第21回日本オープン観戦記(5回戦)

【担当記者:五十嵐毅】

最終戦を迎えてのポイントは。
岩崎+119.2 飯田+12.9 コウ△54.9 佐月△77.2

岩崎圧倒的に有利。飯田は24400差のトップラス、または44400差のトップ3着。(同ポイントの場合は準決勝1位通過の岩崎が勝ち。コウ、佐月に対しても同じ)
この飯田の条件も楽ではないが、まだ現実的だろう。他2人、コウは94200差、佐月にいたっては116500差のトップラスである。2人とも2着に飯田が入った場合、飯田との点差も必要なのだが、両者とも条件を満たすときは点棒を荒稼ぎしたときで、自然と飯田との点差もできているだろう。ともかく2人とも(とくに佐月は)点箱が溢れかえってからでないと、現実的な優勝条件が見えてこない。

座順は、コウ―佐月-飯田―岩崎の並び。
ここまで首位の岩崎がラス親なのは決まっていることだが、飯田が西家スタートを引き当てたのは大きい。先に親が終わるコウ、佐月に制限がかかるであろうラス前で粘れるからだ。

東1局は岩崎が麻雀牌:中ポン、ドラ1の2600をコウから。コウの大事な親番はすぐに終わった。
次の親の佐月は粘った。
まずは三色の高目を引いて4000オール。これをあと6回やれば奇跡が見える。

1本場はドラのカン麻雀牌:七筒をスッポリ入れて打麻雀牌:八萬麻雀牌:九萬麻雀牌:一筒のシャンポンリーチ。

飯田がドラのカンチャン待ちで追っ掛けたが、こちらは1枚残り。

対して佐月は4枚丸生き。飯田が麻雀牌:一筒を掴んで3900+300放銃。

2本場、コウがリーチ一発で高目をツモり、裏ドラものせて倍満。

東3局、親の飯田が七対子麻雀牌:九筒タンキでリーチ。4人の捨て牌はこう。いかにもアガれそうである。

しかし、チャンタ狙いの佐月がトイツで持っており、実は純カラ。

飯田、この日だけでも七対子を何度か成功させている。ヤマ読みに自信があるのだろう。しかし、この最終戦に限っては場況に裏切られている。
ドラ麻雀牌:二索をアンコで抱えた岩崎が追っ掛ける。

この麻雀牌:三筒麻雀牌:六筒も残り2枚と薄かったが、なにしろ飯田の待ちはカラである。勝ちようがない。麻雀牌:六筒を掴んで放銃と、最悪の結果に。

東4局、マンズホンイツの佐月が切ったドラ麻雀牌:八索を飯田がポンで仕掛ける。
岩崎はもちろん無理することなく親を流す。飯田とコウがテンパイ。

南1局流れ1本場。親のコウが麻雀牌:南ポンと仕掛ける。
すると、岩崎がリーチ。

岩崎の手はピンフだ。ヤミが利く。逃げるだけの立場なので当然ヤミにするだろうと思っていたので意外だった。
ポンしたので親からの追っ掛けリーチはない、場況がいい等の肯定材料はあるが、もうひとつ、対局後に岩崎自身が語ったこととして、
「ラス前(コウ、佐月に制限がかかる)に備えて飯田さんとの点差を広げておきたかった」
しかし、今度は岩崎が場況に騙された。この麻雀牌:三萬麻雀牌:六萬待ちはすぐに空テンになる。
そして、麻雀牌:三萬麻雀牌:六萬を持たないコウがさらに麻雀牌:北をポン。
この手である。

コウは少考の末、麻雀牌:四索を切って場に3枚切れのカン麻雀牌:三索にした。
意図はわかる。この形のままアガりたくないのだ。アガるだけならシャンポンのほうがいい。この手は仮のテンパイで、コウの頭の中では小四喜のリャンシャンテンなのだ。麻雀牌:西を持ってきて麻雀牌:東をポン、麻雀牌:東をポンしてから麻雀牌:西引き、どちらでも良い。相手はツモ切りマシーンになっているのだから。
ところが、アガり辛くしたらはずのラス牌をすぐに持ってきてしまう。コウは考えた末にツモを宣した。

