第23期新人王戦決勝観戦記(1回戦)
【担当記者:今田孝志】
冒頭から余談で恐縮だが、筆者はタイトル戦決勝を観る際には、下馬評の高い選手に肩入れして観る傾向がある。
前回チャンピオンや所属リーグが上位の優勝候補選手が、順当に優勝することを願いがちである。これはニュースターの誕生を歓迎しない筆者の狭量さの表れ……ではなく、宿命的に不確実性を包含する麻雀という競技においても、強者が強者らしく実力で栄冠を手にしてほしいとの願望ゆえである。
さて23期新人王戦決勝進出者は以下のとおりである。
()内は入会期。
當眞脩平(22期前期)
津坂流生(22期前期)
新地翔矢(23期前期)
安藤馨(22期前期)
筆者もまだ入会2年に満たない新人(21期後期)だが、なんと今回の決勝進出者は全員後輩である。
新地に至ってはあまりにも入会したばかりのため、日本プロ麻雀協会ホームページの選手検索でまだヒットしないほどである(執筆時点)。當眞・津坂・安藤の3名は揃ってプロ歴1年の22期前期入会である。
4人ともここまで目立った実績はなく、この戦いがまさしく登竜門。新人王戦出場231名の頂点を制して竜となるニュースターの誕生を歓迎したい。
1回戦(新地-津坂-安藤-當眞)
試合前のインタビューで津坂と新地が「門前派」と語ったが、1回戦は激しいリーチ合戦が繰り返された。
南3局には津坂がチートイツドラ単騎で先制リーチ。
すぐに下家の安藤が追いかけリーチ。
さらに同巡、當眞も追いかけて、あっという間に3人リーチとなる。
この局が最も激しい戦いとなったが、全18局で合計21回のリーチを互いにぶつけ合った。
プロ歴の浅いフレッシュな新人たちのリーチ合戦というと、勢い重視の粗削りな戦いがイメージされるかもしれないが、むしろスマートで洗練されている印象を受けた。4人とも所作が落ち着いていてバタバタするところがなく、選択が難しい場面でも判断が非常に素早かった。手なりの進行だけでなく、決勝の舞台に立つにふさわしい技を随所に見せてくれた。
南2局2本場
ラス目の當眞の配牌はダブリーチャンス。
しかしダブリーはならず。當眞はこのあと4巡目に打たれたをスルー。
さらに6巡目の2枚目も見送った。
そしてを引くとリャンシャンテン戻しのトイツ落としを敢行。
テンパイ一番乗りは新地。
だが新地はテンパイ取らずの打。イッツー目を残して役なしカンチャンテンパイを外す。
「リーチ」
と来たのはトップ目の津坂。
リャンカン形から切りでカン待ち。直前にが切られたことで、見た目枚数で待ちを選択か。
當眞が追いかけリーチ。
高めドラならマンガンから。ダブリーチャンスの配牌から、タンヤオ・ピンフ含みの手に再構成してきた。
ダブ南を暗刻にした安藤がをチー。
途中、チートイツのイーシャンテンになるが、トイツをほぐしてメンツ手へ。
2軒リーチに安全牌を切りながらテンパイを入れる。
そして安藤のツモアガリ。
2軒リーチを搔い潜って値千金の1000-2000は1200-2200。
安藤のチーによって、當眞の高めが食い流れていた。
安藤はこれで僅差ながらトップ目に立つ。
そして南3局は上述の3人リーチのぶつかり合い。
安藤はこの捲り合いを制して4000オール。拮抗する展開から大きく抜け出した。
なおこの局、當眞はを暗槓してのリーチだったが、アガった安藤がめくった裏ドラ表示牌の1枚はだった。當眞は裏ドラが4枚乗っていてツモればハネマンだったが、ここも一歩及ばず。
惜しい場面は多々ありながら、當眞はアガリのないまま南4局2本場の親番をラス目で迎える。
まずをポンして津坂から1500は2100の初アガリをものにすると、3本場は新地とのリーチ合戦を制して3900は4800のアガリ。
南4局4本場。
2着目の津坂は、トップ目の安藤を逆転するにはバイマンツモが必要。
3着目の親の當眞が4700点差まで迫っている。
4巡目。ここからを暗槓。
下よりも上を見た積極策。
リャンメン2つのイーシャンテンで、カンドラや裏ドラ次第ではバイマンに化けることもなくはない。
だがリンシャンからを引くと、ドラ受けかつ567の三色の種となるをリリース。
津坂のカンのあと、新ドラのを立て続けに引いた當眞がテンパイ。
配牌から狙いを定めていた単騎待ちリーチを打つ。これに新地が一発で放銃。18000は19200点。
新地は箱下の4着に叩き落され、津坂も3着に着ダウンとなる。
トップを取ったのは、オーラスの當眞の追撃を振り切った安藤。當眞が2着。
トップを取った安藤と、オーラスに2着順アップと20000点以上の素点を稼いだ當眞は、気分良く2回戦に臨めるだろう。
津坂と新地は3着、4着に終わったとはいえ、まだ1回戦が終わったばかり。門前派と語った2人だけに、2回戦以降「リーチ」で局面を打開していきたい。
最後に点差は離れたが、1回戦はがっぷり四つに組んだ好ゲームであった。
第23期新人王を戴冠して華々しい麻雀プロ人生の一歩目を踏み出すべく、若きファイナリストたちが残り4回戦を戦う。