第20期女流雀王決定戦観戦記 1日目(1回戦)

日本プロ麻雀協会 第20期女流雀王決定戦観戦記 1日目

第20期女流雀王決定戦観戦記
1日目 1回戦

【担当記者:武中進】

昨年の女流雀王決定戦の最終戦オーラス、親番の逢川恵夢は伏せれば優勝と勝利をほぼ手中に収めていた。
あとは18巡のウィニングランを終えて女流雀王史上初の3連覇を成し遂げる、、、はずだった。

だがその彼女に待っていた非情な現実。

協会公式戦史上初・オーラスに役満での大逆転。
これにより佐月麻理子が第19期女流雀王に輝いた。

逢川は決着後の表彰式でもいつも通りに明るく振舞っていた。
だが9割9分9厘手にしていた勝利からのこの結末、彼女の心情は察するに余りある。

今期女流Aリーグを首位で決勝進出を決めた逢川の中にある思いはただ一つ、昨年のリベンジだろう。
今年の最大の見どころはやはりこの佐月・逢川の再戦ではないだろうか。

決勝メンバーの残る2名は『中月裕子』と『奥村知美』。

中月は第17期以来の決定戦進出。
協会新人王・μレディースオープン・女流名人と実績は十分、
4つ目のタイトルとして自身初の女流雀王獲得を目指す。

奥村は第2期女流雀王であり、決定戦は3期以来なんと17年ぶり。
これは女流雀王だけでなく全協会公式タイトル戦における最長間隔での決定戦再進出である。
久々の大舞台でどのような勝負を見せてくれるのか、個人的にはかなり注目している選手だ。

解説も「とにかく攻めの強いメンバーなので、多彩な攻めの激突が見れそう」と期待する今回の面々。
東1局からいきなりその通りの展開となる。

まず最初に仕掛けたのが佐月、からポン。

一見すると遠くて安い、教科書には非推奨として書かれていそうな仕掛けに見える。
だがチャンタやトイトイ、ドラの絡みを相手に連想させつつ、ツモ次第では3900クラスも望める仕掛け。
いざという時はオリるための字牌も内蔵されている。

佐月の引き出しの多さ、そして今期も積極的に優勝を勝ち取りに行く姿勢がうかがえる積極的な仕掛け。
ツモにも恵まれ4巡後にあっというまの聴牌。

これに対してじっくり攻めていった奥村が終盤にで聴牌、ドラのを切ってリーチ。

だがこの局を制したのは佐月でも奥村でもなく、中月だった。
奥村のリーチ宣言牌をポンし、奥村からで8000を和了。

いきなり3者がバチバチと火花を散らす戦い。
だが次局を制したのはこの戦いを脇から静観していた逢川。
愚形ながら先手を取ると、リーチ一発ツモで2000/4000。

一歩リードした逢川、次局も東1局と同様冷静な受けを見せる。
佐月に入った親満チャンスのこの染め手。

逢川はすでに佐月の染め手気配、および奥村・中月の河と自身の手との比較からかなり早い段階で撤退をはじめる。
5巡目の切り以降のピンズの早い処理、佐月のキー牌になり得る字牌も切らない構え。

逢川はこの後も繊細な守りに加え、先手を取れそなうな局は積極的に場を回していく。
中盤以降は序盤に大きなビハインドを背負った奥村が失点を挽回する和了を繰り返した事が佐月・中月の攻撃をさばく結果となった点も大きく、逢川はこの半荘をトップでまとめあげる。

2着は中月。
だが大物手があと一歩で不発となることが多く、「あと一牌が来ていれば」という展開の連続だった。

3着は奥村。
前半に大きな失点をしながらも、そのあとの和了でラスを回避した彼女の方が中月より気持ちよく次を迎えられる内容にも見えた。

4着の佐月は和了0回・放銃0回と、なかなかにじれったい展開が続いた。

逢川のバランス感覚は本当に面白い。
守る局はかなり早く徹底するし、攻める局は本当に積極的な攻めを展開する。
その彼女の守りの部分を存分にみせてくれたこの半荘、最高のスタートだったのではないだろうか。