「小四喜にしたかったから、わざわざアガリ辛くしたのに。さすがにアガらないのは無茶しすぎかな、と」
対局後の発言である。岩崎の待ちが純カラと知っていればねぇ……。

1本場、飯田がタンピンをリーチして一発ツモ。

南2局、親の佐月、3巡目に絶好のペン麻雀牌:三萬を引き入れてリーチ。
13巡目に麻雀牌:三筒でツモリ三暗刻の4000オール。

しかし、3巡目にあっさりテンパイするのでなく、麻雀牌:一萬麻雀牌:二萬を重ねたかっただろう。それならば麻雀牌:三筒ツモ後の残り4巡が楽しめたはずである。

佐月は次局もリーチ。

飯田がマンズの一通出来合い、麻雀牌:二索麻雀牌:白のシャンポンで追いかける。
結果は飯田がツモ。

いよいよラス前である。点棒状況は、
佐月 35800
コウ 31400
飯田 16600
岩崎 16200
となっている。飯田、上との点差はまだあるが、佐月やコウが簡単にアガれない中で、6000オールなら一発、あるいはそれに見合う連荘をし続ければ、トータルポイントは岩崎と入れ替わる。
それがわかっている岩崎、ここだけは自力で行くと、麻雀牌:発ポンで目一杯。
飯田は手が遅かったが、終盤に形テンを入れて連荘。
1本場も岩崎は仕掛ける。今度は麻雀牌:八索ポンで發バックの仕掛け。
飯田も麻雀牌:中ポンで喰いテンを入れる。結果は岩崎が、麻雀牌:発が鳴けないイーシャンテンのまま飯田に放銃。1500+300。

2本場、岩崎の恐れていたことが起こる。飯田がリーチと来たのだ。

リーチは本当に怖い。実際にはドラも何もない麻雀牌:二筒麻雀牌:西のシャンポンだが、裏ドラがのるかもしれない。4000オールと言われたら、もう逆転は目の前なのだ。

しかし。ここに救世主が現れる。コウがリーチときたのだ。

岩崎はオリるだけなら麻雀牌:七索切りだろうが、飯田にツモられる前に一刻も早くと、飯田の現物でコウに当たりそうな麻雀牌:二索を即座に抜いた。

リーチ一発タンピン三色。
岩崎、飯田の親を終わらす=勝利がほぼ確定となる、ハネ満のサービス放銃である。

オーラス、飯田にはコウからの倍満直撃、三倍満のツモ、役満ならどこからでもOKという条件は残ったが、静かに流局した。

準優勝となったコウ。だが、それは狙ったわけではないと即座に否定した。
「あれをアガっておくと、オーラス役満直撃条件だけは残る。その条件すらなくなると、オーラスやることがなくなるので。最後まで優勝を考えていました」

飯田雅貴、最後まで岩崎を追い詰めたが、結果は3位で終わった。やはり3連覇は難しい。しかし、優勝者がディフェンディングではなくベスト16シードのこの大会で3年連続決勝というだけでも偉業なのだ。来年はもうワンランク下のシードになるが、それでも決勝に来るだろう。

「私の日本オープンは最初の2回で終わっちゃいました」と語っていた佐月麻理子。最終戦の親番のみ手が入っていたが、あれがもっと早く来ていればと思わせた。日本オープンで女性の優勝は魚谷侑未プロ(連盟)だけだが、次は期待したい。

そして優勝は岩崎啓悟。スタートダッシュ良く2連勝。その後の打ち方も隙がなく、完璧な勝利だったと思う。ネット麻雀・天鳳では「シンプルなワキガ」の名前で十段。鳴り物入りで18期前期に協会入会。入ってすぐにオータムチャンピオンシップで優勝。そして今回の日本オープン。6年間でタイトルを2つ取る者はなかなかいない。
この優勝で雀王戦のリーグも特別昇級となるので、皆さんにも注目していただきたい。
打ち上げの席で、佐月が「本当にワキガなの?」と言って臭いを嗅いでいたが、その感想はここには書かないでおきます。