第20期雀王決定戦観戦記 4日目/最終日(16回戦)
第20期雀王決定戦観戦記
最終日 16回戦
【担当記者:武中進】
まず最終日開始時のポイント状況は以下の通り。
さて、ここで参考データを提示したい。
直近6年の雀王決定戦優勝者の最終日開始時点での順位およびポイント状況である。
首位で迎えた選手の優勝確率は50%
200ポイント以上をまくった事例が2回
こうしてみると現在の渋川・仲林のポイント差なんてまだまだ勝負を決するには至らないとよくわかる。
実際にこの16回戦で仲林が渋川とのトップ・ラスを決めれば最低でも80P差が詰まりほぼ並びになるわけだ。
一方で矢島・小川はもはや後がない。
歴代雀王決定戦の最終日逆転レコードは第17期に金が成し遂げた278.6差。
つまりこの二人がこれから挑むのは雀王決定戦史上誰もなしえたことがない大逆転劇といえるわけだ。
ただし第7期では鈴木達也が最終日首位の小倉との300P以上の差を一時的とはいえひっくり返した事例もある(最終的には小倉が再逆転)。
勝負はまだわからない。
まず東場はポイント状況的に一番厳しい小川が懸命に攻める。
東1局の親番、安手ながらも連続和了。
2本場はテンパイ連荘と少しずつ点数を積み重ねていく。
3本場は仲林が和了して一時的にはトップを明け渡すが、東3局では以下の和了。
リーチのみの手だったはずが、アンカンからのリンシャンツモで満貫となり一歩抜けだした。
そして仲林、矢島の和了も出る中、トータルトップの渋川だけが後手を踏み続ける展開、
東場終了時点では以下の点棒状況。
小川・矢島にとってまあまあ注文通りの展開となっていた。
小川 38500
渋川 14200
仲林 24700
矢島 22600
しかし南1局、場が大きく違う動きをとりはじめる。
先手を取ったのは渋川、高め一通の聴牌でリーチ。
対するは矢島、同じく–待ちで追っかけ。
もしもここで渋川がをツモろうものならラスに押し込められていた彼が一気に2着まで浮上する。
逆に矢島がこれを引きあがれば下位2人の最終日大逆転の狼煙ともなりえる形だった。
ギャラリーもかたずをのんで見守る中、ツモ和了を宣言したのは渋川。
ただし引き寄せられたのは安めの。
開かれた手を見た他3人にとって渋川の和了自体は嫌な展開だが「まあそれなら渋々OK」と考えていたと思われる局面。
だがめくられた裏ドラ表示牌が状況を激変させた。
まさかの裏2で2000/4000、渋川一気に2着目に浮上。
卓上からため息が聞こえそうな展開の中、さらに次局は親番の渋川が早々に役牌2つを鳴いて12000の先制テンパイ。
カンながら山に2枚残り。
さらに2巡後の引きで、山に4枚残りの–テンパイと絶好の形になる。
しかもメンツ手で対抗できそうだった矢島が引きでオリを選択、どんどん渋川に順風が吹くかの様な展開。
これをツモればたった2局でラスから一気にトップ目になる。
これを見た時に筆者は思った。
「渋川のトップだ」と。
東場を懸命に耐えて力をため、この南場で一気にそれを放つかのようなこの手も引きあがって彼がこの半荘のトップを決めるのだ。
そしてここでのトップは小川・矢島にとっては絶望的な状況をつきつけ、仲林に対してもかなり大きな差を得ることになる。
いよいよ渋川の雀王へのカウントダウンが始まる、と。
が、勝負は本当に何が起こるかわからない事をその直後に改めて見せつけられる。
ほぼ渋川一人旅で進められていた中、終盤に彼がドラのをツモ切ると、唐突に仲林の手が開かれた。
ピンズを止めてトイツ手に移行し、まさかまさかの渋川からの直撃8000和了。
驚異の粘りで9割方決まっていた未来をねじ伏せ、渋川を再びラス目に叩き落とす。
この後は小川が仲林の猛攻をなんとか交わしてトップで終了、
仲林はあと一歩での2着となったが渋川をラスに落とすことができた点では上々の結果となった。
仲林・渋川の差は30Pまで縮まり、さらに白熱する二人の争い。
もちろん矢島と小川もまだ残り4半荘での奇跡の逆転を目指す。
果たして数時間後に第20期雀王に輝いているのはだれか、目が離せない戦いが続く。