第18回オータムチャンピオンシップ観戦記(4回戦)
第18回オータムチャンピオンシップ
決勝観戦記 4回戦
【担当記者:坪川義昭】
『追う方は気が楽だよ。真っ直ぐ行くだけだから。
追われる方が何倍もプレッシャーがかかるから大変なんだ』
こんな台詞を皆さんは聞いたことがあるだろうか?
タイトル戦の終盤で幾度と聞いてきた台詞。
ただ、それを感じることが出来るのはこの場に座ることが許された対局者だけであり、我々には分かり難い感情だ。
3回戦を終えて平城の優勝の目はほぼ無くなり、三つ巴の戦いが始まる。
追いかける天津がダマテンでハネマンをツモり、頭一つ抜ける格好。
天津はこの決勝、要所要所で選択が上手くハマっており、言葉では言い表しにくいが『良い雰囲気』を纏っているように見える。
オーラスまでリードを保ち迎えた親番。
このままノーテンで伏せればトップは確定するものの、まだポイントは矢島よりも下である。
順位ウマが5-15しかないこのルールにおいては順位点は気休めでしか無い。
出来る限りの点棒をかき集めて矢島を追い越したい。
終盤に矢島からリーチが入ったら安全牌が…
そんなことも脳裏をよぎるかもしれないが、追う方は真っ直ぐ行くだけ。
リンシャン牌には最高の感触が待っていた。
水崎、平城は既に役満以外のアガリは自分の寿命が縮まってしまう状況になってしまったため、矢島がアガる以外この4回戦は続く。
天津の親番は1時間を超えて尚続いていた。
トータルポイントも既に天津は矢島を上回っており、最終戦にどれだけの条件を押し付けられるかといったところ。
矢島は着順上昇が不可能なので、傷を広げる前にゲームを終わらせたい。
はず…
タンヤオ仕掛けで終わらせにかかったはずだが違和感のあるに手をかける。
次巡何を切ろうか?
ではない。
上家から出ているを見て見ぬふりをしているのだ。
トイトイを付けて5200点を目指すというよりは、そうじゃなきゃアガる気もないような手組み。
既にトータルポイントは天津に30p程上に行かれているが、のんびりし過ぎている。
『追われる方が何倍もプレッシャーがかかる』
本当なのだろうか?
構想通りトイトイのテンパイ。
アガリには結び付かなかったが、この手順を辿るプレイヤーがどれだけの数いるだろうか。
天津は手を緩めることはない。
長い長いオーラス耐え切った矢島がやっと納得の手牌を完成させる。
決着は早かった。
2人の差は13.6p。
最終戦はほぼ着順勝負となったのだが、もしもあの時諦めてゲームを終わらせに1000点をアガっていた場合は、その差は29.7p。
矢島にしか作り出せない最終戦。
我々にはまだ見ることの出来ない景色を、矢島だけが見ているような気がした。