第21期女流雀王決定戦観戦記3日目/最終日(12回戦)
第21期女流雀王決定戦観戦記
最終日 12回戦
【担当記者:中島由矩】
12回戦(澄川-水崎-逢川-佐月)
第99回箱根駅伝まで残り約1週間あまりとなった。
あの箱根駅伝を中継するテレビ局が放送の際に心がけていることは、
【先頭が交代する瞬間を視聴者に見せること】なのだという。
第21期女流雀王決定戦は11回戦を終えて、
■首位の逢川恵夢が+76.9pt
■2位の水崎ともみが+50.2pt
■3位の佐月麻理子が+40.8pt
となっており、逢川以外の2者がトップを取れば、それがすなわち首位交代の瞬間ということになる。
追う2人はもちろんのこと、首位の逢川や少し離れた4位の澄川も当然それは頭に入っており、今まで以上に各者のテーマがハッキリしてくるはずだ。
まずは東1局の水崎。
南家でスタートした水崎はメンツ手とトイツ手を天秤にかけながら自然な進行をしていくと、ツモでチートイツのテンパイ。
や場風の引きのメンホンを楽しみにを外していく選択肢も考えられたが、を切っていったんダマテンに構える。
この瞬間はやや中途半端にも見えたが、
そのを2枚切っている北家の佐月からリーチを受けた後、ドラのを引いてくる。
これならホンイツでなくとも十分。
水崎は当然のようにを切ってリーチをぶつける。
ここまでの2人の激しいファイトを象徴するかのような局になった。
水崎はこのドラタンキを見事ツモり上げて3000/6000のアガリ。
ここまで長期に渡って首位を堅持してきた逢川に追いつき、ついに追い抜いた。
一方競り負けとなった佐月はこれ以降様々な技を駆使して水崎を追う。
東3局、最初のテンパイは南家の佐月。
このテンパイを取ってダマに構えた。
ダマテンに構えたところは東1局の水崎と同じだが、役があってアガれた水崎とは異なり、今回の佐月の場合は出アガリができない。
佐月のねらいは、カンテンパイの3巡後に明らかになる。
佐月はアガリ牌であるツモを引き入れると、打でフリテンリーチを宣言。
300/500のアガリを拒否し、での三色の高打点を視野に入れる。
この時点で、は山に3枚眠っていた。
佐月としては悠々の一人旅と行きたかったところだが、そうはさせじと澄川が追いかけリーチ。
とのシャンポンながら、は2枚とも河に切れていてアガリに結びつく可能性は低い。
女流雀王戦Aリーグ4位、女流雀王決定戦2日目も中月とのデッドヒートを制してこの3日目に臨んでいる澄川。
大願成就の目前で敗れ去った中月のためにも、
あるいは女流雀王Aリーグで涙をのんだたくさんの仲間たちのためにも、
さらには第19期女流雀王決定戦で4位に終わってしまった過去の自分自身のためにも、
このまま何もなく終えることはできない。
2人の意地がぶつかりあった名局となったものの、ここは流局で両者痛み分け。
佐月はさらにアグレッシブに前に出ていく。
南2局では、急所のカンチーから発進。
残る10枚を全てソーズと字牌でそろえる。
チンイツまで伸びれば一気にトップ目の水崎と並ぶことができる。
ポン、最後はを引き入れてカンのテンパイを入れるが他家にうまく対応されて流局。
やや縦長な展開になってきた感のある南3局4本場、澄川がツモでテンパイ。
着アップ、さらにはトップまで見据えたリーチを放つ。
澄川はトイツであったが出るも2枚ともに声をかけず、リーチを主眼にドラ引きや三色を念頭に置いた手作りを進めた。
親番はないものの2着目の佐月までは2400差、トップ目の水崎までは16900差。
女流雀王戴冠を目指してトップを取るためには、ここから2度の満貫ツモをねらう必要がある。
その「まずは1度目」となるドラを一発ツモ。
できれば裏ドラが1枚乗るか、高めのの方がより嬉しかったがそれは高望みかもしれない。
とにもかくにも、こうして卓上に挑戦者3者が顔をそろえた。
まずは、暫定ではあるが今最も女流雀王に近い水崎ともみ。
12回戦では東1局にドラタンキのチートイツをツモアガリ、終始リードを保って終局を迎えた。
今年の9月に行われたプリンセスオブザイヤー2022決勝卓での惜敗も記憶に新しく、この女流雀王初戴冠には人一倍強い思い入れがあるにちがいない。
次に、今の「逢川・佐月時代」の立役者の1人である佐月麻理子。
東3局にツモアガリ拒否からのフリテンリーチ、南2局に2副露のチンイツと高打点でのトップ取りに執念を見せた。
水崎同様、プリンセスオブザイヤー2022の決勝卓でも戦ったし、2022年11月には第47期王位戦の決勝卓にもついた。
第19期女流雀王決定戦4位だったとき以来の決定戦となる澄川なゆ。
現在進行中のfuzzカップではベスト8に勝ちあがっており、このタイトルを手にして、自信を確信へと変えてステップアップしたい。
組織論において「肩書が人を成長させる」という考え方もある。
この12回戦の着アップを機に、女流雀王への階段を一気に駆け上がりたい。
最後に真打登場、現女流雀王の逢川恵夢。
自身のアガリには結びつかなかったものの、丁寧な打ち回しで放銃を回避し出番が来るのを虎視眈々と待つ。
12回戦では、親番維持のための終盤の粘り込みや、
着アップを目指した南4局の重厚な手組みには、女王の貫録を感じた。
逢川がいったん首位を明け渡したことで、この第21期女流雀王決定戦が面白くなったと書いたら、対局者に怒られてしまうだろうか。
最後は水崎が自らアガって、12回戦のトップを決めた。
12回戦を終えて、トータル首位に立ったのは水崎ともみ。
首位だった逢川は2位に後退し、3位佐月、4位澄川は変わらずとなった。
13回戦以降はトータルポイントを見据えた手組みや押し引きはもちろんのこと、初戴冠目前の水崎が普段通りの麻雀ができるか否か、大きなトップが必要になる澄川がどのあたりで折り合いをつけてくるか、その辺りにも注目して見ていきたい。