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順位
名前
TOTAL
1回戦
2回戦
3回戦
4回戦
5回戦
1
高津 圭佑
61.7
4.0
9.1
53.8
6.2
-11.4
2
澤崎 彰太郎
32.7
87.6
-41.3
-43.9
-21.4
51.7
3
鈴木 健太
5.6
-66.4
52.0
11.7
59.3
-51.0
4
松岡 克己
-100.0
-25.2
-19.8
-21.6
-44.1
10.7

≪決勝観戦記≫

1.プロ歴5年未満
2.Aリーグ未経験者
3.規定タイトル未獲得
上記3つが新人王戦の参加資格となる。
筆者が女流雀王を取ることは様々な過程を経ることで実現することが出来るかもしれないが、
このタイトルだけは人生をやり直さない限り獲得不可能なのである。
それ故、協会タイトルグランドスラム(※)を達成する上である意味最難関のタイトルでもある。
※雀王・雀竜位・オータムCS・新人王の4タイトルのこと

過去には現Aリーガーの阿賀寿直、伊達直樹、小川裕之や元雀王・雀竜位の小倉孝、元女流雀王の朝倉ゆかりなどが獲得しており、トッププレイヤーへの足掛かりとしている。(もっとも小倉に関しては新人王戴冠の時点ですでに雀竜位を2連覇しており、むしろそのせいで前述の参加資格の3が追加されたという噂もあるのだが・・・)

とにもかくにも、これからプレイヤーとして活躍していくためには何としてもつけておきたい箔の一つである。

【出場選手紹介】
準決勝A卓1位通過:松岡 克己
15期前期入会・D1リーグ所属
入会2か月という正真正銘の新人選手。
しかし入会後すぐに『日刊スポーツ杯 スリアロチャンピオンシップ』というタイトル戦での優勝経験があり、そこで放送対局も経験済みである。
加えてリーグ戦での好調な出だし、さらにこの決勝進出と本人も自覚しているように順風満帆なスタートを切っている。

準決勝A卓2位通過:高津 圭佑
13期前期入会・C1リーグ所属
ネット麻雀をかなり打ち込んでいる、所謂現代っ子的な選手である。
現雀王木原浩一のブログマガジン会員であり、その影響を受けているであろう対応も見受けられる。
決勝や放送対局の経験こそないものの、控え室での雰囲気やインタビューでの受け答えを聞く限り緊張の色は見られない。

準決勝B卓1位通過:鈴木 健太
12期後期入会・B2リーグ所属
当協会何人目かの『鈴木』であり、リーグ戦ではストレート昇級中とその名に相応しい成績を残している。
矢島亨主催の勉強会『やじ研』の主要メンバーであり、協会ルールにおいては一日の長がある。
本命を上げるとするならば、この鈴木を推す者は少なくないであろう。

準決勝B卓2位通過:澤崎 彰太郎
13期前期入会・C2リーグ所属
期間限定・シード枠の存在しない本タイトル戦において2年連続の決勝進出は第4期新人王の伊達直樹(3年連続)以来である。
高津と同じくネット麻雀に精通しており、鳴きを多様するスタイル。
当然前回の経験が有利に働くであろうことは間違いない。
この決勝にかける意気込みに4者の間で差があるとは思わないが、それでも澤崎に関しては周りも意識せざるを得ない。

★1回戦★(松岡→澤崎→高津→鈴木)
開口一番のアガリは高津。

タンヤオのみのテンパイから三色へ変化すると、カンチャン5200はダマと教科書通りの対応で松岡から出アガリ。

次局も松岡のリーチを受けたところでタンピンのテンパイすると、リーチの現物ということで慎重にダマを選択。
これを親の澤崎から捉え2000+リーチ棒の収入。
迎えた親番でも7700を鈴木から直撃し、早くも4万点を越え幸先の良いスタートを切る。
高津の半荘になるかと思えたが、ここから澤崎が怒涛の和了ショーを見せる。

東3局1本場
 ロン ポン ドラ

東4局
 ロン ドラ 裏ドラ

南1局
 ツモ ドラ 裏ドラ

南2局
 ツモ ドラ 裏ドラ

南2局1本場
 ツモ ドラ 裏ドラ

南2局2本場
 ツモ ドラ

南2局3本場
 ツモ ドラ 裏ドラ

なんと7局連続のアガリで持ち点は76600点まで膨れ上がる。
しかもそのアガリの多くがツモのため高津は原点まで、松岡と鈴木に至っては箱下まで点棒を削られていた。
澤崎がどこまでポイントを伸ばせるかに焦点が絞られたが、意外な形で結末を迎える。

