第22期女流雀王決定戦観戦記2日目(7回戦)
第22期女流雀王決定戦観戦記
2日目 7回戦
【担当記者:坪川義昭】
普段仕事以外で鳴ることがほとんどない私のスマホが突然通知音を奏でた。
LINEが一件。
開いてみるとアニキこと奥村先輩からである。
『来週末空いているかな?』
え、ちょっと…
アニキに出会ったのは今からもう20年近く前のことだ。
あの頃はまだ10代だったが、もうオジサンになりましたし、家庭もあるんです。
久々のやりとりにしては積極的だなぁと思っていたところ、追撃のLINEが届いた。
『決定戦に向けて練習がしたいのだけれど、付き合ってくれないかな?』
そういうことでしたか。
当然そういうことだと思っていましたとも。
各選手勝ちたいという気持ちは持っている。
そこに強弱はない。勝ちたいと願わない選手はそもそもこの場に立つことはない。
出会った頃はストリートファイターとして活躍していたアニキだが、麻雀店に勤務しているわけでもなく、ゲスト活動もない。
日中はパソコンのディスプレイや書類と闘う日々である。
特にこの女流雀王決定戦が行われる年末は繁忙期で思うように練習が出来なかった様子。
もし、優勝したとしても数多くの対外試合や番組、各種ゲストに対応しきれないかもしれない。
それでもこの勝負の世界で生きてきたアニキは、二度目の登頂を目指す。
東3局
字牌の重なり次第ではホンイツが見える手牌を貰った。
先手を取ったのはりんのだ。ドラ雀頭の絶好のリーチを入れる。
ホンイツを見据えての進行だった奥村の手牌には、この先の安全牌も確保されていて、すぐに困ることは無さそうだ。
字牌を切り終えたところでこの手牌になる。
チンイツのイーシャンテンではあるものの、マンズは共に2つの筋にかかっていて弩級に危ない。
現物のソーズを抜いて手仕舞いかと思っていた。
小気味良い打牌音で勝負を仕掛けた。
こうなればオリる選択肢はなくなる。二人の捲り合い開始だ。
分かれ道がやってきた。
手牌だけ見るとに手を掛けるのが有力候補。1番マチが多い。
しかし、自体通っていないということ、待ち自体がかなり切られていて枚数が増えているか怪しいところ。
悩ましいところだったが、奥村の決断は早かった。
事前に決めていたかのような速さだが、決め手は瞬間の安全度を重視したというところだろう。
確かにどのマチに受けても薄かったが、練習不足を感じさせない判断スピードとアガリへの嗅覚を魅せつけてくれた。
奥村はこのリードを守り抜きオーラスを迎える。
早い巡目のテンパイをヤミテンに構える。
点棒は稼ぎたいところではあるが、流局時にノーテン終了が許される。
トップ死守が最優先。
誰かしらがこのようにアクションを起こした場合もオリるという判断を毎巡選択できるのも強みになる。
すぐに4000オールをツモアガって勝負あり。
どちらの判断でも結果はおそらく変わらないが、麻雀の過程の大切さを見せつけてくれた。
他の選手よりも練習不足が不安要素と語っていたが、そんなことは微塵も感じさせない圧勝劇だった。
蠍の毒はもう全員に回り始めてきているかもしれない。