第20期雀竜位決定戦観戦記 2日目(7回戦)
第20期雀竜位決定戦観戦記
2日目 7回戦
【担当記者:中島由矩】
7回戦(秋山-富永-下石-吉田 ※抜け番:小池)
麻雀の半荘戦は、南4局が終わった時点で1番たくさん点数を持っていた者が勝ちというゲームだ。
ではどうやったら点数が高くなるかというと、手役を作ったりドラをたくさん集めたりしてアガるといい。
赤牌が入っているMリーグとは異なり、赤牌が入っていないこの雀竜位決定戦ではドラの重要度が特に高くなっている。
ドラは1つでもあったら嬉しいものだが、2つあったら千載一遇の大チャンスと言えよう。
この7回戦では、4者にドラドラの手が入った時の結末が着順に直結したので、【ドラドラ】をキーワードにして振り返っていこう。
【吉田のドラドラ】
この7回戦で吉田にドラドラの手が入ったのは3回。。
最初は、東3局のことだった。
南家の吉田は3巡目に役牌のをトイツにする。
ドラドラの時は、役牌や自風牌のトイツ・暗刻が頼もしく感じる。おそらくこの時の吉田もそういう心境だったことだろう。
しかし、「好事魔多し」とはこのことで、この時西家の秋山は役満・国士無双のイーシャンテンまで来ていた。
大願成就に向けての必要牌はとで、それはすなわち吉田が欲しているをすでに内蔵していることを示す。
秋山のツモ次第では、下石のさえも32000の放銃になりかねない状況だったが、ここは吉田が絶好のカンを引き入れに頼ることなく門前で–待ちのリーチ。
2巡後、親の下石も追いついた。789の三色にはならなかったものの、–待ちのピンフリーチをぶつけていく。
国士無双模様の秋山は、2軒リーチにはさまれて無筋をつかみ、あえなく降りることになってしまった。
このマンズ対決は、ドラドラの吉田が制す。をツモり、リーチ・ツモ・ドラドラ・裏ドラの2000/4000が決まった。
次は、南2局。
前巡までカン受けとして残しておいたドラのだったが、孤立牌のにがくっついてリャンメン・リャンメンのイーシャンテンになると、絶妙のタイミングでリリースし、のチーも駆使して500/1000をアガり切った。
ドラドラに固執せず、時には1枚河に流してでもかわし手を仕上げる。
ツモ チー ドラ
最後は、南4局。
トータルポイントを見ると、吉田自身が▲47.0なのでぜひともトップがほしいところであり、+48.8の秋山にやすやすと本日2勝目をプレゼントするわけにもいかない。
打点がほしいのは山々だが、吉田はこのドラをツモ切った。
残念ながらアガりには結びつかなかったものの、やが暗刻になる可能性と心中するよりも、ツモはもちろんのこと、ツモにも対応できるようにし、同時に他家に対して将来危険牌になりうるドラを先に逃がした吉田の大局観が光った場面だった。
実際この局の和了者である下石は、この吉田の打からわずか3巡後に、–待ちで富永の打を召し取っている。
【富永のドラドラ】
富永にドラドラの手が入ったのは、南1局1本場のことだった。
ドラドラの他には、役牌のがトイツで入っており、
◆發・ドラドラ
◆發・ドラ3
◆發・ホンイツ・ドラドラ
◆發・トイトイ・ドラドラ
◆發・ホンイツ・トイトイ・ドラドラ
など、高打点ルートが複数見える。
ねらい通りが鳴けた富永だが、そこに飛んできた秋山の親リーチが強烈だった。
ツモ ドラ
––の変則三面張で、高めのなら三色がついて12000からという本手。
しかし富永はあきらめないで、懸命に自らのアガりを見る。まずを暗刻にしてトイトイ含みのイーシャンテンに取ると、
秋山への当たり牌に、同じく当たり牌のをくっつけてリャンメンテンパイ。
