第23期新人王戦決勝観戦記(2回戦)

【担当記者:中島由矩】

2回戦(津坂-新地-當眞-安藤)

安藤馨が1回戦を制して迎えた2回戦。

■緊張がほぐれて
■肩が温まって
■相手の出方が分かって

さあこれからだ、と闘志を新たにする選手もいることだろう。ベスト8までは全3回戦だったが、この決勝戦は5回あるのだ。


【先手必勝 當眞脩平】

「2回戦の主人公」と形容しても差し支えない活躍だったのは當眞脩平。
1回戦はオーラスまでアガリに恵まれなかったものの、ラス目で迎えた親番で18000を含む連荘があり、結果2着に滑り込んだ。この2回戦はぜがひでもトップを獲り、新人王戴冠に向けて前進したい。

當眞は、麻雀で生きるために沖縄から上京し、選手としてのみならず、運営などの裏方仕事にも積極的にチャレンジしている。

當眞のアガリは、何と言っても東1局に尽きる。

ドラドラの手牌から、孤立牌の麻雀牌:五筒にくっつくツモ麻雀牌:六筒をとらえると、麻雀牌:南のトイツ落としでタンヤオへ。

8000以上を確定させるリーチを打ち、

最後は山にたっぷり眠っている麻雀牌:四筒をツモアガリ。2000・4000を先制して、その後も終始場をリードした。


【後方一気 津坂流生】

結果こそままならなかったものの、津坂流生の麻雀も視聴者の興味関心をグッと引きつけた。

元小学校教諭の津坂は、その職を辞して麻雀に真っ直ぐ向き合う。大切なものを手放して新しい環境に身を置く決断をしたという意味では、沖縄から上京した當眞にもどこか重なる部分がある。

「牌の巡り合わせ」とでも言おうか、2回戦の津坂は南1局の親番をラス目で迎えていたが、上の手が成就していたら、あるいはトップまで駆け上がることもできたかもしれない。

もしリーチをかけてドラ麻雀牌:発ツモれば、リーチ・ツモ・麻雀牌:発・メンホン・三暗刻・ドラ3の12000オールからという超大物手だった。當眞からの先制リーチにも怯むことなく押していき、マックス四暗刻まで視野に入れたダマテンに、津坂の構想力と心意気を感じる。
しかしこの局は、津坂がリーチの当たり牌である麻雀牌:二索をつかんで、無念の放銃決着に。


【23期前期入会のシンデレラボーイ 新地翔矢】

1回戦オーラスで當眞に18000を放銃し、点棒が箱下になって終局した新地翔矢は、決勝進出四者の中で唯一の23期前期に入会。当会で昨年から始まったプロ試験対策講座の受講生でもある。謙虚な気持ちで、手順も所作も丁寧に行うよう心掛ける。

スッと伸びた背筋が印象的な新地が、勝利に向けて執念を見せた瞬間は、南2局0本場。前巡ダマテンを入れていた新地は、対面安藤から先制リーチを受けると、ツモ切り追いかけリーチで応戦。

結果こそ5200放銃となったものの、戦う姿勢を見せた。


【一撃必殺 安藤馨】

1回戦トップを獲った安藤だが、いや1回戦トップを獲った安藤だからこそ、この2回戦のトップは、のどから手が出るほどほしかったのかもしれない。

安藤は、決勝戦に進出した四者の中で最年長となる今年41歳。この放送対局では、「熟練の技を見てほしい」と意気込む。

南4局0本場、安藤の鋭い押し返しが、トップ目の當眞を揺さぶる。先制リーチ津坂の当たり牌でもあるツモ麻雀牌:四萬を引いて一気通貫確定のテンパイをすると、即リーチ。

安藤はこれを一発でツモアガリ。4000オールとして、それまで5万点オーバーでダントツだった當眞ににじり寄る。

これには、トップ目の當眞も思わず苦悶の表情を浮かべた。

【四者四様の思惑が交錯する最終局 南4局1本場】

東家・安藤43500
南家・津坂△5400
西家・新地13600
北家・當眞48300

南4局0本場の4000オールで、當眞の楽勝ムードが一気に吹き飛び、當眞・安藤のトップ争いが激化した南4局1本場。
當眞がトップを獲りたいのはもちろんのこと、新地・津坂にとっても、安藤に連勝されてしまうと、自身の新人王戴冠が遠ざかる。

そんな中、ファーストテンパイは津坂。ねらっていた一気通貫にも三色にもならないツモ麻雀牌:七索は不満も不満だが、この局が長引いて安藤に連勝されてしまうくらいなら、ヒョッコリ麻雀牌:三索ツモも悪くない。縦長の展開で自身の着アップも望みにくく、ここは渋々テンパイを取った。

このカン麻雀牌:三索が、リーチのあとトップ目の當眞から出てロンアガリ。裏ドラは乗らず1300は1600となり、當眞のトップが確定した。

2回戦トップは當眞脩平。手が入ったことを生かし、常に先手を取って場を支配した。オーラスは親番安藤の4000オールと津坂への放銃にやや肝を冷やしたが、どちらも裏ドラが乗らず、これでトータル首位まで1.7ptにまで肉薄した。

2着になったのは安藤馨。1回戦トップの安藤にとって、同2着の當眞は1番トップを獲られたくない相手ではあったが、それでもまだ首位をキープしている。ここから残り3半荘勝負は、ベスト8を首位通過してきた安藤にとって望むところだろう。

3着になったのは新地。ツモがかみ合わず後手を踏む苦しい展開が続いたが、新人王戦には抜け番がない。短い休憩時間を上手に使い、リフレッシュして3回戦に臨みたい。

無念の4着になったのは津坂。麻雀には「四者の中で2番目にツイた者がラスになる」という言葉もあるが、この2回戦はまさにそのような展開だった。ただ、大物手は入っているので、3回戦以降のどこかで大爆発を起こし、この決勝をかき回したい。