第21期新人王戦決勝観戦記(5回戦)
第21期新人王戦決勝観戦記
5回戦
【担当記者:五十嵐 毅】
同点トップからの3連勝で、+102.7と一人浮きとなった夏目。
マイナスが一番小さい姫川でさえ、優勝条件は31800差のトップラスという難題である。
以下、新林は51100差のトップラス、はじめは89200差のトップラスかつ姫川が2着の場合は17500差を付けなければいけないという超難関である。
5回戦(姫川-はじめ-新林-夏目)
姫川は西家スタートが欲しかっただろう。
親番はなるべく後のほうが可能性が残り、一騎打ちの時間が長くなる。起親ではいち早く親番が終わってしまう。
東1局、親の姫川が9巡目にリーチ。
ドラ
打点は十分。しかもペンチャンながら3枚も残っていたが、すでに役牌2つを仕掛けていた夏目が同巡にツモアガリ。
放銃の恐怖に晒される間もなくノーバウンドでリーチ棒を拾い上げた。
東2局、はじめが連荘で粘るも流局・流局・1000オールと打点は伸びない。
3本場、新林が好プレー。
ドラ
ここにを重ねてテンパイしてヤミテン。
テンパイ打牌をポンしたのは西家・夏目。
ドラ
テンパイで出ていったのは。
6400の放銃。これで夏目がラス目になった。
いい感じで親を迎えた新林だったが、もらった配牌は苦しい。そのため早々と仕掛けたが無為に終わる。
東4局、テンパイ一番乗りははじめ。
ドラ
このままの形でアガる気はない。
もうひとつアンコが増えたら四暗刻狙い、ドラのを引いたらドラタンキリーチ。
しかしどちらに変化することもなく、そのをトイツにした姫川からリーチが入る。
ドラ
すぐに新林が追っ掛け。
ドラ
ともに1枚残りの勝負だったが、新林がを掴んで5200放銃。
南1局、夏目にとって一番怖い姫川の親。
夏目は3巡目にをトイツにし、かつリャンメンばかりの好形リャンシャンテン。対して、姫川の手は重い。
夏目、8巡目にをアンコにしてテンパイ。もちろんヤミ。
ドラ
これに姫川がで放銃。
このアガリを見て、解説席の私(五十嵐)は思った。「これで決まりだな。このまま波乱もなく夏目の優勝だ」と。
しかし、そう簡単には終わらなかったのである。
南2局、はじめはテンパイ連荘で2本積むも、次局はイーシャンテン止まり。はじめはここで実質終戦。
南3局3本場、姫川が6巡目にリーチ。
ドラ
後がない親の新林がをポンして応戦。
テンパイを入れ、もツモ切るが、姫川はアガらない。
見逃した直後に見事をツモッた。
この結果、オーラスを迎えて、
姫川 34300
はじめ 31600
夏目 17500
新林 16600
夏目はまだ3着だが親被りすればラスになるため、姫川にハネツモ・満貫直撃という現実的な条件が残った。
注目の配牌、親の夏目は微妙。
ドラ
もっと悪ければ、流局終戦一直線に行けるが、アガリに賭けてハネツモ圏外に逃げるのも悪くない。
第一打は取りあえず。
しかし2巡目以降は中張牌に手を掛け、流局を策す。
姫川の配牌は悪くはなかったが、ハネ満が遠い。
ドラ
345か456の三色あるいはピンズのメンホンか?
しかしどちらにも向かえずに中盤過ぎにテンパイ。
ドラ
こののちまわりを引けば作り直すこともできたが、それもできずに巡目だけが進む。
結局13巡目にリーチに踏み切ったが、このままではが裏ドラになっても足りない。
残り2巡を残しての16巡目リーチで一発ツモ、またはハイテイとするべきだったと思う。
波乱が起きることなく流局。
4位、新林淳三。関西勢の応援を受けて、1回戦の怒涛の連荘、大トップは素晴らしかったが、なぜか2回戦以降は尻すぼみで終わった。
しかし麻雀を覚えてからもまだ5年とのこと、先が頼もしい。
3位、はじめ。師匠と仰ぐ矢島亨譲りで局ごとの狙いが明確で判断が早かった。
残念ながら結果がついてこなかったが、次の機会が楽しみである。
2位、姫川ちより。最終戦、大事な親番2回をあっさりと流され、成す術なしと思われながらもラス前の見逃しからのツモアガリは視聴者も興奮しただろう。
今対局を最大限に盛り上げてくれた功労者である。
「リーチかかった後は姫川さんのツモ番のたびに目を瞑って祈ってました」
終わった瞬間にそう語っていた夏目ひかり。
会社勤めをしながら東南戦を月百本以上を打つという練習量十分な麻雀LOVEがもたらした結果だと思う。優勝おめでとうございます。