この5200が決まれば富永は7回戦のトップをグッと手繰り寄せられるはずだった。しかし・・・
最後の最後、山に眠っていたのは秋山の高めであるだった。
イーシャンテンでツモの代わりにツモと来ていれば、あるいは撤退の道もあったかもしれないが、リャンメンテンパイからはそういうわけにもいかず。
果たして、富永はを河に置いてしまった。
ドラドラは諸刃の剣だ。ひとたび振り上げれば、相手のみならずこうやって自分を傷つけることもある。
秋山にとってはトップ目に躍り出る歓喜の、そして富永にとってはラス目に追いやられる痛恨の、大きな大きな12000は12300だった。
【秋山のドラドラ】
秋山のドラドラは南3局のことだった。
点棒状況としては、西家の秋山は45800点持ちのトップ目で2着目の吉田とは5100点差。
ただ、その吉田は南4局に親番を残しているので、秋山としても本日連勝のために少しでも加点しておきたいところ。
ドラ
ピンズが少し複雑な形になっているところ、秋山は3巡前に打として–、–の受け入れを残して進行していた。
上家の吉田がポンに続いてカンチーでテンパイ気配が濃厚、秋山はすかさずスピードを合わせるようにチーテンを取って–待ちに構えた。
この2者に対し、親の下石も応戦。
リャンメン・カンチャンのイーシャンテンから、先にリャンメンが埋まるツモにはやや不満だが、理想は先に仕掛けている吉田・秋山を降ろしつつ、ゆっくりとツモアガりたい。ノータイムでリーチ宣言をした。
すでにテンパイを入れている吉田・秋山としては、押し引きが難しいところ。
のトイツ落としで迂回する吉田に対して、秋山はなんとかテンパイをキープしていたものの待ち牌の–ではなくドラをつかんで悶絶。
下石の河には5巡目にがあるだけで、ソーズに関して残りの情報は皆無。視聴者目線でもこのドラは当たり牌だ。
ここで秋山は歯を食いしばって打とし、テンパイをキープしたまま放銃を回避した。
この局は下石・秋山の2軒テンパイとなり、秋山はアガりにこそならなかったものの親の下石に放銃することなく2着目吉田との点差を広げることに成功した。
【下石のドラドラ】
下石のドラドラは、先ほどの秋山のドラドラに続く南3局1本場のことだった。
前局ドラのカン待ちでリーチをかけたものの、秋山との2軒テンパイに終わった下石は、2巡目にドラのをトイツにする。
はオタ風なので、ここは役牌のや、場風のの重なり、5枚あるピンズのホンイツ、暗刻、トイツを生かしたトイトイなどを視野に入れ手広く進めたい。
下石がピンズとのトイツを温存しつつ、打、打と1枚ずつ切れた牌を丁寧に処理していく間に、吉田がのポンから動き出した。これはいわゆるポンテンという形で、
ポン ドラ
打点こそないものの、供託1本に1本場の300点も加算し、オーラスで秋山をまくるための下準備を進める。
秋山も–のピンフテンパイを入れ、自らがアガっての局消化を目論むが、
ドラ
最後は吉田が秋山の打をとらえて決着。
吉田としては最高の形、秋山としては1番放銃したくないところに打ってしまった格好だ。
オーラスは2着目-3着目-4着目の3者が縦長の展開となり、下石がピンフドラ1の2000点を富永からアガって終局となった。
1日目を▲10.0の最下位で終えた秋山が、6回戦に続きこの7回戦も快勝し、「雀竜位に手がかかった」とまでは言い切れないものの、差し当たって2日目での脱落を心配しなくてよさそうな状況にはなってきた。
一方で、1日目を+11.2の首位で終えた現雀竜の富永はこの7回戦のラスでトータルでも5位となり、これは徳俵に足がかかったと言ってもいいかもしれない。
8回戦の抜け番で心身ともにリフレッシュし、9回戦・10回戦での巻き返しに期待したい。