第22期女流雀王決定戦観戦記3日目/最終日(13回戦)
第22期女流雀王決定戦観戦記
3日目/最終日 13回戦
【担当記者:坪川義昭】
この回で奥村、澄川はポイントを減らすようなことがあれば事実上の敗退となる可能性が高い。
また、逢川にトップを取られたとしても状況は同様である。
まだ闘いたいと願う二人の心をへし折る令和生まれの女王がそこにはいた。
東3局
奥村が早々に役牌を仕掛けてトイトイ、ホンイツの高打点を狙う。
二副露目で狙いをホンイツに定めた。
手牌だけ見るとメンゼンで満貫クラスが容易に狙える手だが、逢川は相手のスピード感を察知し捌きにいく。
これこそが逢川のストロングポイントである。
相手が仕掛けた後、トイツ落としやターツ落としが入った場合はそれに見合う素材があることが多い。つまり、バラバラで無理矢理な仕掛けのパターンが少ないのだ。もし、このがトイツ落としではなかった場合は時間に余裕があると感じてメンゼンで進めていた可能性もある。
この辺のバランス感覚が逢川は決勝に残った選手、いや、女流プロ全員の中でも突出している。
奥村、澄川がテンパイを果たした頃には当然のように勝ち目のあるテンパイを組んでいて付け入る隙を見せてはくれない。
小さなアガリではあるが、完璧な打ち回しというのはこういうプレーのことを指す。
南4局
親番の逢川は伏せればトップで終了し、優勝に王手がかかる。
他3人の心は一つ。
逢川のトップ終了だけは絶対に許さない。
澄川は牌を横に曲げた。
現状はツモアガリした上で裏ドラ3枚乗せても条件は満たせない。
このリーチに打とうが打たまいがハネマンを一局でツモアガらなくてはならない奥村がリーチと出た。
ドラを持ってくるまで待ちたいところだが、テンパイするまでに持ってくることができなかったならば裏ドラにかけるしかない。
一発ツモの場合だけは単騎に受ければタンヤオの1ハンが付き無条件となるが、チャンスがその1回限りならば少しでも山にいそうな待ちを選びたいということだ。
倍満ツモ条件の水崎もこれ以上ない手牌を完成させた。
そして、リーチをした段階では条件の満たさなかった澄川のリーチもハネマンツモでトップと緩和される。
3人で遂に逢川を追い込んだ。
澄川から奥村へロンの声。
誰もが望まなかった形での終戦となった。
「--そのアガリで、満足なのか?」
逢川がほくそ笑んだような気がした。
新女王誕生まであと2回。