第22期女流雀王決定戦観戦記1日目(2回戦)

第22期女流雀王決定戦観戦記
1日目 2回戦
【担当記者:中島由矩】
2回戦(奥村-逢川-水崎-りんの)
2021年12月26日、第20期女流雀王決定戦最終15回戦が終わり、逢川恵夢が3度目の女流雀王に輝いた3日後、筆者は【第20期女流雀王決定戦アナザーストーリー】と題して、次の文章をしたためた。今回の第22期女流雀王決定戦とも無関係ではないので、その一部を紹介したい。
~引用ここから~
私が推察するに、奥村は逢川と佐月のいずれかに肩入れする気持ちはなかっただろう。だからこそ、自分の一打で逢川が、あるいは佐月が、女流雀王になることも女流雀王になれないことも、嫌だったんじゃないか。同卓者である自分ではなく、それは純然たる牌の並びによってのみ決まってほしい。闘いの女神は今際(いまわ)の際に、そう神に祈ったんじゃないか。
テンパイが入っているときは解説者に「牌が割れるのではないか」と言われるほど迫力ある摸打をする奥村の、元気のない右手の動きから、「無念」「諦観」「悲哀」こういうものではない、柔らかくて温かくて穏やかでちょっと切ない何かを受け取って、私は胸がいっぱいになったのだ。
~引用ここまで~
あれから2年の歳月が流れた。あの日「なんと約20年ぶりの女流雀王決定戦なんです!」と話題をさらい、最後は敗れて静かに会場を後にした、奥村知美が帰ってくる。

奥村は事前のインタビューで、「決定戦の麻雀が本当に好きでプロを続けている」と語っている。ポイント状況が悪く何もできなかった前回最終戦のイメージを払拭し、元気に暴れ回ってリードを築きたい。

奥村の真骨頂は、東3局に発揮された。

ドラを重ねた奥村。ここで安全牌として抱えていた
を放し、目一杯に構えた。

そこに、親の水崎ともみからリーチが飛んでくる。ドラ1枚内蔵のピンフで、一発なら12000からということになる。待ちは–
だ。

奥村が山に手を伸ばすと、そこにいたのは無スジの。しかしこれは、
–
を受けるリャンメンターツができたと見ることもできる。
水崎の河は
(リーチ)
となっており、慎重にいくなら現物の、しかし次の
はどうしたものか。ソーズの中では、
がまだ比較的マシか・・・。

と思っていたところ、奥村の選択はそのどれでもなかった。
まるでリーチの発声が聞こえなかったかのような打から、中スジの
を打ってソーズを
のリャンカンに受け、最後はカン
を引き入れると、
を連打して追いかけリーチ。これぞ奥村の麻雀。闘いの女神が、2年ぶりに女流雀王決定戦に帰ってきた。
この水崎–
vs.奥村
–
のピンズ対決は、先制の水崎ではなく危険牌を一発で勝負した奥村に軍配。
をツモると、裏ドラを1枚乗せて、リーチ・ツモ・ピンフ・ドラドラ・裏ドラの3000/6000に仕上げた。

奥村はこの後も、南1局親番で

メンホン・一気通貫の12000をりんのから打ち取り、

リーチ・一発・ツモの2000は2100オールで盤石のリードを築くと、南2局には

につづけて
も仕掛け、大三元含みで他家を震え上がらせる。この
が山に3枚いて役満への期待が高まったものの、最後は1人テンパイで流局。「2回戦はこの辺で許してやるか」といったところだろう。
南4局1本場を迎えて、点棒状況は下の通り。
東家・りんの1300
南家・奥村61600
西家・逢川23100
北家・水崎14000
興味は、逢川と水崎の2着争いに移っていった。

水崎が5巡目にリーチを宣言。と
のシャンポン待ちだ。出アガリだと1600は1900と寂しいが、ツモアガリの場合はツモと三暗刻がついて2000/4000は2100/4100になり着アップとなる。

親番を続けたいりんのが16巡目に追いかけたものの、

山の奥深くに眠っていたを、水崎が掘り当ててゲームセット。

こういうオーラスの着アップをコツコツものにして第21期女流雀王の座を射止めた水崎は、ホッとした表情で前を見据え、

これで2戦連続3着となり、どうにももどかしい逢川。逢川は、それでも気丈に振舞ったものの、2人の対比が印象的だった。

2回戦トップは奥村。戦前のインタビューで途中敗退にも言及した謙虚さも合わせ持つ闘いの女神は、爆発すると手がつけられない大きなインパクトを同卓者に残した。
2着になった水崎は、第21期女流雀王として過ごした幸せな日々をかみしめながら、今後もこういうオーラスでの着アップを積み重ねて連覇をにらむ。
3着に落ちたのは逢川。雌伏の時を耐え、いざ自分の番が来たときにライバルを射程圏内にとらえておきたい。
4着は、1回戦トップのりんの。貯金をすべて吐き出し、再びスタートラインに立って、初の戴冠を目指す。