、野球やサッカーなどのスポーツとは異なり、お互い激しくにらみ合ったり、汗が飛び散ったり、ガッツポーズをしたりするシーンがほとんど見られない。プレイヤーが一生懸命頑張ったところや、勇気を出して戦った場面が、視聴者に伝わりづらいという側面がある。

じゃあ各プレイヤーは常に平常心で粛々と摸打を繰り返しているのかというと、決してそうではなく、心中は燃えていたり、泣いていたり、あせっていたり、イライラしていたり、様々である。

この6回戦では、現女流雀王の水崎ともみと、第17・18・20期女流雀王の逢川恵夢が、激しくぶつかったシーンを見ていこう。

「これは逢川、気合い入ってるな?」

と、筆者が最初に気づいたのは、東3局0本場のことだった。

トップ目の親番・水崎が、手広いイーシャンテンから、8巡目に先制リーチをかける。待ちは麻雀牌:一索麻雀牌:四索だ。

すでに麻雀牌:白を仕掛けている逢川が、リーチの一発目に持ってきたのはドラの麻雀牌:六筒。自身がリャンメンテンパイとはいえ、親リーチの一発目に対し、さすがにここは迂回するかと思われた。麻雀牌:二索は現物、麻雀牌:三索は水崎の捨て牌にある麻雀牌:六索のスジ牌だ。また、麻雀牌:五筒麻雀牌:六筒麻雀牌:六筒麻雀牌:七筒は、チーも含めてまたテンパイ復活がしやすい形でもある。

しかし、逢川はこのドラを勝負した。打ち抜いた、と表現してもいいかもしれない。ここに逢川の内に秘めたファイティングポーズが見えた。

しかし結果は、水崎のツモアガリ。

強く勝負したからといって、必ずしもそれが結実するわけではない。麻雀の非情な一面が、そこにはあった。裏ドラが1枚乗って、2000オール。

逢川がわずかに水崎を逆転して迎えた南3局1本場も、逢川vs水崎となる。

親の水崎は、自風の麻雀牌:東と役牌の麻雀牌:中がトイツで、ピンズに寄せて進行。ここは大きなアガリをつかみ、逢川を逆転するだけでなく、一気に突き放したい。

仕掛けて12000になるルートを探る。1枚目の麻雀牌:東からポン発進。

一方、西家の逢川は、5巡目にテンパイを果たす。

三色の可能性が残る方の麻雀牌:四索を引き入れると、リーチを宣言。仮に安めツモでも700/1300は親の水崎と4000点差をつけられるので、オーラスを有利に戦うことができる。高めツモは2000/4000からなので、言わずもがなだ。

巡目が浅く、点差はわずかに300点、自身は12000のテンパイを取ることができ、なによりこの2日目の趨勢を占う大事な6回戦だ。水崎は麻雀牌:中をポンしてテンパイを取ると、無スジの麻雀牌:一萬を切り飛ばして徹底抗戦の構え。麻雀牌:六筒麻雀牌:九筒待ちで勝負に出る。両者、ここが天王山と見た。

麻雀牌:一筒麻雀牌:四筒の逢川と麻雀牌:六筒麻雀牌:九筒の水崎。このめくり合いは水崎が制する。麻雀牌:六筒ツモで4000は4100オール。逢川は無念、大勢決したかと思われたが…

トップ目・水崎との点差は15100で、跳満ツモでも届かない。しかし、開けた手がこれならば…。

2着を受け入れるか、はたまたトップを獲りにいくか。分岐は2回あった。まず1回目は、麻雀牌:六萬麻雀牌:七萬の両面ターツにツモ麻雀牌:九萬で打麻雀牌:六萬としたところ。ツモ麻雀牌:五萬やピンフになる未来を犠牲にし、ジュンチャンやリャンペーコーなどの手役に寄せている。

そしてもう1回は、ツモ麻雀牌:四筒でテンパイを取らなかったところ。もし打麻雀牌:三筒としていれば

麻雀牌:七萬
麻雀牌:九萬
麻雀牌:一筒
麻雀牌:一筒
麻雀牌:二筒
麻雀牌:三筒
麻雀牌:四筒
麻雀牌:一索
麻雀牌:一索
麻雀牌:二索
麻雀牌:二索
麻雀牌:三索
麻雀牌:三索

ドラ

麻雀牌:北

で、役ありテンパイを組むこともできた。しかし、

逢川はリスクを取っていったんテンパイを外し、ついに逆転の再テンパイを入れる。待望のツモ麻雀牌:九萬。ジュンチャン・リャンペーコーはダマでも水崎から直撃なら条件を満たすし、

リーチしてツモれば4000/8000で、これまた逆転となる。逢川の河には5巡目麻雀牌:五筒があって直撃も期待できるし、ダマでツモった場合の3000/6000がもったいないということもあり、逢川はリーチを宣言。水崎の喉元に剣先を突きつける。かかってこい、と。決着をつけてやる、と。

水崎も当たり牌の麻雀牌:二筒をしまい込み、懸命に現物を並べるものの、最後は山に2枚残っていた麻雀牌:二筒を逢川がツモって決着。

オーラスの倍ツモでまくったプレイヤーと、

オーラスの倍ツモでまくられたプレイヤー。

どうしても画像が穏やかになってしまうので、事前インタビューのそれを使おう。

オーラス倍ツモでトップを獲得した逢川恵夢と、

オーラス倍ツモされて2着になったものの、トータル首位の座はキープしながら、2期連続の女流雀王を目指す水崎ともみ。

2人の戦いを、この先何回も見られるのが嬉しい。

6回戦トップは逢川。倍満の16000は+16pt、2着から1着に上がった順位点の差分が+40pt、都合+56ptのクリスマスプレゼントを手に、意気揚々と7回戦に向かう。

2着になった水崎は、しかし要所要所で手が入り、感触は悪くなかったことだろう。10回戦終了時の5位者は、決定戦3日目に進めないというレギュレーションになっているが、あまり気にする必要はなさそうだ。

3着はりんの。5人の中では1番入会期が遅く、今期初の決定戦に進出してきたが、先輩たちへの憧れは捨てて、まず次戦2日目の1トップを獲りにいきたい。

4着は澄川。めくり合いに負け、展開に恵まれず、辛い時間が続く。休憩時間にリフレッシュし、7回戦からの3連勝を目指したい。なんと言っても、澄川は今期女流Aリーグを1位で通過してきたのだ。すみどんはまだやれるどん。