第21期雀王決定戦観戦記 4日目/最終日(16回戦)
第21期雀王決定戦観戦記
最終日 16回戦
【担当記者:武中進】
ついに第21期雀王決定戦も最終日へ。
トータル首位の浅井と4位の仲林でさえ約170P差。
金太賢が第17期に連覇を成し遂げた際は最終日に約260P差を逆転していることを考えると、まだ全員にチャンスがあるといえる。
が、実は雀王決定戦にて最終日開始時点で4位の人間が優勝したケースは過去一度も無い。
雀竜と女流雀王でも4位からの大逆転優勝というのはほとんど見た記憶がない。
覚えてる限りでは第4期女流雀王で眞崎雪菜が成し遂げた大逆転優勝くらいか。
ポイント差だけならともかく「3人を捲る」という条件がいかに過酷かを物語っているデータと言えるだろう。
仲林だけでなく他三人も、まずは出だしのトップをとって優勝に向けて最高のスタートを切りたい。
16回戦(松本-渋川-浅井-仲林)
まず順調なスタートを切ったのは渋川。
東1局、役牌2つの配牌をしっかり染め手にまとめての2000/4000。
次局の親番では1300オールをツモってまずはリードを得る。
浅井も負けてはいない。
東2局1本場で本日初のアガリ。
先行リーチを打ち、追いついた仲林のテンパイ打牌のを捉えリーチ・ピンフ・裏1の3900は4200。
東3局では松本が先手好形リーチ。
一方の浅井、この時点では愚形2つが残った何とも言えないイーシャンテンだったが、ドラのを引いたため追っかけリーチで勝負。
するとこれを松本が一発で掴み12000のアガリ。
まだ東場ながら現状のライバルを1万点以下のラスに押し込み、渋川を捲ってトップ目となる大きな一撃となった。
続いての東3局1本場では仲林が三色の勝負手で先制リーチ。
しかし今度は松本がこれに追っかけ仲林から3900は4200。
これで松本・仲林がほぼ並びの3着争い、浅井・渋川がトップ争いの構図となる。
この16回戦、松本としては3着でもまだまだ勝ち目はあるが、仲林は4着は勿論3着でもかなり厳しいポイント状況に追い込まれる立場である。
この競り負けですでにがけっぷちに追い詰められたと言えるだろう。
だがそんな彼に次局訪れた起死回生の一手。
配牌時点ですでに役牌・三暗刻のイーシャンテン、
そして3巡目にを引いてアンカンすると新ドラが自身で3枚持ちの、もはや安くなりようがない手となる。
さらに次々とマンズを引いて7巡目で以下の形でテンパイ。
ダマテンにも関わらず24000点以上確定、高めのツモなら12000オール。
松本からリーチが入ると仲林も追っかけリーチ、にて松本からのアガリとなった。
現在の点数・ポイント状況と手牌を考えると「なんで36000にならないんだよ、、」と少々不満を感じてしまいそうな手だが、とにもかくにも24000の加点に成功。
これで渋川・浅井に一気に並びかける。
一方で箱下13100点のラス目になってしまった松本。
だがここから驚異の粘りを見せる。
東4局1本場は先制リーチを打っていた渋川から流局寸前に追いつきリーチ・一発・ドラ1の5200は5500。
迎えた南1局親番で、ピンフドラ2の勝負手リーチを打っていた渋川から2900。
さらに1本場ではドラ2の手牌を積極的にタンヤオで仕掛け、渋川・浅井のリーチをかわして4000は4100オール。
ラス目からの脱出には至らずも、親番が終わるまでに15200まで持ち点を復活。3着目の渋川まで約3000点差まで詰め寄った。
だが、松本に競り負け続けた渋川もようやく南2局親番で2600オールを和了してトップ争いに再度参戦。
しかし南3局、東2局の12000以降は静観していた浅井についにチャンス手。
5巡目時点で大物手のイーシャンテンにはなっていたが、仲林の手にが3枚ある等ピンズの受け入れがかなり厳しい状況だった。
しかしそれを覆す望外とも言える引きの–テンパイ。
先行リーチを打っていた渋川に追っかけて7700を直撃、頭一つ抜け出す。
オーラスの点棒状況は以下の通り
仲林 31300
松本 5600
渋川 25400
浅井 37700
トータルポイントを考えると、松本は浅井のトップだけは阻止するため仲林の親を静観する立場。
渋川も浅井のトップだけは阻止しつつできればハネ満ツモで自身トップで終わらせたい。
つまり浅井以外の3者が浅井のトップだけは阻止するスタンスのため、連合軍vs浅井となる局面。
しかしその浅井の手牌が良く、わずか4巡目でテンパイ。
9巡目に仲林も追いついてリーチ。
浅井の選択として2着オッケーと考えてのオリもありえた。
特に悩ましかったのが13巡目のこの状況。
マンズのが通る状況となったことを考えるとなおさらマンズの中抜きが有力手にも見えた。
だが自身がドラを3枚固めたことで仲林のアガリ打点の予想値はある程度下がったとも言える状況ゆえ、押す選択もあり得る。
長考の末、浅井の選択は打での勝負続行。
この決勝を勝ち切るためにも、まだまだ勝負の姿勢は崩さない。
無論これは以降に危険牌を引いた時に連打で回りつつ聴牌復活の可能性を残しやすい選択でもあり、打たれてみるとまさにベストの一打に見えた。
浅井のこの勝負の姿勢を見て、渋川・松本も親リーチを打っている仲林ではなく浅井の現物を優先して抜き、必死にトップ阻止に動く。
だが攻めの姿勢を貫き通した彼の元に、この半荘の最後の1枚が引き寄せられた。
浅井としては自身のトップは勿論、松本をラスにしたことで頭一つ抜け出す最高のスタートを切れた16回戦となった。
松本はともかくいよいよ追い詰められた渋川と仲林は、次戦の結果次第では現実的な条件が無くなる状況になりつつある。
浅井のトップだけは避けるために全員が協力するであろう次戦。
だがその協力もどこかしらのタイミングで裏切りが出るのは自明の理。
果たしてそれがどのタイミングになるだろうか?それもタイトル戦最終日の醍醐味だろう。
今期の雀王決定戦もいよいよクライマックスに近づきつつある。