第20期雀王決定戦観戦記 3日目(11回戦)
第20期雀王決定戦観戦記
3日目 11回戦
【担当記者:武中進】
2日目終了時点でトータル首位の渋川、北家で以下の配牌。
ドラ
「守りに入らず今日で決めてやる位の気持ちでいこうと思います」
渋川は対局開始前のインタビューでそう言い放った。
この3日目もさらにリードを広げれば、いよいよ自身初の雀王に手がかかる。
そんな渋川のここまでの勢いと、今日にかける意気込みを象徴するかのような配牌である。
現時点でドラは無いのでが出たらポンしてのかわし手が有力だが、スルーしての打点狙い、更にはマンズがドラ含みで3色に伸びる可能性も十分に狙える。
だがこの局先手を取ったのは渋川ではなく親番の矢島だった。
わずか5巡目に以下のリーチ
ドラ
こうなると渋川も少し押し引きが悩ましくなる。
現在矢島がトータル4位という点と親であることを考慮すると、正面からの殴り合いをするにはある程度の良形か打点が欲しいところ。
「がアンコになれば別だが、シャンポン待ちになったら少し悩ましいかもな、、、」
とこの瞬間は思ってみていたのだが、、、、、
数巡後、渋川は追っかけリーチをして、あっさり3000-6000を和了。
リーチを受けた後にと絶好牌を引き、迷う事なく殴り合える形となってからドラのでド高めをツモ。
現在厳しいポイント状況にある矢島はもちろん仲林・小川に対しても大きなリードを得る最高のスタートとなった。
だが、勿論他家もこのまま黙ってはいない。
まず東2局の1本場、親の小川が2600は2700オールをツモ。
打点と形を意識した2巡目の切りがフリテンになっていたがそれを引き戻し、仲林・矢島の勝負手も振り切って値千金の和了で渋川に追いすがる。
東3局4本場では親の仲林が矢島の先制リーチに真っ向勝負をして追っかけリーチ。
矢島
ドラ
仲林
ドラ
軍配は仲林、12000は13200を矢島から和了。
そして東3局6本場では小川が反撃の2000-4000は2600-4600。
これで渋川をまくってトップ目に。
ツモ ドラ
3者がバチバチに殴り合ってそれぞれ3万点を超えて南場に突入する展開。
一方で一人箱下の矢島だったが、南1局の親番が流された後は現状トータル3位の小川をトップにして半荘を終わらせる方向にシフトチェンジ。
ここに結成された矢島・小川の連合軍、これが功を奏して微差ながら小川トップ目でオーラスとなった。
だがここに立ちふさがったのはやはり渋川。
先制ピンフリーチからの1300オール、わずかながら小川をまくってトップ目に立った。
この時点での点棒状況は以下の通り
矢島 ▲4200
小川 35300
仲林 32300
渋川 36600
1本場、トップ安泰のためにはまだ加点が必要な渋川が4巡目のチートイツリーチで決めに行く。
リーチ時点で和了牌のはヤマに3枚あり、和了すればトップを大きく引き寄せる事ができる点棒状況。
だがここでアガればトップが見えている小川・仲林も無論黙ってはおらず、仕掛けを入れて応戦する。
そして矢島ももちろん黙っていない。
小川「矢島君、二人でこの難局を乗り切ろう!」
矢島「はい。小川さんのために、全力で戦います!」
二人のこんな心の会話がひょとしたらあったかもしれないこのシーン、小川は途中で撤退したが、その後も矢島は懸命に渋川に立ち向かう。
そもそもこの局面は小川が渋川に放銃するくらいなら、次局小川に逆転の目が残りやすくするため矢島自身が放銃した方がマシなこともある。
そして終盤、矢島がようやく聴牌を果たす。
・をポンしての–のシャンポン聴牌。
打点はつまり32000である。
渋川からの直撃で彼をラスに落とせるのは勿論、自模ればなんとこの局面から驚異の大逆転トップ。
「小川さん、僕はさっき”あなたのため”と嘘つきました。結局人は自分のために戦うんです。この手を決めて私がトップをいただきます!」
そんな事を矢島は思ってたかもしれない。
しかしこの直後に渋川がを引いて和了。
矢島の蜘蛛の糸を断ち切り、自身のトップもほぼ決定づける。
そして次局以降も手牌に恵まれた渋川は次々と加点を繰り返しこの親番で約4万点を荒稼ぎ。
終わってみれば7万点オーバーでの完全なる勝利で半荘を終えた。
残り回数を考えると仲林はまだ慌てる時間でもないポイント差と言える。
一方で小川・矢島は少々苦しい立場、特に矢島はいよいよ俵に足がかかっている状況。
3日目にして勝負は佳境に入るつつあると言えるかもしれない。