第21期雀王決定戦観戦記 3日目(11回戦)
第21期雀王決定戦観戦記
3日目 11回戦
【担当記者:庄司麗子】
11回戦(松本-浅井-渋川-仲林)
全20半荘で勝者を決める決定戦も11回戦を迎えた。
仲林だけマイナス100ポイント以上、渋川・松本・浅井が僅差のプラスで迎えたこの折り返し地点。
一局一局の勝ちと負けで誰かが笑い、誰かが泣く。
その繰り返しが絶え間なく続けられる戦いの中で、ここだという勝負局を自らの手で導き、自らの手で掴み取る。
⦅東1局1本場⦆ドラ
浅井の先制リーチを受けて松本の手牌。
リーチの一発目、浅井の現物はしかない。
ソーズがやや安い場況で親でタンヤオ・ドラ1のテンパイ。
長考の末、松本はドラの切りリーチ。
ツモって4000オール、一発でドラを勝負してでも行くんだ!という決定戦ならではの選択だったのではないだろうか。
結果は二人テンパイの流局。
⦅東1局3本場⦆ドラ
先制リーチは仲林、リーチ平和で待ちは–。
続けて親の松本もリーチ、待ちは–。
ここへ割って入ってきた渋川もリーチ、タンヤオ平和で待ちは––。
この勝負局を制したのは渋川、一発でをツモって2000/4000の加点。
決定戦らしいリーチ合戦だったように思う。
⦅東3局⦆ドラ
好配牌をもらった親の渋川だったが、浅井が先制リーチ。
一発でツモあがり2000/4000を加点。トップ目の渋川に並ぶ。
⦅東4局⦆ドラ
仕掛けた渋川が700/1300を加点。
何かキッカケを掴みたかった仲林の親があっさり終わってしまう。
道中、仲林の河にはが並び、からを切った直後にツモといったように、ことごとくツモに裏切られるシーンが見られた。
競技者の一人として感情移入せざるを得ない。
⦅南1局⦆ドラ
そんな仲林にも一筋の光明が。
ここは失敗できない、5巡目の一向聴である。
長考の末、ドラ表示牌の切りを選択。
早々にテンパイを入れた渋川が手替わりを2巡待って平和ドラ1で先制リーチ、待ちは–。
するとこちらも選択がはまった仲林が同巡に–待ちで追いかける。
奇しくも渋川・仲林の待ちは共に山に1枚ずつ。
そんな細い糸をたぐり寄せるリーチ対決は、仲林が高目をツモ。
裏ドラものせて3000/6000の加点。
前局を見た直後でますます気持ちが仲林に寄ってしまうが本人の表情は至って冷静。
心中はどうだっただろうか。
一安心か、「まだまだこんなもんじゃない」なのか。
数多くの決定戦対局を見てきたが、ポイントが伸ばせずに奮闘している選手が、牌の巡り合わせに泣かされたりすると悲劇のヒーロー・ヒロイン役に。
最終日、ポイントがずば抜けてリードしている1人の選手に包囲網が張られてヒール役に。
そんな人物相関図を想像して観戦してしまう。
それは過去に何人もの選手達が逆境を切り開いてポイント差をひっくり返す主人公を演じていたり、最終局に役満を放銃しても優勝できるくらいの、圧倒的なポイントを稼いで優勝したラスボス達を見てきたから。
11回戦スタート時のポイント状況では、どうしてもマイナスの仲林に注目してしまう。
そこへ目下ラスボス候補筆頭の浅井が立ちはだかる。
⦅南2局⦆ドラ
先制リーチは渋川、タンヤオドラ1の嵌。
だが山には1枚、仲林に暗刻で持たれている。
終盤に親の浅井が追いつきリーチ、平和で–待ち。
も残り山1枚になったところでラス牌のでアガりきったのは、
繰り返しお伝えする、は仲林が暗刻。
それでも掴み取って勝ち負けを決めるのが決定戦。
ここは勝負局を決めた浅井が4000オールを加点し、ひとり突き抜ける。
仲林の心中を察すると、やはり切ない。
⦅南2局1本場⦆ドラ
南家の渋川がソーズのホンイツ、をポンして––でテンパイ一番のり。
二番手は親の浅井、が河に4枚出ている平和のみ–待ちでダマテンを選択。
三番手は仲林、ドラを暗刻にした–待ちでリーチ。
松本が選択したが仲林の一発、高目のあがりになり12000の加点。
ロン ドラ 裏ドラ
トップ目の浅井の親を終わらせ点差もグッと近づいた。
⦅南3局⦆ドラ
オーラスへ向けて、少しでも自分が有利な状況で迎えるための南3局ラス前である。
子方三者の思惑が交錯する中、松本が満を持してタンヤオ平和高目一盃口のリーチ、待ちは–。
なんとしてでも素点は回復、あわよくば親の渋川の点棒を少しでも減らしてオーラスを迎えたい。
そこへ一巡を過ぎて浅井もテンパイ。
松本にロンと言われかねない暗刻のを宣言牌にリーチを選択、平和ドラ1で待ちは–。
点差が開いている親のない松本のリーチ、安いわけがない。
浅井は現状3800点差トップ目ではあるが、リスクを背負って勝負する価値ありと判断したのだろう。
だが軍配は松本、安目ではあるがを浅井からあがる。
ロン ドラ 裏ドラ
この一局で決めたかった浅井だが、仲林が1100点差のトップ目でオーラスを迎えることになった。
⦅南4局⦆ドラ
南家の松本がダブをポン、ドラ色のピンズで染める進行。
親の仲林はあがり易さを、北家の渋川はドラがないので手役を意識した進行。
浅井は配牌もよくドラ面子も完成して順調に平和テンパイ、待ちは–で条件クリア。
すぐさま松本のテンパイ打牌となったを捕らえた。
11回戦は浅井のトップで終了した。
実力者がひしめくA1リーグで昇級した1年目にして決定戦を戦うというのは極めて稀である。
さらにその中で、一番のりで3桁プラスになったのが浅井である。
チャレンジャーとして決定戦を戦い、大舞台で活躍できる実力があること証明してみせた。
今後は、張られた包囲網を掻い潜っていけるかが課題となるだろう。
松本、渋川もまだ慌てる段階ではないし、仲林の追い上げにも注目したい。