第21期雀王決定戦観戦記 2日目(6回戦)

日本プロ麻雀協会 第21期雀王決定戦観戦記 2日目

第21期雀王決定戦観戦記
2日目 6回戦

【担当記者:中島由矩】

6回戦(仲林-松本-浅井-渋川)

マクドナルドのライバル店は?

と問われると、たいていの人はモスバーガーやロッテリアなどのハンバーガーチェーンを頭に思い浮かべるかもしれない。
しかし、マクドナルドにとっては、吉野家やスシローなど、ハンバーガー以外も含めた食事を提供する全ての店が「お腹をすかせているお客さんを取り合うライバル」と考えることができる。

いきなり何の話かというと、この観戦記に新しくライバルが出現しているのをご存じだろうか。
見るだけで強くなる【第21期雀王決定戦ダイジェスト】というタイトルの動画だ。
筆者は書くのも読むのも好きなので、今までは観戦記を読んで麻雀を味わっていたが、今はモバイルバッテリーやワイヤレスのイヤフォンなども普及してきていて、街中で気軽に動画を楽しめる時代になっている。
フルで視聴すると1時間以上かかる1半荘をわずか9分弱にまとめてあるのは、この観戦記にとって脅威になる。

見るだけで強くなる【第21期雀王決定戦ダイジェスト】4回戦

もちろん観戦記も合わせて読んでいただけたら幸いだし、観戦記やダイジェストを入り口として、ゆくゆくはリアルタイムで熱い闘牌をご覧いただきたいとも思う。

第21期雀王決定戦は、初日を終えて首位の浅井(+87.9pt)から4位の松本(△67.9pt)まで約150ptほどの差となっている。
初日では4者それぞれがトップを取っており、「団子状態」というほど接戦ではないものの「縦長な展開」とも言い難い。
誰かをマークするというよりは、各者自分のトップを目指した麻雀になるだろう。

この6回戦では、初日に苦しい思いをした松本・渋川が躍動した。

まずは松本。東1局0本場

ピンズ多めの配牌をもらうと、2巡目にを重ねて東・白・ホンイツの8000が見える。
事前のインタビューで「雀王戴冠は協会選手600人の目標」と語った松本だが、9年かかってその600人の中の4人というところまで来た。

ソーズに続いてドラ受けターツも外すと、ポンから発進。

次巡、首尾よくペンを引き入れテンパイ。

ともに場に1枚切れているが、松本の選択は打
自風のは他家にとってオタ風で、より山にいる可能性が高いと見た。

ポン ツモ ドラ

このをツモって2000/4000。
2日目巻き返しへの好スタートを切った。

続く東2局は、仲林のダマ5200テンパイで幕を開ける。
ドラのを打つとのノベタンにも取れるが、仲林は打点を追ってドラタンキに構えた。

実はこのドラの、仲林にテンパイが入った瞬間に浅井が暗刻にしており、仲林にアガリ目はなかったものの、

そこに渋川からリーチが飛んできて状況は一変。
渋川はリャンメンリャンメンのイ―シャンテンから、ツモ待ちになっている。

を引き入れて、仲林の選択は打リーチ。
が渋川のリーチに当たる可能性はもとより、自身の手にピンフがついたことや待ちがタンキからリャンメンに変わったこともリーチを後押しした。
ドラのは前述の通り浅井が暗刻にしており、仲林のピントは合っていたのだが、

ここは渋川がツモアガリ。
裏ドラを1枚乗せて、リーチ・ツモ・タンヤオ・ピンフ・裏ドラ1の2000/4000となり、松本をかわしてトップ目に立つ。

この6回戦、アガリには結びつかなかったものの、随所で見せた渋川のチートイツは素晴らしかった。
東3局0本場では、

ドラのタンキに受け、息をひそめて他家の動向を探る。
ちなみにこの後松本からリーチを受けると、渋川は河にを並べ、強く戦うことはなかった。

さらに続く東4局1本場では、

4巡目にドラのを重ねると、マンズのやピンズのを歯牙にもかけず打としてチートイツ1本に照準を合わせ、

待ち牌として優秀なの3枚の中から見事にを重ねてテンパイ。
しかしここは松本が広いイ―シャンテンから8巡目にテンパイを入れると即リーチと攻め、

ドラを切って追いかけリーチを打ってきた浅井からを打ち取る。
裏ドラ1枚を乗せてリーチ・ピンフ・裏ドラ1の3900を加点。

1日目をプラスで終えた浅井・仲林に、つけ入るスキを与えなかった。

南場に入ってからは渋川がアガリを連発する。

ドラ

上の手から渋川はカンに声をかけると、打とし、ドラを固定。123の三色ではなく渋川バックに構える。

このが、渋川の下家である仲林に流れ、仲林のツモ切りをとらえてドラドラは3900。

さらに続く南2局でも渋川は、456の三色にこそならなかったものの、を引いてリーチ。

これがを重ねてテンパイした仲林の宣言牌を捉えて、リーチ・一発・タンヤオ・裏ドラ1で8000。

南4局を迎えて、点棒状況は以下の通り。

東家・渋川41700
南家・仲林6300
西家・松本37200
北家・浅井14800

2着目松本を4000点以上離し、親の渋川は流局でもトップで終われる。
しかし、有効牌が次々と流れ込んでくるなら大きく育てたい。

ホンイツ・チートイツのイ―シャンテンだった渋川がツモってきた牌は暗刻となる
これで、メンツ手とトイツ手を天秤にかけられるようになった。

さらには、2着目松本からのリーチさえも追い風に変える。
松本の河にある牌を打った浅井のをチー。
松本の一発を消しつつ、現物のを打って、のシャンポンテンパイ。

すぐに下家の仲林からをとらえ、東・ホンイツ・ドラドラの12000。
6回戦はここで勝負あった。

渋川がトップで、初日5半荘累積のマイナスをこの6回戦だけでプラスに戻した。
2着の松本としては、トップを取り損なった印象が強かったかもしれない。
3着の浅井は初日の貯金があり傷としては浅く、対照的に4着の仲林は一気にマイナスに転落。

ずっと椅子に座って行う麻雀だが、1日5回戦は体力勝負の側面もある。
7回戦以降も、4者の総合力がぶつかる様子をリアルタイムで追いかけよう。