松岡のリーチを受けたところで澤崎は下記の手牌。
澤崎(東家)
 ツモ ドラ

現物も無いため自然と押し出される形でを切ると松岡からロンの声。

松岡(北家)
 ロン(一発) ドラ 裏ドラ
特段変わりのない一局に思えるが、なんとこれが1巡目の出来事である。
ダブリー・一発・ドラ2・裏1の12000は13200と局消化にしては手痛いダメージ。
ここまで参加出来ずにいた松岡にとってはとてつもなく大きなアガリとなった。

とはいえセーフティーリードを保てている澤崎、残す2局を危なげなくかわしトップをキープ。
そのままの着順で1回戦を終える。

1回戦結果
澤崎+87.6
高津+4.0
松岡△25.2
鈴木△66.4

 

★2回戦★(松岡→鈴木→澤崎→高津)

5回戦という短期決戦において、優勝するために満たすべき条件がある。
・トップを2回取ること
・ラスを2回引かないこと
単純に思えるが、事実過去の新人王戦において上記を満たさずに優勝した選手はいない。
同じシステムの日本オープンを含めてると、第7回の山下健治さん(RMU)と第13回の矢島亨が例外となるが、
山下さんにおいてはトップ1回でラスなし、矢島においてはラスラススタートの後に3連勝という奇跡に近い条件を満たしている。

つまりは鈴木は絶対にラスを引けず、澤崎のトップは優勝へ王手をかける一手となる。

もちろんそんなことを一番理解しているのは鈴木本人である。
この2回戦、すぐに訪れたチャンスに熟考を重ねる。

ドラがの勝負手だが、すでに高津からリーチを受けている。
1枚切れのを切るのがオーソドックスであり攻守兼用の手筋であろうか。
しかし鈴木は高津の河のという切り出しを見てをツモ切り。
良形を固定し、攻める上でロスの少ないもっとも攻撃的な選択と言える。

を引きイーシャンテンになるとメンゼン進行に決める打
と危険牌を押し切ると15巡目にツモでテンパイ。
この時点で自分の目から--は8枚見えていたがリーチを決行。
その心意気に答えるかのように、鈴木の指先に待ち望んだ感触が訪れた。

鈴木(南家)
 ツモ(一発) ドラ 裏ドラ

南4局1本場
高津30500 松岡22000 澤崎19500 鈴木26000 供託:2.0

かなりの接戦となっており、現状トップ目の高津は流局時に伏せれる点差になっているものの、
ラス目の澤崎のマンガン出アガリでもトップを捲られてしまう。
簡単に降りることも出来ないが、放銃はかなりのパターンで2着順落ちまでありえる難しい局面である。
対して他の3者、特に1回戦でマイナスを背負った松岡と鈴木の進行はわかりやすい。

先に動いたのは高津。

高津(東家)
 ドラ
この形から6巡目に切られた2枚目のをポンして打と積極的な仕掛けで戦線に切り込む。
しかし最初にテンパイを入れたのは松岡。

松岡(南家)
 ツモ ドラ
これ以上ない牌を引いてのリーチ。
そのモーションからも条件を満たしていそうなリーチなのが伝わってくる。
しかし相手が誰であろうと関係ないのは鈴木、こちらもすぐに追いつく。

鈴木(西家)
 ツモ ドラ

なんと両者とも-の同じ待ちという激熱な展開。しかも10巡目の時点で山にはまだ4枚も残っている。
高津は流局を、澤崎は横移動を願いながら完全撤退。

『勝利の女神が微笑むのはどちらか?』という使い古されたフレーズを使わざるを得ない場面。
打つ者観る者全てが手に汗を握ったこの勝負の勝者は・・・

競り勝ったのは鈴木。
このトップで1回戦の大な負債を帳消しとまではいかなかったが澤崎にラスを引かせたことも含め最高の結果と言えるだろう。

2回戦結果(トータル)
鈴木+52.0(△14.4)
高津+9.1(+13.1)
松岡△19.8(△45.0)
澤崎△41.3(+46.3)

 

★3回戦★(澤崎→高津→松岡→鈴木)

