第19回日本オープン観戦記(1回戦)

第19回日本オープン決勝観戦記
1回戦

【担当記者:中島由矩】

日本オープンはプロアマ混合で争われ、本戦からだけでも約240人の参加者がいる。
実に難しい倍率をくぐり抜けてきた選手たちによる試合だ。

そんな今大会は、4人中前回大会ファイナリストが3人というメンバーになった。
シードがあるとは言え、こんな組み合わせになることがありえるのだろうか。

準決勝4位通過の宍戸涼は、20期前期入会で筆者とは同期の関係。
今大会は2回目の出場で、2回目の決勝進出となる。
前回の経験が生きているのか、表情が非常に柔らかくリラックスできているのが分かる。

以前宍戸にプロになった理由を聞いてみたところ、「親を説得するためです。大学を中退して本気で麻雀界で生きていくという意思表示をしたかったので」という返事が返ってきた。
前回大会では痛恨のアガリ逃しがあり、「観戦記で酷評しといてください」と自嘲気味に話してくれたのを思い出す。

あれから1年か…
麻雀の借りは麻雀でしか返せないし、決勝の傷は決勝でしか癒せない。
両親を説得するため、そして自分自身を納得させるため、宍戸はまたこの決勝卓につく。
確かな手応えがほしい。麻雀界にどっしりと根を下ろし土台を築きたい。

1回戦(柴田-飯田-宍戸-荒木)

そんな宍戸の思いに牌が応えてくれる。
東1局、四者がまだ手探りする中、前回大会でとらえ損なったドラツモでテンパイ。
3巡目にリーチを宣言すると、2巡後にはもうツモアガリ。
2000/4000で頭1つ抜け出した。

しかし、今大会にかける思いで言うと、宍戸に勝るとも劣らない選手がいる。

荒木かずは宍戸の1期上にあたる19期前期入会。
前回大会のファイナリストでもあり、あの時の無念は今も忘れてはいまい。
捲土重来、今回は登録名を変更して臨んでいる。

今大会準決勝最終戦では国士無双をアガり、意気揚々とこの決勝戦に乗り込んできた。

荒木は東2局、ピンズが多めの配牌をもらうと迷うことなく一色手に向かって一直線。

しかし、9巡目に戦況は一変。
親の飯田雅貴が絶好のカンを引き入れてリーチ。

ここで荒木は柔軟な選択を見せる。
攻守兼用の字牌を切りながら手を整え、ピンズにこだわってを勝負することなく、リーチとした。

この勝負は流局で引き分け。

先制の親リーチを打った飯田は4期後期入会のサウスポー。
プロ18年目にして初の決勝舞台だと言う。
今期は雀王戦A1リーグから降級するという憂き目に遭ったので、ここで初タイトルを獲って来期につなげたい。

そして最後の紹介になったのが、準決勝を首位通過している柴田吉和。
宍戸・荒木とともに前回大会を争った選手だ。

この柴田の粘り強い打ち回しは、視聴者の印象に残る。

飯田・荒木からのリーチを相次いで受けた柴田は、両面のチーから発進すると、

フリテンのにも声をかけ、あっという間にバックでテンパイ。
二軒リーチに対して簡単に白旗をあげるのではなく、上家の荒木がリーチであることを利用し縦横無尽に立ち回る。

その後役なしとなるをポンするとをトイツ落としし、荒木のあたり牌であるタンキでテンパイを取り切った。

この1回戦は、宍戸に手が入った。
そしてその宍戸が前回大会で残した課題は、手が入ったときにしっかり攻めることでもあった。

続く東2局1本場では、ドラで場風のが暗刻のチャンス。

宍戸はあわてず静かにペンチーから発進すると、高めのならチャンタと三色がつき、12000になるテンパイを組む。

1本場で供託が2本あったことから、宍戸の仕掛けにドラのが暗刻だったとは思えなかったのかもしれない。
宍戸は荒木からを召し取り、8000+300+2000の大きな収入を得る。

南4局
東家・荒木10800
南家・柴田32200
西家・飯田21300
北家・宍戸35700

先制リーチは飯田。
ドラドラを従えての両面待ちは手応え十分だろうが、2着目の柴田まで10900点差なので、満貫ツモでは届かない。
一方で、一発ツモ裏1で跳満になれば、トップ目の宍戸もかわしてトップとなる。

もう1つは…

荒木からのリーチだ。
現状ラス目の荒木は、この親番をノーテンで終わらせるわけにはいかない。
弱気になれば選ばれたかもしれないワンチャンスのをしっかり手に留めて真っ直ぐ手を組み、ペンでリーチといく。

それぞれの思惑が交錯した二軒リーチは、形の良さに勝る飯田に軍配が上がる。
2000/4000にリーチ棒1本も入れると、2着目の柴田を100点かわして価値ある2着となった。

1回戦トップは宍戸。
手が入ったところで丁寧にシャンテン数を進め、無理で強引な勝負は決してしなかった。

2着は飯田。
初戴冠に向けて、順調な滑り出しと言ってもいいかもしれない。

3着は柴田。
1回戦は手が入らなかったときの粘りを見せてくれたが、2回戦以降手が入ったときのキレも楽しみだ。

4着は荒木。
前回大会の敗戦が脳裏に浮かぶ不穏な立ち上がりとなったが、2回戦以降の立て直しに期待したい。