第18回オータムチャンピオンシップ観戦記(5回戦)
第18回オータムチャンピオンシップ
決勝観戦記 5回戦
【担当記者:坪川義昭】
『とても楽しかったですし、良い経験になりました!』
最後のインタビューで語ってくれた平城六花。
役満をアガったところで優勝の可能性は限りなく0に近い状況で、平城は何を感じただろうか。
序盤から苦しい戦いを強いられた彼女は成す術がないまま終局を待った。
関西予選からノーシードで勝ち残った才能はこの悔しさをバネにいつか開花すると期待したい。
『悔しさはあるんですけど、ここに来れて良かったと思います』
平城と共に最終戦思うように戦えなかった現女流雀王の水崎ともみ。
最後の親番でドラを切っても切らずとも、彼女の優勝の道は残っていなかった。
そんな状況で切らずにソッと手牌を伏せて終戦を受け入れた美学は賞賛に値すると思う。
女流雀王としての戦いはまだ続くのだ。団体の看板を背負って戦い抜く姿をこれからも見続けたい。
『ウチの師匠が化け物過ぎて…』
悔しさを噛み締めながらそう語る天津みろう。
師匠である矢島の壁は高かったと感じているかもしれないが、化け物を退治できるのは彼のような才能と伸び代を持ち合わせた若手なのだ。
数年後に化け物狩りをして勝利を掴み取る姿はもう容易に想像出来るところまできている。
本日の化け物狩りは失敗。
最後の勝負局。
テンパイさえ入ればあとは捲り合いの勝負であり、アガリ牌が先にいた方の勝利。
今日一日で初めて矢島の指に力が入っていた。
待ちを変えながらゴールを見渡す。
ちょっとした技も披露しながら遂に最終局面を迎える。
今にも全方向から出そうなか、全く通っていないで捲り合うのか。
指先を震わせながら思考を巡らせる。
おそらくゴールはどちらか一つしかない。
あまりにも完成度の高い麻雀に感動すら覚える。
タイトルを獲りつくした男の勝ち方はそのビジュアルも相待って惚れ惚れする美しさだった。
最終ポイントを見てもわかるよう、4回戦のオーラスを1000点で終わらせていたら矢島の優勝はなかったかもしれない。
まさに矢島にしか成し得ない優勝である。
昨年史上初の協会四冠王達成をし、今年史上初のオータムチャンピオンシップ連覇までも達成。
師匠として若手の大きな壁となり勝ち続ける彼の最大の目標【Mリーグドラフト指名】を達成するため、次なるミッションは2度目の雀王戴冠である。
若手に影をも踏ませないために。
自身の夢を掴み取るために。
彼は歩みを止めることは無い。