第21期女流雀王決定戦観戦記2日目(7回戦)
第21期女流雀王決定戦観戦記
2日目 7回戦
【担当記者:中島由矩】
7回戦(中月-佐月-澄川-逢川)
光と陰。
女流雀王を戴冠した者を光とするならば、そうでない者たちは陰ということになるし、2日目を終えて4位以内に入り3日目に麻雀ができる者たちを光とするならば、そうでない者は陰ということになる。
1半荘に絞って考えてみると、アガった手を光とするならば、アガリにつながらなかった手は陰ということになる。
この7回戦でも、たくさんの光と陰が交錯した。光が強ければ強いほど、陰の印象も強烈なものになる。
まずは東3局0本場、南家・逢川の仕掛け出しから見ていこう。
ドラドラの配牌をもらった逢川は、を暗刻にすると、チーから発進。
カンテンパイを経て、最終形はとドラののシャンポンになった。
そこに差し込むまばゆい光。北家・佐月のリーチはドラの単騎。
佐月はこれを一発でツモり上げ、裏ドラも1枚乗せ、リーチ・一発・ツモ・ドラドラ・裏ドラの3000/6000に仕上げた。くしくも陰となった逢川は何を思うか。
次は南1局1本場、ラス目で親番を迎えた中月がポンから発進して–待ちでファーストテンパイ。
連荘での逆転を、虎視眈々とねらう。
女流雀王戴冠のためにはまずこの2日目を4位以内で終えなければならず、6回戦までを終えてトータル△94.2pt5位の中月にとって、7回戦をこのまま終えることは許されない。
すると、佐月が好形のイーシャンテンにツモを引き入れテンパイ。トップ目の役ありテンパイだが、2着目の逢川とはわずか4100差。
「リードは守るものではなく広げるもの」
と言わんばかりに、ここは腹をくくってリーチに踏み切った。
佐月のリーチに対する一発目、逢川がドラのを引いてテンパイ。
ツモ ドラ
待ち牌のカンはリーチを打った佐月の河にあり、打点も8000と上々だ。ツモアガリはもちろんのこと、誰から出ても瞬間トップ目に立てる。
3者の思惑が複雑に交錯する戦いを制したのは、またも佐月。
中月の待ち牌でもあったを、再び一発で引き寄せ、裏ドラを1枚乗せて2000/4000は2100/4100に供託2本も回収して輝きを増す。
勝負にたらればは禁句だが、このが中月に回ってくれば中月の巻き返しが、あるいは王牌に眠っていれば逢川が8000でトップ目に立つ姿が、それぞれ見られたかもしれない。
逢川は南2局1本場でもピンフ・ドラ3のダマテンを入れるが、次の手番の中月が佐月にを打ち上げてしまい、これまた陰に隠れる形となってしまった。
南4局の攻防にも見応えがあった。
まずは親番・逢川が先制リーチ。
道中、フリテンを解消しつつタンヤオドラドラを確定させるチーの選択もあったが、逢川は親リーをかけることにより、チーから既に動き出している佐月を勝負の土俵から降ろしたかったのだろう。
ところが、佐月がを暗刻にし、を落としてホンイツに行かずともアガれる形になった。
逢川の現物であるを並べ、イーシャンテンを維持し、自ら決着をつけに向かう。
そこに持ってくる両無スジの。ここで押して「12000」などと言われてはかなわない。
逢川の目論見を、いったんはかわしたかに思われた佐月だったが、ここでギブアップ。を抜いて降りた。
この局は、着アップしたい中月から追いかけリーチが入ったものの、
その中月が引いたのは、自らのアガリ牌–ではなく、逢川のアガリ牌だった。
なら暗カンに逃げられたのだが、ではそういうわけにもいかず。リーチ・ドラ1の3900を献上。
前局押したらアガれてた・・・、という反省からではないだろうが、南4局2本場は佐月が3副露から押し切り、白・トイトイ・ドラドラを、リーチの中月から打ち取ってゲームセット。熱戦にピリオドを打った。
筆者が逢川に対し「敗れてなお強し」の印象を持ったように、佐月もオーラスの攻防を含め、逢川の追い上げに苦しんだに違いない
終局後も厳しい表情を崩すことはなかった。とはいえ、艱難辛苦を乗り越えてつかんだ大きなトップだ。
トータルポイントを伸ばし、8回戦で戻ってくる水崎とともに、首位に立つ逢川を追う。