第22期雀竜位決定戦観戦記 1日目(1回戦)
【担当記者:武中進】
※全選手敬称略
現雀竜位の安藤弘樹に今期挑戦するのは以下4名。
真田槐
原田翔平
吉田知弘
秋瀬ちさと
今回のメンバーで一番注目の選手が誰かと言われれば、やはり22期目にして初の女流選手の決定戦進出を果たした秋瀬だろう。第3回女流モンド新人戦の優勝やモンド出場と実績もあり大舞台の経験値は十分だ。
ただ本命が誰かを考えるなら、個人的には安藤・真田のどちらかを推したい。
安藤は昨年の戴冠、そしてそれにより獲得したB1特昇から来期はA2への参戦を決めている協会新世代のホープの一人、そして真田は今季からA1に参戦している協会トップ選手の一人、意外にも今回が初のタイトル戦決勝進出だがその実力には定評がある。
吉田は言わずもがなの前雀竜位、原田もB1リーグ所属かつ今期関西雀王の決勝進出の実績があるが、やはり2人のどちらかを本命と見る人が多いのではないだろうか。
1回戦は秋瀬が抜け番で、座順は安藤、原田、真田、吉田の順。
東1局 まずは吉田が先制する。
ペンをチーした時点では打点はとにかく早さはそこまで期待できない形だったが、ツモ山と他家の手牌が上手くこれにかみ合いあっという間に、をポンして理想的なテンパイ。そしてすぐのツモアガリ、幸先の良い立ち上がりとなった。
ただこの局、吉田以外に個人的に良い立ち上がりを予感させたのが原田だった。
吉田の3フーロがすでに入った後でのイーシャンテン。
確かにでロンが入る可能性はあるが、それでもせいぜい3900と思われる牌、かつ立て続けの3フーロとなれば張っていない可能性も十分にある、何よりここから先の長い戦いを考えるとここで慎重になるよりもきっちりと勝負に行く姿勢は個人的に好感が持てるし、戦い方を十分に心得ているのが解る立ち上がりだった。
そしてそんな彼が東場は立て続けに加点を決める。
東3局2本場、まず親の真田の分岐点。
形だけで考えるならタンヤオを軸としたピンズ切りだが–が自身の目から既に多数見えている為あえてこの両面を外して他色のカンチャン・ペンチャンを残しつつそれらの重なりもみる進行。
この選択で最速の門前テンパイをうまくとらえて10巡目にリーチ。
しかしここにバラバラだった配牌をうまくチートイドラ2でまとめ上げた原田が追っかけリーチで勝負。
結果真田から8000は8600のロンアガリ。
次局東4局は真田が3巡目の速攻テンパイをリーチして一発で吉田から6400。これについてはアガリ牌のを持っての勝負手だった吉田が不運。
そして南1局では真田のリーチと他3人全員が鳴きテンパイを入れていた殴り合いの中、親の安藤の勝負打牌を原田がとらえて8000点のアガリ。これにより2着の吉田に16000の差をつけて抜け出す。
ちなみに安藤はこの失点が響きこの半荘はラスとなった。
この放銃については染め手の可能性が高かった原田は勿論、真田のリーチにも吉田の鳴きにも危険な牌であり選択が別れそうな局面だったかもしれない。
さて続く南2局、親の原田がさらにリーチでたたみかける。
打点も待ちも十分、ここでさらに点差を広げトップを盤石の物にしてさらに素点を稼ぐ選択。しかしこの選択こそがこの半荘最大のターニングポイントとなった。
これを待っていたかのように直後に真田が追っかけリーチ、そして原田の直後のツモ山にいたのは真田のアガリ牌である。これに裏も2枚でリーチ・一発・ピンフ・イーペーコー・表2・裏2枚で12000、原田にとっては痛恨、真田にとっては起死回生となるアガリが炸裂。
そして南3局、上記のアガリで微差ながらトップ目にたった真田の親リーチ、これが一発ツモと裏1で6000オールとなる。
前局でまさに原田が求めたかのような決定打、それに絶妙のカウンターを決めた真田が直後にリーチをしてそれを決めるこの展開、麻雀はつくづく1牌の後先が恐ろしいまでの上下差を生むゲームだと教えられる2局だった。
次局の南3局1本場、原田も懸命にあがく。
まず吉田が先制リーチ。
これに対して放銃してもラス落ちの可能性はまだ低い原田は以下の形からをカンしての真っ向勝負を選択。
しかし嶺上から掘り起こしたのが吉田のアガリ牌。
裏も3枚のって8000は8300を放銃という結果になった。これにより原田は吉田に差をつけられた3着に転落。
結果この半荘は真田、吉田、原田、安藤の着順で終了となった。
この半荘、やはり印象に残ったのが原田である。
筆者の中で他3人は今までいくつかの対局を見て情報もあったが、彼だけはほぼ初めてじっくり麻雀を見た。決勝という舞台にも全く動じずに最適の選択をしている局面が多々あり、彼の雀力の高さは十分に伝わった。
南2,3局では偶々大きな裏目になったが、それはあくまで結果論と言えるだろう。
他3人も良い内容を見せてくれたし、秋瀬も含めて今期も熱い戦いを見せてくれるのではと期待できる1回戦だった。ここからが楽しみだ。