第20回日本オープン観戦記(4回戦)
【担当記者:中島由矩】
「飯田さん、頑張ってください!」
というファンからのコメントに対し、
「ありがとうございます。人間力でなんとかします」
と答える。
筆者は兼ねてより、飯田のSNSには注目していた。シンプルに面白く、見ていて楽しい気持ちになるからだ。
飯田は、自分を大きく見せようとはしない。自身の強さの秘訣を明らかにしようとしない。それは、隠しているというよりはむしろ、照れてまぜっかえしているようにも見える。
あるいは、「麻雀て、語れない部分が大きいゲームだよね」「麻雀てやつは本当によく分からないよ」と言っているようにも思える。
当会4期入会、飯田雅貴。前回大会の覇者であるが、今大会は雀王決定戦や雀竜位決定戦とは異なりディフェンディング制ではないため、今大会はベスト16から登場している。
前大会ファイナリストの柴田吉和が辛酸をなめ、荒木かずが苦渋を飲まされ、宍戸涼が敗退したあのベスト16を、自身が標榜する人間力で勝ち上がってきた。
4回戦(村田-飯田-五反地-岡本)
東1局0本場、五反地から2巡目にリーチがかかったとき、飯田は必死に現物を並べて耐えた。そして東1局2本場、満を持して前に出る。
メンツ手とトイツ手を天秤にかけながら進行していたところ。ツモで七対子のテンパイになった。
飯田は他家の河に2枚見えている打として、リーチを宣言する。
飯田はこのタンキをツモり上げ、リーチ・ツモ・タンヤオ・チ-トイツ
2000/4000を手にする。ここまでの3回戦を終えてトータル首位の飯田。この4回戦をトップで終えることができれば、5回戦を消化試合にしてしまうこともできるか。
一方、思うように先手が取れず、構想とツモがかみ合わない展開が続く、トータル2位の岡本壮平。東2局1本場に反撃の狼煙を上げる。
イーシャンテンの形がこう。
ドラ
カンから入れば高め三色の三面張になったのだが、ツモでリーチ。
ツモに裏ドラを1つ乗せ、リーチ・ツモ・ドラ・裏の、こちらも2000/4000を手中に収めた。
このタイトルを獲って雀王戦B1リーグに特別昇級したい五反地清一郎は東3局0本場、自身の親番で決意のリーチ。
とのシャンポン待ちなのだが、まず打点はツモり四暗刻で役満、出アガリは12000から。待ち牌であるは1枚、は2枚、それぞれ山の中に眠っている。つまり、先にツモをとらえることができていたら、四暗刻タンキ待ちになった未来もあった。
東1局0本場の2巡目リーチもかわされた五反地、先の岡本がそうだったように、こちらも最高の結果とはいえないものの、必死に食らいついていく。
五反地が16000オールを手にするか否か、もしそうなった場合はトータルスコアはどうなるのか、実況解説を含めた多くの視聴者が固唾を飲んで見守る中、村田昴が追いかけリーチ。
ドラ1内蔵で、待ちは–なのだが、五反地のシャンポン待ちの片割れでもあるはすでになく、は
飯田が固めていた。村田、最後の1枚を引けるか。
結果は五反地が村田から出アガリ。表ドラ・裏ドラともになく、リーチ・三暗刻・トイトイの12000にとどまった。
ラス目から着順を1つ上げるアガリに不満を言うのははばかられるが、ツモった場合の48000や裏ドラが3枚乗った場合の24000を考えると、少々物足りなさを感じる。
トータル4位でこの4回戦もラス目になってしまった村田昴。痛恨の12000放銃となった村田だが、次局にすぐさま反撃。
お世辞にもいいとは言えない配牌を丁寧に育て、細い糸を懸命に手繰って高めを引き入れ、ようやく村田がテンパイにたどり着けたのは実に12巡目のことだった。三色確定のペン待ちでリーチ。
実はこれも先ほど五反地にめくり負けた時と同じで山にはたった1枚しかなかったのだが、村田はラス牌を見事にツモアガリ。リーチ・ツモ・三色の2000/4000とした。
悲願の初戴冠に向けて3者が必死に戦う中、飯田の人間力は接戦の終盤にこそ輝く。
トップ目の村田まで1600差に迫った南3局3本場、飯田はテンパイを入れるもののリーチせず。役がないためこのまま出アガリすることはできない。しかし
飯田はをポンして打。タンヤオに振り替え、
にロンの声をかける。この1000は1900でトップ目に。
南4局0本場は、結果として親番岡本への放銃に回ってしまったものの、オタ風のから仕掛けて3副露イーシャンテンという積極策。
仕切り直して3着目で迎えた続く南4局1本場、飯田は配牌で役牌の・、自風のの3種類を手にし、第1ツモでその中の1つであるを重ねる。
場に1枚見えていて山にあと1枚しかないを持ってきてテンパイを入れると、
五反地の仕掛けをケアして
ツモで打とスライド。繊細な技が光る。
最後は村田からをとらえて1300は1600でトップを奪取。逆に村田はトップ目から3着に降着となってしまった。
かくして着順が確定した。
4回戦トップは飯田雅貴。難しいトイツ手を高打点に仕上げ、微差の終盤で巧みに役ありテンパイを組んで見事差し切った。
2着は五反地清一郎。東3局の親番でツモり四暗刻テンパイをするなど見せ場を作ったが、望んだ結果は得られなかった。
3着になったのは村田昴。東3局1本場にラス目に落ちてから、執念でトップ目まではい上がってきたが、最後は力尽きた。
4着は岡本壮平。厳しい展開が続くものの、麻雀は最後の1牌まで何があるか分からない。