第21期女流雀王決定戦観戦記1日目(5回戦)

日本プロ麻雀協会 第21期女流雀王決定戦観戦記 1日目

第21期女流雀王決定戦観戦記
1日目 5回戦

【担当記者:武中進】

初日最終戦となる5回戦の開始前ポイント状況は以下の通り。
逢川 恵夢 +96.4
水崎 ともみ +46.0
澄川 なゆ ▲37.6
佐月 麻理子 ▲44.8
中月 裕子 ▲60.4

4回戦に逢川が本日2勝目を挙げてまず一歩抜けだした一方で、苦しんでいる佐月と中月。
2人ともこの最終戦でトップを取って気分よく初日を終わらせたい所だろう。

5回戦(逢川-中月-水崎-佐月)

東1局0本場は逢川が1300オールをツモる静かな立ち上がりとなったが、その後の1本場に大きく場が動く。

逢川の第一打をいきなり佐月がポン、その手牌が以下の通り。

無理なく一色手を狙える、それどころか字牌の一色手すらあり得るこの手牌。
結局佐月は直後にを重ね、さらにをポンして捨牌1段目にして3フーロテンパイ。

終局間際に3枚目のを引きツモアガリ。
役満とはならずも役牌×2・ホンイツ・ホンロートー・トイトイという長い呪文の4000/8000は4100/8100でまずは一歩抜け出す。

しかしこれを親被りした逢川も次局東2局にすぐにリカバリー。

この手からソーズの一色手を狙って2巡目にからポン。
ツモにも恵まれ終盤に待ち。

これに親番の中月がで8000を放銃。
トータル最下位の彼女がこの半荘も苦しい立ち上がり。

逢川は次の東3局も好ツモに恵まれ、6巡目で以下の形、
役牌アンコからさらに大きな打点も狙える手だった。

しかし9巡目に親の水崎がポンから仕掛けだすのを見るや、早々に両面をチーしてテンパイを入れる。

直後に水崎がこれに放銃、1000点で軽快に場を捌いた。

この場に対する一歩早い見切りと徹底する力は彼女の大きな武器の一つと言える。
この手をカンから仕掛ける打ち手は多くいるだろうが、打点の色気をみてソーズの両面はスルーする打ち手も多いだろう。
確かに自身の手にドラは無く打点上昇は今一つ期待できないし、ドラの所在が不明となると周りの打点もあがる可能性がある局面ではあるが、いざとなると打点の未練を断ち切れずチーの声が出せない打ち手も多いだろう。

だが逢川は親の仕掛けと佐月・中月の河と動向から一切迷うことなく方向性をしっかり決めて場を制した。

一方でこの半荘苦しかったのは中月。
南1局1本場でダブ南をポンして1000/2000は1100/2100をアガりラスを脱出するも、

次の南2局の親番で水崎のリーチに安牌が一切ない形から放銃。打点は2000点とはいえラスに再度押し戻される。

中月は結果としてこのままラスでこの半荘を終了することになる。
一方で水崎はこの後も勝負手のアガリはできなかったが、恵まれないながらもきっちり3着は確保。
トータルスコアからみても二人の明暗が分かれた最終戦だった。

さて一方で東1局の倍満以降首位を堅実に走り続けていた佐月だが、南3局1本場で大きな事件が起きる。

点数状況は以下の通り。
水崎 205
佐月 369
逢川 257
中月 159
(供託 1本)

佐月としてはここを1000点でもいいからアガれば盤石でオーラスを迎えられる。
無論それをさせじと親の水崎も積極的に動く。
2つ仕掛けての先制テンパイを入れる。

中月もラス脱出のために積極的に動き、高めマンガンのテンパイ。

そしてその直後に中月が切ったを佐月がポン。切りのマンズの3面待ちで場を流しに行く。
が、ここから切られたは上述の中月のアガリ牌。

ところがそこになんと逢川が和了を宣言して頭ハネ。
手はなんとまさかのチンイツ・一通で12000は12300。

確かに逢川にのチーは入っていたが、まだピンズも溢れていない状況ではテンパイまでは断定しにくい。
または親の水崎にはそこまで危険でも無く佐月の3面待ちでの捌きは自然な判断の一つだろう。
だが結果、逢川にとってデバサイのアガリでこの半荘の大勢は決した。
オーラスに佐月も1300オールで一矢を報いるが逢川のトップは捲るにいたらず、5回戦終了。

最高のスタートを切った現女流雀王の逢川。
内容的にも近年の彼女のイメージのままに早い見切りと徹底した進行で、安定した戦いを見せてくれた一日だった。

他の4人の挽回に期待しつつも今年からは10回戦での敗退が待っている。
逢川に対するマークをしつつも足切り回避を考えてのゲームメイク、昨年までと一味違う展開が待っているかもしれない。
いずれにしても勝負はまだ1/3が終わっただけの状況、ヤマ場はまだ先である。