第22期雀竜位決定戦観戦記 1日目(2回戦)
【担当記者:中島由矩】
2回戦(秋瀬-安藤-原田-真田 (抜け番・吉田))
原田翔平は12期後期入会で、この決定戦が第22期だから、ここは原田にとって足掛け10年目でつかんだ初の大舞台という計算になる。
西家の席に座って東1局0本場、開いた自動配牌がこれだったら、とても普通にはしていられまい。まだ画面のドラ表示が追いついていないものの、ドラ3でリャンメンリャンメンのイーシャンテンになっている。
ドラ
原田は兵庫県出身で、当会関西本部所属だから、心中
(よっしゃ!もろたで安藤!)
くらいは思っていたかもしれない。
しかし決して浮ついた雰囲気を出すことなく、静かに字牌のから河に並べていく。
しかし、麻雀は4人でやるゲームだ。自分以外の3人が3人とも黙って座っているだけではない。
4人の中で唯一、1回戦が抜け番で、卓についていなかった秋瀬ちさと。22回目を数える雀竜決定戦で、女性として初めてこの卓にたどり着いた。
16期後期入会は、新人王戦に出られるほど若くはないが、中堅と呼ぶにはまだ早い気もする。
その秋瀬が6巡目に親リーチ。場況のよいカンで先制攻撃を仕掛けた。
原田も無スジを切り飛ばして徹底抗戦の構えを取るが、ここは秋瀬がツモアガリ。
1000オールを点箱に収め、続く1本場へと進む。秋瀬の立場から原田の配牌は知る由もないが、2000/4000や3000/6000の親被りになっていた未来を想像すると、天地の差である。
続く東1局1本場は、雀王戦A1リーガーの誇りを胸に、そしてこの1年で約10㎏のダイエットを敢行し、この日のためにスーツを新調した真田槐が、リーチと攻める
ラス牌のカンを一発でツモアガリ。2000/4000は2100/4100でトップ目に立ち、1回戦からの2連勝をクッキリと視野に入れた。
事前インタビューで、この決定戦開幕を「待ちわびました」と語った安藤は、大物手を作って一躍逆転を目論む。
メンホン・チートイツ・ドラドラは、このままリーチを掛けずとも18000、ツモなら8000オールという超勝負手だ。まだ2回戦目とは言え、1回戦のラスがあって、10回戦を終えての敗退も気になるところ。
しかしここは先制リーチの秋瀬が、原田のリーチ宣言牌をとらえる。
東1局0本場同様、自身の打点はさほどでないものの、ライバルの見えていない大物手の成就を未然に防ぐことができている。
東3局0本場は、真田が・・ドラドラの三面張をツモアガリ。点棒を1人40000点台に乗せ、下3人が競った状況を作り出し、盤石のリードを築く。
秋瀬もやり返す。東4局0本場、・・と字牌を3つ仕掛けると、
安藤からの先制リーチと、
原田からの二軒リーチをかわし、
枚数的に分の悪い勝負に競り勝つ。2000/4000にリーチ棒2本を入れ、トップ目の真田まで1800点差にまで詰め寄った。
それにしても、安藤のこの手はどう進めていくのが正解だったのだろう。ピンフ・三色を見たいところだが、南1局南家の安藤にとってダブであり、なおかつもしを引くと三色は崩れる。
ではダブを頼りに345の三色を確定させるためと外していきたいが、はドラなのである。
安藤はトイツ落としの後をアンコにすると、ドラのを切って高めのノベタンに受けてリーチを宣言した。
しかしこの–が真田に止められてしまい、安藤の勝負手は再び水泡に帰す。
南4局0本場を迎えて、点棒状況は下の通りになっていた。
東家・真田 34200
南家・秋瀬 24900
西家・安藤 15100
北家・原田 25800
逆転トップに向けて、5200の直撃か1600/3200以上のツモアガリが必要な原田。がトイツになって雀頭ができたものの、原田はこれをツモ切りとする。重ねるならではなくタンヤオがつく、もしくはドラのカンを引いてを雀頭にする構想だ。
ここで予期せぬことが起こった。役牌のを仕掛けていた安藤が真田の切ったにポンの声をかけるものの、これは自身1枚しか持っておらず不成立。安藤はアガリ放棄になってしまった。
このアガリ放棄を利用して、まず攻勢に出たのは原田。
前述の通りを雀頭にする構想は拒否したものの、ペンを引き入れてしまい、これは渋々採用。安藤に対して警戒しなくてよくなった、とマンズを外していき。リーチ・表ドラ・裏ドラの5200直撃か、リーチ・ツモ・表ドラ・裏ドラの2000/4000をねらう。
原田と同じくトップまで5200直撃or1600/3200条件の秋瀬。を引き入れて三色を確定させるか、カンを埋めてピンフ・三色の可能性を追いたかったところだが、ツモでカン待ちのテンパイ。しかし秋瀬は打としてテンパイを取らず、この2回戦の趨勢を占う大事な1枚を次のツモに委ねた。
まずは原田がリーチ。待ち牌のカンは山にあと1枚残っていた。
続いて、秋瀬がしびれを切らしてリーチ。というのも、相変わらずもカンも埋まってはおらず、先ほどと状況は変わっていない。変わったことと言えば、待ち牌がカンからとのシャンポン待ちになったくらいだ。
1番不都合だったのは、安藤に8000を放銃してもトップでこの2回戦を終えることができたはずの親番真田。
・ホンイツの7700チーテンが取れるが打たれて小考中だ。前巡原田がをツモ切っており、このはリャンメンには当たらない。シャンポン待ちだと仮定すると、風牌は全て切れており、ドラのも河に2枚すでに走っている。原田にと秋瀬にが、多少気になる程度。それでも安めなら2600までか。
こうして秋瀬のアガリ牌であるが、真田の手から放たれた。
「ロン」
秋瀬の声が重なる。
真田の読みは正確だった。しかし、裏ドラが1枚乗るとトップは交代する。秋瀬が祈るように裏ドラをめくると、が表示牌として顔を出した。リーチ・表ドラ・裏ドラは5200直撃で、秋瀬の決定戦初戦初トップが鮮やかに決まり、対照的に真田の2連勝は目前で霧消した。
2回戦トップは秋瀬ちさと。緊張もほぐれたところで、3回戦以降も前に出ていき、トップを量産したい。
2着になったのは真田槐。オーラス裏ドラ1枚に泣いた。
3着は原田翔平。1回戦・2回戦を通して、手は入っている。A級最終戦でトップ条件を満たしてこの決定戦に乗り込んできた勝負強さを発揮したい。
4着になったのは安藤弘樹。連続ラスで△100pt近く失い、オーラスの誤ポンの件も含めて、1度立て直したい。3回戦が抜け番であることは、この上ないタイミングなのかもしれない。
2回戦抜け番だった吉田が元気いっぱいで帰ってくるはずの、3回戦が楽しみだ。