1回戦に大きなトップをとった澤崎だが、2回戦では為すすべなくラス。
この3回戦もアガリのないまま南場の親も流され連続ラスが濃厚な展開に。

南2局2本場
高津29600 松岡25900 鈴木31900 澤崎12600

ここに来て全員の手がぶつかる。

松岡(南家)
 ドラ

ドラドラということでのポンからスタート。
続いて澤崎もをチーしホンイツヘ。

澤崎(北家)
 チー ドラ

しかし先手を取ったのは鈴木。

鈴木(西家)
 ツモ ドラ

リーチピンフドラ1の充分手でぶつける。
前巡を暗刻にしていた澤崎もこのをチーしテンパイ。

澤崎(北家)
 チー チー ドラ

しかしその実、この局はほぼほぼ澤崎のアガリが約束されていたのである。

高津(東家)
 ツモ ドラ
リーチの前巡にここから当然の切りでイーシャンテンに受けていた高津。
はポンされておらず、リーチの鈴木の河も澤崎の河もかなり強いために手をかけざるを得ない。
誰もが澤崎のアガリと高津の放銃を確信していたが、この局はなんと鈴木のツモアガリで幕を下ろす。

鈴木(西家)
 ツモ ドラ 裏ドラ

ターニングポイントは松岡の2つ目のポンの一声である。
澤崎のテンパイ打牌であるをポンしたことによって高津のツモ番を飛ばすことになった。
そしてすぐに鈴木のツモアガリとなり、高津にツモ番が回ってくることがなかったのだ。
ツモ山に手を伸ばすことが放銃と同意義であった高津、奇跡の放銃回避である。

一方、思わぬ形でアガリ損ねた澤崎だったが次局に満貫をツモアガり、まだラス目ながらも混戦へと持ち込む。

南4局
鈴木35700 澤崎19100 高津24800 松岡20400

高津(西家)
 ドラ
トップまで満貫ツモが必要な状況な高津の配牌である。

澤崎がラス目なことと下との点差が近いため2着キープが濃厚かに思えたが、すぐに高津の目指すものが明確になる。
をポンした後、すぐに切られたをスルー。
を引くとその流れでのトイツ落としを始めた。
上家の澤崎はラス目のため、露骨な染め手に対しても簡単には手を曲げられない。
その関係をうまく利用し、も鳴くことが出来たがそれでもまだリャンシャンテン。

高津(西家)
 ポン チー ポン ドラ

しかしすぐにを引くともチーでテンパイ。

高津(西家)
 チー ポン チー ポン ドラ

裸単騎を放送対局で見れるなんて・・・そんな感傷に浸っている間もなく、を切った澤崎がしっかりと条件を満たす手を作りあげリーチ。

澤崎(南家)
 ドラ

もし高津が優勝することがあれば、間違いなくこの局が第一に取り上げられるだろう。
そして高津にとって一生忘れられないアガリになることも間違いない。
この時点では絵に描いた餅ではあるが、一先ずそのアルバムに最終形を描いておくことにしよう。

3回戦結果(トータル)
高津+53.8(+66.9)
鈴木+11.7(△2.7)
松岡△21.6(△66.6)
澤崎△43.9(+2.4)

 

★4回戦★(澤崎→高津→松岡→鈴木)

先ほどのトップラスで一気に形勢逆転、ここからは高津がターゲットとなる。
この4回戦で高津がトップを取ればほぼゲームセット。
松岡に至っては自身がトップを取った上で並びを作らなければ白旗の準備をしなければならない。

4者それぞれの思惑がある中、その内の3者の思惑を打ち砕くアガリが早くも発生する。

高津(東家)
 ツモ ドラ

このアガリで当然トップ目に。
続く1本場も淀みない手順で先制リーチ。
いよいよ優勝へのカウントダウンかと思われたが、この局の主役は鈴木であった。

鈴木(西家)
 ツモ ドラ
2巡目のこの牌姿から鈴木はのトイツ落としを選択。
ここから内に寄せていく手順を踏むと、高津のリーチと同巡にタンヤオのテンパイ。
ピンフと高めイーペーコーが付くを引くと追いかけリーチ。すると高めと裏ドラでハネマンのツモアガリとなった。

鈴木(西家)
 ツモ ドラ 裏ドラ
子方でしっかりと打点を作ってくる鈴木の、競技麻雀の参考書に掲載すべきような手順でのアガリでトップ目へ浮上。
しかし高津も細かいアガリでその差を詰めていく。

