第20期雀王決定戦観戦記 2日目(8回戦)
第20期雀王決定戦観戦記
2日目 8回戦
【担当記者:大浜岳】
東1局
2軒リーチを制してアガったのは小川だが、渋川の手順が非常に興味深い。
この決定戦メンバーでこの手をリーチする選手は皆無だろう。呼吸をするように打。
小川・矢島からリーチが入った9巡目に渋川もテンパイを果たす。
のいずれかを切ればテンパイだ。
しかし渋川の選択は打。
は両者に無筋
は矢島には通っているが、小川に無筋かつドラまたぎの牌
はこの中では比較的通しやすいが、打点的な不満が残る
それならばと安全かつくっつきのイーシャンテンに戻し、勝負する価値がある牌を引いた時に押し返せるような手組へ。
次巡に引いてきたのは。
ドラ受けを含む––待ちのテンパイ、これならば勝負する価値は十分にありそうだが、渋川の選択は再び打。
対局後、「トータルポイントに余裕があるから勝負しなかった?」と聞いてみたところ、「あれはトータルポイントは関係ないです。」と返ってきた。
では、勝負に値しないと判断した理由を考えてみる。
・矢島に通っていないスジは10スジ
・小川に通っていないスジは12スジ
・打は2スジにかかるため矢島には2割程度、小川にも2割弱程度の危険度
・が3枚見え、も3枚見えのため、そこをまたぐスジの危険度が下がり相対的にの危険度は上昇
・自分の待ち牌はとが3枚見えと最大5枚、かつでは打点的に不満が残る
このような理由から打に至ったと思われる。
そして終盤の16巡目。
チートイツのテンパイ。
は現物のため切る牌は一択だが、渋川の手が止まる。
結果としてはヤミテンにしたのだが、ここでの思考はリーチをするか否かであろう。
見えている情報で、待ちにもの凄く自信があるという事はなさそうだが、リーチをした場合、
・ツモは一発かハイテイが付くのでツモアガリはハネマン
・出アガリも矢島のツモ番が2回、小川が1回のため2/3で一発がつきマンガン
たしかに、十分検討の余地はありそうだ。
冒頭に述べた通りこの局は小川のアガリとなるのだが、非常に面白い1局だったため取り上げさせていただいた。
南3局
本日2連続ラスの矢島だが、トップ目で南3局を迎える。
2着目の仲林と微差で、親の小川も仕掛けてから両面ターツを払ってきている。
渋川のアガリは歓迎だが、中盤過ぎとはいえ河からは特別に早そうな情報ない。
それであれば、役もドラもないが自力でアガってオーラスを迎えるのが最善の選択と判断しリーチ。
実際に渋川の手牌はリャンシャンテンであり、矢島の判断は正しかったと思う。
ただし最善の選択が最良の結果を生むとは限らないのが麻雀である。
矢島のリーチを受けた直後、連続で有効牌を引き入れた渋川がリーチ。
放銃は矢島。
今日の矢島は本当によくアタリ牌を掴まされている。
南4局
東家 仲林:32700
南家 矢島:24200
西家 渋川:21300
北家 小川:21800
矢島と仲林の差は8500点。
良配牌をもらった矢島が3巡目にを仕掛ける
ダブ南ホンイツでのマンガン以上を目指す。
5巡目に小川からリーチを受けるも、リーチ棒が出たので脇からのマンガン出アガリでもトップとなる。
テンパイは10巡目。
ドラ
もう降りる理由など一つもない。あとはヤマに4枚残っている–でアガるだけだ。
しかし無情にも引いてきたのは小川のアタリ牌である。
止める術はなく小川に8000点の放銃。これにはうなだれざるを得ない矢島。
たった2局でトップ目から4着まで叩き落された矢島。
トータルポイントも一人大きく沈んでしまった。
だが、矢島がこのまま終わるとも思えない。ここからの逆襲に期待したい。