第20期女流雀王決定戦観戦記 1日目(2回戦)
第20期女流雀王決定戦観戦記
1日目 2回戦
【担当記者・中島由矩】
決定戦には決定戦特有の戦い方があるという。
普段なら押さない牌を押す「決定戦バランス」や、自分のトップが難しい時にトップ者を選ぶ「着順操作」などだ。
1回戦を2着でまとめた中月だが、苦しくなった2回戦の最終局で見せた意地のアガリとそこに行きつくまでの過程を見ていこう。
東2局、まず逢川に手が入る。
ドラ
河も大人しく、手なりで進めているような印象を与えそうである。
一方、親番佐月もを仕掛けてテンパイ、打点こそ安いものの連荘を狙う。
中月の11巡目。
ドラ
ここにツモで打、いわゆるトリダマ。
次巡ツモで567の三色に仕上げる。
奥村も黙ってはいない。
3者にはやや遅れを取ったものの、中月から立直が入った直後に追いつく。
打でドラ2枚内蔵の追いかけ立直。
試合前に「決勝の麻雀は好き」「視聴者のみなさんに最後まで面白い対局を見せたい」と語っていたのを思い出させてくれる。
中月、奥村の立直を受けた佐月。
一発目に持ってきた無筋のを人差し指と中指の2本でポンポンと軽く叩く。
2人の立直に対してはっきり通る現物はなく、こちらは三面張。
佐月の選択はツモ切り。
打点はないものの、腹は括れている。これには解説席も思わずどよめく。
2軒の当たり牌であるをつかんだ逢川は回り、佐月は最後まで押した。押し切った。
流局間際、中月がをつかんで佐月に1500を献上。
ロン ドラ ドラ
南3局、佐月が親の中月から切られたで自風のをポン。ファイティングポーズを取る。
そして4巡目に選択。
ツモ ドラ
ツモで打。
の受けを拒否し、一気通貫をつけた嵌の8000を狙う。
佐月の打点に対するこだわりが存分に見られた瞬間だったが、テンパイできないまま巡目だけが過ぎていく。
一方親の中月、ドラドラの配牌から7巡目にから仕掛けテンパイを入れる。
ドラ
ここで佐月に再び分岐点。
ツモ ドラ
ここでも佐月は打、一気通貫をつけての8000に執念を見せる。
同巡、中月に嬉しい変化が訪れる。
ツモ ドラ
ドラを引いて打点は5800から一気に12000へ。
河にと並んでいるのが気がかりなものの、ホンイツへの渡りも見える。
佐月が欲するを打って単騎に。
さらに場に1枚切れのを引いてきて待ち変えし18000のテンパイへ。
手牌がまるで生き物のように成長していく。
ドラ
佐月はツモで中月の現物であるを打つ。
佐月は局後、「中月さんの手出しを見て、ならあっても5800だけど、で打つと12000の可能性があるから渋々を選んだ」と言っていた。
鋭い読みでギリギリまで踏み込む。
そして14巡目、待望の嵌をチーして単騎のテンパイ。
中月の現物、そして4巡目に先切りしていたがここにきて活きたのである。
「オーラスを迎えたときトップ目でいることがとても大切だ」というのは幼少期からの英才教育だったそうだ。
2つの字牌はどちらも1枚切れで、なら佐月に8000、なら中月に18000だ。
をつかんだのは中月、これをツモ切り佐月へ8000を放銃。
8000点を失ったこともだが、18000のアガりを逃したことが何より痛い。
南4局を迎え以下の点棒状況。
東家・逢川 37200
南家・奥村 35200
西家・中月 △8000
北家・佐月 35600
逢川の立ち回りは難しい。
2着目佐月、3着目奥村どちらから立直と言われても、中月に高い手をツモられてもほぼ着落ちとなる薄氷のトップ目だ。
もちろん流局後伏せることもできない。
着アップが望めない中月、15巡目にテンパイ。
ツモ
四暗刻にこそならなかったが打で立直。
1回戦トップの逢川をトップ目から引きずり下ろし、返す刀で自身に加点したい。
そんな想いに牌が応えた。
渾身にして値千金の2000/4000。
このアガりで着順が入れ替わりトップは佐月に、逢川は奥村と同点2着になった。
中月は試合前のインタビューで、
「3年前の女流雀王決定戦で負けた逢川さんにリベンジしたかったので、逢川さんがいてくれて良かったと思います。」
と語っていた。
牌の巡り合わせが多少悪くても、下を向くつもりはさらさらないのだろう。
20回戦ある雀王決定戦とは異なり15回戦で決着がつく女流雀王戦は、1戦の重みがより大きい。
トップ者を選び、自身も加点した中月の残り13戦に注目していきたい。