第20期雀竜位決定戦観戦記 3日目/最終日(14回戦)

第20期雀竜位決定戦観戦記
3日目 14回戦

【担当記者:大浜岳】

タイトル戦の醍醐味の1つとして、
『自分以外の条件を把握し、それを局のテーマや打牌選択に落とし込む』というものがある。

現在のトータルポイントは下記の通り。

純粋な麻雀の実力に加え、「最終戦をどのようなポイント状況で迎えるか」を考えて打つ力が必要になる半荘になりそうだ。

大まかな条件としては、
■秋山⇒トップを取れば最終戦を待たずして優勝
■吉田⇒トップがほしいが、秋山より上の着順であれば最終戦トップ+α程度の条件で優勝
■富永⇒トップがかなり必要だが、秋山より上の着順であれば最終戦で秋山とトップラス+α程度の条件が残る
■小池⇒トップ必須

これが開始前の各者が共通認識として持っている情報となる。
秋山以外の三者の共通認識としては「秋山のトップ=負け」である。

各々が条件を踏まえた上で迎えた南3局。

南3局5本場 供託1000
東家:秋山 23200
南家:小池 7100
西家:富永 23900
北家:吉田 44800

秋山と吉田は比較的考えることは少ない。
■秋山は吉田を捲るのが目標。
■吉田はこのままトップを維持できれば、秋山が2着であっても1着順+7200点差なのでそこまで着順を意識をする必要はない。

■富永は供託等を考えるとマンガンを2回アガるとほぼ吉田を捲る形となる。
※計算を簡略化するために以下のポイントは大まかな値で示す。

仮に富永がマンガンツモ2回した場合のトータルポイントは、
秋山+90p
富永+70p
吉田+45p
となり最終戦秋山より着順が上なら優勝となる。
これがプランA。

プランBはトップは諦め、2着でこの半荘を終える。
仮にこの点数状況のまま終了した場合のトータルポイントは
秋山+95p
吉田+90p
富永+10p
やや厳しいが1人とトップラス、1人とトップ3着で2万点差条件。
着順操作さえうまくいけば4万点トップ程度で良いことになる。

逆に秋山に2着を取られた場合は、
秋山+115p
吉田+90p
富永▲10p
秋山とトップラスで45000点差、かつ吉田を3着にして40000点差が必要となる。
着順操作が上手くていっても6万点程度は必要だろうか。どちらかが2着の場合は8万点トップとかなり厳しくなる。

なのでこの局の富永としては、無理なくマンガン以上を狙えるならプランA、そうでなければプランBを目指すことになる。

■小池はトップが必要だがラス親が残っているので簡単そうに見えるも実はそうではない。
仮にこのままオーラスを迎えた場合、トップ目の吉田はもちろん、2着を是が非でも取りたい秋山と富永も打点を問わず全力でアガリに向かう進行となる。
つまり軽い手で秋山の親を流すことは、自身の親番で1対3の状況を作り上げることになってしまう。
そのためこの局は「ある程度大きい手を」「誰かからの直撃」することが望ましい。
最善はトータルポイントも考えて秋山からの直撃、次点はオーラスの条件を苦しくするため富永から、三番手はこの半荘トップ目の吉田からの直撃である。

そいて富永の配牌がこちら

 ドラ

はっきりと三色が見えるため完全にプランAだ。
しかしこの手がなんとテンパイすら出来ずに終わってしまう。

続いて小池、中盤にテンパイを果たすがドラも役もないためヤミテンに構える。
14巡目にドラの北をツモりテンパイを外すと、16巡目にドラが重なりリーチ。

 ドラ

終盤に形式テンパイを入れた富永からが放たれる…がこれを見逃す。
恐らく現状の富永2着・秋山3着の並びをキープしたかったのだと思うが、これはアガった方が良いだろう。

確かにこの半荘で秋山をできるだけ沈めておきたい気持ちは分かるが、大前提として「トップを取らないと負け」なのである。
前述の通り、このままオーラスを迎えると自分以外の三者が1000点をアガリにくる中、トップを捲るために37700点以上吉田との差を詰めなければならない。
これを富永からアガり、仮に裏ドラが1枚乗った場合吉田との差は約29000点。
決して楽な道のりではないが、富永はオーラス最低マンガンツモ条件の手作りをしてくることになり、3対1の構図を崩すことができる。

仮に、オーラスに吉田を捲ってトップになり、秋山が3着をキープした場合の最終戦前のポイントは、
秋山+90p
吉田+45p
小池+30p
となり、秋山に対してトップ-3着で無条件優勝となる。

もちろんあくまでトップを捲ることが出来れば、であるが…
結果この後秋山の連荘を許すこととなり、小池の雀竜位決定戦は事実上終焉となる。

南4局8本場 供託2000
東家:小池 ▲100
南家:富永 24400
西家:吉田 43300
北家:秋山 30400

これもまた面白い。
吉田はこのまま終わりたい。
秋山は3200以上を吉田から直撃すればトップを取ることが出来るが、富永はツモなら何点でも、出アガリなら1600点で同点2着、2000点以上で秋山を捲り単独2着となる。
そのため秋山は軽くアガって終わらすのも一つの手ではある。

となると、吉田と秋山はライバルではあるものの上家・下家の関係なので、秋山が軽い仕掛けを入れた場合はアシストに回る可能性もある。
結果として吉田が仕掛けてアガり、最終戦は秋山vs吉田の構図となった。

その差は29.3p。
吉田はトップなら無条件、トップ以外でも1着順+9300点差をつければ逆転優勝となる。
勝つのは果たして…