南3局
松岡7200 鈴木38000 澤崎18600 高津36200

リターンが大きければ大きいほど、人はそれに見合ったリスクを追うことになるのが世の常。
この半荘のトップ=ほぼ優勝となっている高津にとって、どの程度のリスクをこのラス前で負うことが正着であろうか?
高津自身が選んだこの局の進行は以下の通り。

高津(北家)
 ドラ
この形から6巡目に急所のをチー、さらに次巡のもチーでテンパイ。
とは言ってもドラであるでしかアガれない形だ。

高津(北家)
 チー チー ドラ

手の中が危険牌だけになりやすい喰いタンは、そもそもリスクとリターンの線引きが難しい。
その上出アガリが絶望的なこの形は果たして見合っているのだろうか?
そんな疑問を抱く者をより迷宮入りさせるかのように、高津がさらなる動きを見せる。

高津(北家)
 ポン チー チー ドラ
しかもこのは親の松岡から切られたものである。
アガリ易さは先ほどと比べれば上がってはいるだろうが、如何せん守備力の方は絶望的。
「はがねのつるぎ」に「ぬののふく」のような装備で戦いを挑んでいるような感覚だ。
それでも今日の高津なら・・・と思わせるもすぐにテンパイを入れた松岡のリーチに一発で放銃となり12000を献上。
ここは積極的な選択が裏目に出る形となったが、この結果も受け入れる覚悟があってこその仕掛けだろう。

この放銃で楽になったのは鈴木。
悠々リードを保ちながら終局を迎えた。

4回戦結果(トータル)
高津+6.2(+73.1)
鈴木+59.3(+56.6)
澤崎△21.4(△19.0)
松岡△44.1(△110.7)

 

★5回戦★(鈴木→松岡→澤崎→高津)

高津と鈴木はトップを取れば優勝、澤崎は二人を捲らなければならないので並びもかなり重要である。
松岡は理論上の条件はあるものの、現実的には厳しいところ。

しかし松岡が早々に諦めてしまえばこの決勝自体の完成度は下がってしまう。
松岡もそのことは重々承知、しっかりと参加の意思を表明する。

松岡(南家)
 ツモ(一発) ドラ 裏ドラ

それでも開きすぎた点差を埋めるには少し遅すぎた。
奇跡にかけるための切りがこの新人王戦決勝で魅せた最後の意地であった。

一方、松岡の加点を良しとするのは澤崎。
優勝条件が1人厳しい松岡の場合、局が進むにつれ参加する局が限られてくる。
そしてそのまま空気のようにラスを受け入れることも少なくない。
逆もまた然り、攻める機会が平素より少なくなることからツモや流局時以外での失点がかなり少なくなる。
つまり松岡がある程度点棒を持ったまま局を進行してくれる可能性が出てきたことは、
並びが必要な澤崎にとっては自身のハネマンツモなどよりも嬉しい展開なのである。

東2局の松岡の親番で5200を直撃し並びを壊しかけてしまうも、
高津・鈴木に手が入らないことに加え東ラスの高津の親でも松岡が2000・4000をツモ。
これにより澤崎はこの並びのまま松岡を捲れば条件を満たすことが可能となった。

一方、東パツにいきなりハネマンの親被りでのスタートとなった鈴木は東場の間はまったく手が入らず、テンパイすらままならない状態が続く。
しかし南場の親で高津からの直撃に成功すると、一先ず高津より上に行き暫定優勝ラインへ。

南1局1本場
鈴木19900 松岡37500 澤崎26200 高津16400

一方、鈴木・澤崎両名に条件を満たされんとしているのは高津。
さらに澤崎から本手のリーチが襲いかかる。

澤崎(西家)
 ドラ

しかし勝負手をもらっていたのは澤崎だけではなかった。

高津(北家)
 ツモ ドラ

文句なしの最終形で同巡に追いかけリーチ。
この時点で澤崎の待ちは山に2枚、高津の待ちは4枚とかなり高津に分がある。
しかし麻雀が毎回山に多く残っている方がアガれるようなゲームであれば、ここまで熱い戦いを演出することは不可能であろう。

これでいよいよ優勝の行方がわからなくなってきた。
鈴木は親番こそないものの現状トータル首位ではある。
澤崎は並びが良く、この並びのままだと単独トップになった瞬間に鈴木を捲る。
高津はラス親という最大の特権があったが、このまま進行すれば2人がアガリ優勝のような条件でオーラスを迎えるため想像以上に芳しくない状況に置かれている。

