第22期雀竜位決定戦観戦記 2日目(7回戦)
【担当記者:中島由矩】
7回戦(真田-原田-吉田-秋瀬 (抜け番・安藤))
南2局0本場、4者の表情を、まずはご覧いただいた。では次に、この4者の視線の先にあるアガリをお見せしよう。
役満・国士無双だ。
「ロン。32000」
と声を発したのは、女性として初の雀竜決定戦にコマを進めてきた秋瀬ちさとで、
「はい」
と答えたのは、関西本部に初めて雀竜位を持って帰ろうと意気込む原田翔平。
A級が終了し決定戦進出が決まった時、「自分らしくのびのびと打てるように頑張ります」と手を振った秋瀬と
神妙な面持ちで、「秋瀬さんには結構やられているのでリベンジしたい」と語った原田。
直接インタビューをしたわけではないのであくまでも筆者の想像に過ぎないが、両者ともにまさかこうなるとは思っていなかっただろう。つくづく麻雀は分からない。
では、この衝撃の南2局0本場を、最初から振り返っていきたい。
【南2局0本場・親番原田】
東家・原田翔平 27400
南家・吉田知弘 24700
西家・秋瀬ちさと 28500
北家・真田槐 19400
トータル首位の真田が6回戦でトップを飾り、トータル5位の安藤が6回戦でラスを引いたことにより、1日目終了時点よりもやや縦長な展開になったところだった。この7回戦は東1局から流局が続くジリジリとした展開。供託が3本ある東4局3本場、真田との二軒リーチを、原田が制したところだった。
トップ目の真田を直撃でき、リーチ・ピンフの2000点が合計5900点の収入になり、3着目からトップ目に立てた原田。もし麻雀に流れがあるならば、もし麻雀中に吹く風があるならば、それは確かに原田の後方から当たっているはずだった。
秋瀬の配牌が11種11牌。麻雀の神様から授かった「ギフト」と呼んで差し支えない。ちなみにこのgiftという単語、英語では「贈り物」という意味だが、ドイツ語では「毒」を意味する。
秋瀬はこのギフト(贈り物)を生かすべくから河に走らせ、
一方の原田はタンピン系のギフト(毒)を手にして字牌のから。
視聴者目線では、
吉田に2枚、
真田に1枚あるの行方が気になるところ。
秋瀬自身は知る由もないが、このラス牌をあっさり2巡目に引けたのが大きかった。ここで勝負あった。
1つ気になることがあるとすれば、13面待ちになるを先に引けるか、あるいは他が先に入ってが待ち牌になるか。
吉田はが必要な牌姿に見えない。チートイツに決めたときに待ち牌として残せるか。
原田はタンヤオを目指して打に続いて打。ギフト(毒)が徐々に原田をむしばんでいく。
真田はをすでに2枚内蔵していて、4枚ならチャンタ・ジュンチャンに使えそうだが、差し当たって3枚目は不要だろう。
四者四様の思惑が卓上で交錯する中、果たしてツモで秋瀬にテンパイが入った。あとは山に残り2枚のをめぐるロシアンルーレットだ。
ツモ
ドラ
引いてきたのは原田。
■6巡目
■余りなし
で、このは止まらない。
「ロン。32000」
これもまた麻雀か。
しかし、原田も次局すかさず反撃。
まだ国士無双の余韻がただよう南3局0本場、ドラ色のソーズ多めの配牌をもらうと
ペンチーから発進。暗刻のを河に並べていく。
最後はツモを引き入れ、・のシャンポン待ちテンパイに取ると、
高めのドラをそっと置いた。チンイツ・ドラ3は4000/8000。さっき払った32000が半分返ってきた計算になる。これもまたギフト(贈り物)だ。
オーラスは吉田が500/1000をツモって2着をキープ。吉田は吉田で、決定戦3日目に進出するための大きなポイントを重ねた。
7回戦トップは秋瀬。トータル順位を3位から2位に引き上げ、いよいよ初の雀竜位をその視界にとらえた。
2着になったのは吉田。抜け番だったトータル5位安藤とのポイント差は66.6ptで、これはまだまだセーフティーリードとは言い難い。
3着は真田。この荒れた7回戦をうまく耐え抜いたと言えよう。8回戦以降の巻き返しを誓う。
4着になったのは原田。国士無双放銃で一時は箱下にまで沈んだものの、倍満和了ですぐに戻ってきたのはさすがだった。