第20期女流雀王決定戦観戦記 1日目(4回戦)
第20期女流雀王決定戦観戦記
1日目 4回戦
【担当記者:武中進】
3回戦が終わった時点で首位は奥村知美。
近年女流の第一線で戦う機会が多い逢川・中月・佐月に対して、彼女のことをあまりよく知らない人も多いかと思うので、まず彼女について少々掘り下げた話をしておきたい。
奥村は第一期に協会に入会、第二期女流雀王決定戦では手塚紗掬(現連盟)や田中智紗都を退けて初の栄冠を獲得。
のちの第三期決定戦では崎見百合との壮絶な戦いに敗れるが、その後も女流名人(最高位戦主催)の獲得や、プロクイーン(連盟主催)の決勝進出2回と協会黎明期を代表する女流選手の一人だ。
だが一方で過去の協会の歴史を振り返ってみると、これほどの実績がある彼女なのに「協会最強の女流」として名をあげられる事はほとんど無かった気がする。
原因は当時の協会の状況によるところが大きい。
まず当時、協会には崎見百合や初音舞というAリーグで活躍する女流がおり、女流雀王の実績だけでそれらの選手を差し置いて女流トップの評価を受けるのは難しい状況にあった。
それ以上に第三期で崎見百合が女流雀王を奪取、さらにプロクイーンを獲得して改めて協会最強としての地位を築き上げた事、そして眞崎雪菜の四・五期の連覇、さらにその後の朝倉ゆかり・大崎初音らの登場、奥村の功績はNo1と称されるインパクトを世間に与えるタイミングを逸する事になる。
彼女のような選手はけして珍しい例ではない。競技選手の評価や知名度はいろいろな要素によって決まるものであり、奥村はその点に恵まれなかった選手の一人といえるだろう。
だがそんな彼女が今季なんと17年ぶりの決定戦進出。
崎見や眞崎や朝倉といった歴代の女王たちが女流Aから陥落する中、彼女自身も一時はAからの陥落を味わいつつも黙々と競技を続けてこのチャンスをつかみ取った。
無論目指すは18年ぶりの戴冠、現時点ではそれに向けて上々の立ち上がりとなっている。
さて4回戦の座順は奥村・逢川・佐月・中月。
まず抜け出したのは現状2位で奥村を追いかける逢川。
東3局に以下のイーシャンテン。
ドラ
ここからをチーして染め手に移行する。
ドラ
そして中月のリーチを受けながらも中盤に聴牌。
ドラ
このカンは山にはなかったが手替わりは十分ある形。
そして終盤に分岐点が訪れる。
かを切れば多面待ち聴牌。ここまでの逢川の押しっぷりを考えるとどちらかを勝負すると予想していた。
しかし意外にも彼女の選択は切りでのカン聴牌維持。リーチしている中月の現物の筋で安全策をとった形だ。
そして次巡にを引いたため、再度切り、安全な進行のまま3面待ちに手替わり
ドラ
結果論ではあるが前巡にを勝負していればここで2000/4000の自摸和了、それを逃した形となった。
ところがこの進行により逢川の河に落とされたのトイツ、そして撤退の気配。
これにより親番だった佐月が自身聴牌の可能性を残すために中月の現物を切る結果となった。
慎重な進行の結果、佐月からロン牌を引きずり出しさらにはイッツーをプラスした12000。
既述の通りこの手を和了する道筋は他にもあったが、跳満で和了する道筋は逢川のこのルートのみだったと思われる。
思えばこの数年、女流雀王決定戦は逢川を中心に展開されてきた。
4年連続の決定戦進出、今や協会を代表する選手の一人とまで目されている身として「時代を逆行させない」という強い思いがある、、、、のかもしれない。
一方でそんな逢川と同じく近年の女流をリードしてきた佐月。
だが今日はここまで2ラス。かなり辛い展開が多くこの4回戦も厳しい立ち上がりで受難は続く。
、、、、と思っていたのだが、麻雀というのは何が起きるかわからない。南場からこの半荘は完全なる佐月の独壇場になる。
まず南1局、配牌自体はいたって平凡だったが自摸に恵まれ一発自摸・表2・裏2の3000,6000を和了、東場の失点を取り返す。
南2局の逢川の親番も速攻で流し、迎えた自身の親番南3局、ここからが圧巻だった。
0本場の聴牌料、
1本場の1000は1100オール、
2本場は2000は2600をリーチしている奥村より、
3本場は2000は2900を中月より、
コツコツと点棒を積み上げ、微差ながらトップ目にたった4本場、電光石火の2巡目リーチ、一発自摸の6000オール。
この4回戦東場までの苦しい展開が嘘のような怒涛のラッシュでこの半荘のトップを決定づけた。
この後ラス目だった奥村がオーラスに中月との競り合いに勝って3着浮上に成功。
佐月、逢川、奥村、中月の着順で4回戦は終了した。
中月が一人マイナス、奥村のオーラスの逆転により他3人の歴代女流雀王がほぼ横並びのダンゴ状態となった。
初日もいよいよあと1半荘、果たして首位で終えるのはだれか。
奥村が時計の針を巻き戻すのか、
佐月もしくは逢川が時代のトップとして3回目の戴冠を果たすのか、
中月が新しい時代を作るのか、
熱い戦いが続く。
奥村が時計の針を巻き戻すのか、
佐月もしくは逢川が時代のトップとして3回目の戴冠を果たすのか、
中月が新しい時代を作るのか、
熱い戦いが続く。