南2局
松岡36500 澤崎36500 高津7100 鈴木19900

最初に動いたのは澤崎。
行くしかない松岡の下家という特権を生かしピンズの染め手へ走ると、7巡目にイーシャンテンとなる。

澤崎(南家)
 ポン チー ドラ
ドラ色の染め手なので他家に与えるイメージも強烈である。
この手に対抗できる手牌を授かったのは、またも高津であった。

高津(西家)
 ツモ ドラ
ドラドラのテンパイだがはすでに4枚見えており、見た目枚数だけでもドラのが2枚残るだけ。
だがその2枚に賭ける価値のある手牌、そして今まで常に勝負してきた高津がここで引くとは思えなかった。
そして予想通りリーチと舞台に上がる。
ただ一つ、そのリーチ宣言牌は筆者の予想を裏切っていた。

確かには1枚も顔を見せておらず、単純枚数ではシャンポン待ちより勝る。
しかしこの場でドラを切ったことによって起こりうるリスクを受け入れられる打ち手が何人いるだろうか?
ましてや初めての決勝の場、優勝の行方を占う大事な局面、そして放送対局なのである。

最初のリスクである放銃抽選、そしてポンの発声もない。
まずは第一関門を突破、後は誰よりも早くアガリ抽選を受けるだけである。

そして4巡後、待望の感触が指先に伝わる。
だがそれは凡庸な選択をしたものだけが味わえた感触であり、高津にとっては絶望に近いの感触であった。
実はリーチの時点では2枚とも山にいたため、と残り枚数は同じであった。

なんとも皮肉で残酷な結末であろうか。
しかし、これすらもゲームを盛り上げるための演出であったことをすぐに目の当たりにする。

裏ドラは乗らずに1000・2000となったが、打点以上に印象度の高いアガリ。
このアガリこそ高津の麻雀を表すものに思えた。

しかしこのアガリで澤崎が単独トップになり、その澤崎が親番を迎える。

南3局
澤崎35500 高津11100 鈴木18900 松岡34500

ラス前を迎え全員の手が停滞する。
しかし終盤に差し掛かると、一気に局面が色めきだつ。

5回戦冒頭で記した松岡ののアシストにより、16巡目ながら澤崎にテンパイが入る。

澤崎(東家)
 ポン ドラ

連荘濃厚に思えた17巡目、高津にもテンパイが入る。

高津(南家)
 ドラ

ツモ番は残り1回だがリーチと勝負に出る。
さらに同巡鈴木もテンパイを入れる。

鈴木(西家)
 ドラ

鳴きが入っているため鈴木にハイテイが回るためこちらもツモ番は1回残る。
しかし高津に高い手を放銃した時にはオーラスの条件がかなり厳しくなるため、冷静にダマテンを選択。
最後のツモで澤崎・高津両者に無スジの牌を掴みテンパイを崩した。

さて澤崎の最後のツモはというと、高津の現物である
当然のツモ切りでこちらはテンパイを維持。
高津のツモはで何事もなく流局となる。

誰もが南3局1本場になることを想定していたが、現実は南4局1本場・・・つまりオーラスを迎えることになっていた。

そう、澤崎はノーテンを選択したのである。
実は最終手番でのを切る際、澤崎は今日一番の長考を挟んでいた。
その間に今後の判断を模索していたのである。
そして澤崎の下した決断は、高津からドラのが出た場合だけアガり、後は伏せてオーラス1局勝負に持ち込むことだった。

澤崎は連荘することで当然現状より有利な展開に持っていくことも可能だ。
しかし連荘によって起こり得る不利益も当然ある。
高津・鈴木のアガリ、特に高津のツモアガリなどで鈴木を捲ることがあると一気に条件が厳しくなる。
さらに並びを変えないためにも鈴木からの出アガリに制限がかかるため、その状況を逆手に取り積極的に攻め返されることも予想される。

自らが熟考し、導き出した結論。
後はこの選択を『英断』と称されるための結果を出すだけだが・・・

南4局1本場 供託1.0
高津13100 鈴木17900 松岡33500 澤崎34500

長かった戦いもついにオーラス。
澤崎・鈴木はアガれば優勝、ただし澤崎は鈴木から5200〜8000まではアガれない。
親の高津は連荘あるのみ。
おそらく今までの麻雀人生で一番アガらせてくれと願った局であろう。
そんな3者の配牌に、明確な差が現れた。

