第23期新人王戦決勝観戦記(4回戦)
【担当記者:五十嵐毅】
座順・新地―津坂―安藤―當眞
南4局、新地は迷いに迷っていた。
3回戦までの合計は次の通り。
當眞+101.1
安藤 +16.0
津坂 △13.8
新地△103.3
この回のトップは東2局1本場に、
ドラ
この手をリーチして、高目のドラをツモり、裏ドラもを乗せて倍満をアガっていた安藤。
オーラス時点での持ち点はこう。
安藤34800
新地23800
津坂24800
當眞16600
首位を行く當眞がラスなのは好材料。しかし、トップ目の安藤とは11000点差なので満貫ツモ不可。捲るには安藤からの6400以上直撃、ハネマンならばどこからでもOK。
ここでもらった配牌がどうしようもない手。
打点が必要なので、もしやの国士か、色の偏ったツモを期待しての一色手か。とりあえず字牌を残して中張牌からの切り出し。
それが、ソーズの金脈を掘り当て、13巡目になんと、この手になった。
テンパイ取りは3通りある。
A.切り–待ち
B.切り–,待ち
C.切りタンキ待ち
このうち、ヤミテンのままでもハネツモになるのは七対子のCでツモアガリのケースだけである。しかし、なにしろ1個待ちだ。
Bもおもしろいが、が場に2枚でていて、見た目枚数は–が最も多い。
新地は素直にAを選んだ。こうした以上リーチと思われたが、ヤミテンにしてしまった。これではツモってもハネマンに足りないのだが……。
ここで親の當眞からリーチが入る。
打牌は。新地のアガリ牌である。
新地の苦悩が始まった。いま動画を見返すとツモ山に手を伸ばすまでに3秒ほどの空白がある。
仮にこの満貫をアガったとしよう。
ラスは當眞のまま、さらに8Pを失う。
トップは安藤。新地は2着に浮上する。
トータルはこうなる。
安藤 +70.8
當眞+49.7
津坂 △29.0
新地 △91.5
首位は安藤に換わるが、當眞と大差ない。この二人と140~160強の差を残したまま最終戦となると、相当にキツイ。
しかし、トップを取れれば自分のマイナスは50Pほどに減り、安藤をトップから引きずり降ろすので、當眞と100P前後、安藤と70~80P差で最終戦を迎えることができる。
そして、いままたもう一つの選択肢が生まれた。當眞のリーチ棒で、このままヤミテンツモでも同点トップになれる。
――これらのことが空白の3秒間の間に新地の脳内を駆け巡った。
今期入会にして、この新人王戦の時点では研修生の新地。これほど極限の選択を迫られたのは当然初めての経験だっただろう。
3秒後、ツモ山に手を伸ばした新地はヤミテンを続行。
言い知れぬ緊張感の中、–、當眞の待つ–も現れぬまま4巡が経過する。
新地の最後のツモは。これをツモ切って當眞に放銃。
ドラ雀頭で裏ドラが、親満である。
裏ドラが……タラレバを承知で言えば、新地はリーチをしていれば、當眞からのハネマン出アガリで理想の結末になっていたはずである。ラス目ラス親の當眞は新地のリーチに降りるはずがない。
しかし、新地にしてみれば安藤からの–ポロリを逃したくない。色々悩んだ末での選択だったろう。これには疑問符は付いても100%の否定はできない。
しかし、最後のツモ切りは失着と言い切れる。アガリの可能性がある間は、この手はトップの可能性を秘めた価値がある。しかし、最後の手番でツモれなかった段階で、この手はテンパイ料の価値しかない。
安藤(津坂も)は降りている。一緒にノーテン罰符を払って、この局は終わり。そうすれば供託棒の残った1本場、今度は満ツモで単独トップとなれる1局ができる。
あまりにも安易なツモ切りだったと思う。
次局1本場、新地はまたもソーズの一色手。
一通ドラ1のカン。出てハネマン、ツモって倍満のリーチを打つが、全局の親満で2着に浮上している當眞はもう無理はしない。流局で終了した。
こうして、研修生・新地に与えられた最難関のステージは終了した。結果は残念なものとなったが、この経験は間違いなく彼の糧となるだろう。
最終戦、當眞圧倒的に有利。現実的な逆転条件が残るのは安藤ひとりとなった。