高津(東家)
 ドラ

鈴木(南家)
 ドラ

澤崎(北家)
 ドラ

高津の先制が約束されたような手牌の差である。
澤崎・鈴木も門前では間に合わないことを察し、必死でアガリに向かうも当然のように高津からリーチが入る。

高津(東家)
 ドラ

鈴木のテンパイ打牌のを捉え5800は6100。
あそこからテンパイを入れた鈴木も流石であったが、これで高津は次局伏せられるため俄然有利に。
そして次局の5巡目4面張リーチからの2600は2800オールのツモアガリで勝負あり。

5回戦結果
澤崎+51.7
松岡+10.7
高津△11.4
鈴木△51.0

最終結果
高津+61.7
澤崎+32.7
鈴木+5.6
松岡△100.0

第4位:松岡 克己
一人マイナスを背負い、一度も優勝戦線に食い込むことなくこの決勝を終えた。間違いなく一番展開に苦しんだ選手であろう。
そんな松岡は表彰のインタビューで開口一番、
『今日はツイてなかったです』
と答えた。
これは裏返せば「ツイていたら勝てた」という対局者へのリスペクトに欠ける発言であり、今後プロの看板を背負っていくのであれば、そんなことは絶対に自分の口から発するべきではない。この決勝を観ていただいた方ならば、松岡がツイていなかったであろうことはわかっている。
それでも疑問手がなかったわけではなく、その積み重ねが今回の結果に繋がっているところもあった。
また、所作においても他の3者に比べ雑な部分が多く見られた。
周囲からその実力を認められており、すでに結果も残している松岡だからこそ、勝つこと以上に大切なことが競技の世界にはあることを知ってもらいたいと思い、ここに記させてもらう。

第3位:鈴木 健太
箱ラススタートからオーラスアガリ勝負まで持っていったことは、紛れもなく鈴木の実力である。
この決勝でも後手に回る局面が多くあったが、持ち前の押し引きバランスを駆使し抜群の安定感と攻撃力を見せてくれた。
しかし後半、いよいよ優勝の文字がちらつき始めたところから打牌のリズムが悪くなっていくのが目についた。
テンポの悪い打牌は他家にやる気や速度感などの情報を必要以上に与えてしまい、時には致命的なキズとなってしまう。
今の慎重さに後少しの大胆さが加わったとき、さらに進化した鈴木を見れると確信している。

第2位:澤崎 彰太郎
2年連続の準優勝となった澤崎。今年も仕掛けの多さは健在で、前年に比べ打点力も付いてきたように思えた。
1回戦に大きすぎるリードを得たがために、周囲からのマークに苦戦することが多くあった。
しかし、そのマークをうまく利用出来なかったことが結果的にジリ貧の展開を生んでしまったことも事実。
普段から仕掛けが多いため、当然リーチが少なくなる。
トータルトップ目のリーチが脅威となるこの特別な場においては、攻め方にバリエーションを付けることも大事である。
また、過去の観戦記(第10回オータムCS決勝観戦記)でも書いたように、短期決戦の決勝にはやはり『優勝を決めるアガリ』というものが存在すると考えている。
もし澤崎がそのアガリを決めるチャンスがあったとするならば、それは5回戦の幻の南3局1本場にあったのではないかと思ってしまうのは、深読みしすぎだろうか。

優勝:高津 圭佑
トップ1回での優勝で、着順は「2着・2着・1着・2着・3着」と抜群の安定感を誇った。
では内容はどうだったかというと、決して安定感のあるものではなかったと思う。
その印象は、高津が終始攻めの姿勢を貫いていたことによるものであろう。
そしてその結果、多くのアガリはもちろんのこと、より多くの放銃を体験している。
比較的守備型が多い面子が集まった中、満貫以上を放銃したのは澤崎から松岡へのダブリー放銃を除けば高津だけなのである。
しかしそれは決して悪いことではなく、むしろ決勝で勝ち切るためにはある種必要不可欠な要素である。
奇しくも高津の先生である木原現雀王が以前に『ブレ幅MAX打法』というものをブログにまとめていた。
高津がこの記事を読んでいたのかは敢えて本人に問いただすことはなかったが、
まさに規定回数の中で1番を目指す打ち方というものを徹底していたように感じた。

第15期新人王優勝・高津 圭佑。
観るもの多くを魅了し、興奮へと誘った正真正銘本日の主役である。

(文・橘 哲也)

≫準決勝までのスコアはこちら

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