第18回日本オープン観戦記(2回戦)
第18回日本オープン決勝観戦記
2回戦
【担当記者・中島由矩】
2回戦(宍戸-柴田-荒木-皆川)
2013年【ビリギャル】で一世を風靡した坪田信貴氏は【才能の正体】という本の中で、
「本が売れてから、なんの変哲もないメールの文面まで褒められるようになった」と語っている。才能という言葉はそのくらい曖昧模糊(あいまいもこ)なものなのだ、と。
日本オープン準決勝を首位で通過し決勝卓についた宍戸涼の才能について私が書くのはいわゆる後出しジャンケンの部類に入るのだろうが、宍戸は2021年3月に23歳で当会に所属すると3か月後の6月には風林火山オーディションに出場していた。
当会20期前期入会組でこのオーディションに出場したのは、宍戸と長澤茉里奈の2人だけだ。
プロになった理由を宍戸に聞いてみたところ、「親を説得するためです。大学を中退して本気で麻雀界で生きていくという意思表示をしたかったので」という返事が返ってきた。
前述のオーディションでも、「トップでMリーガーに」とはいかなかったものの、並み居る強豪たちに勝って16半荘で234・3ものポイントを積み上げ、168人中26位でフィニッシュしている。
初の放送対局1回戦を2着で終えた宍戸は、ホッと一息つく間もなく2回戦に突入していった。
後に【日本オープン決勝卓で初のトップ】となる記念の半荘、かつ【日本オープン全体の敗着となるアガリ逃がしだった】とガックリと肩を落とすことになる局のいずれもこの2回戦だった。
東家・宍戸25000
南家・柴田30200
西家・皆川21400
北家・荒木23400
と、東場を終えて微差の2着目で迎えた南場の親番で宍戸の天国と地獄が順にやってくる。
まずは天国から。南1局。
宍戸は2巡目にを重ねて
ツモ ドラ
早くもチートイツのイ―シャンテンとする。
ところが先制は北家の荒木。イ―シャンテンになったところで4枚あったを暗カンすると、新ドラがでリンシャン牌がテンパイとなると至れり尽くせり。
待ちはカンと愚形ながら、当然の切り立直とした。
直後に宍戸は狙いの1つとして手に残していたを重ねてテンパイ。
打牌はドラのを合わせて……ではなく、無筋のを勝負し単騎の9600で息をひそめて他家の合わせ打ちをねらう。
そのは皆川の手に1枚あるものの、ここは宍戸の打を評価して打。すると立直者・荒木の一発目のツモがラス牌のであえなく御用となった。
これには荒木もこの表情。麻雀は時に残酷で、だからこそ面白い。
1回戦をトップで飾りこの2回戦もここまでトップ目だった柴田をかわして一躍2回戦のトップ目に立った宍戸は、なおも攻撃の手を緩めない。
南1局1本場
ツモ ドラ
ソーズを両面カンチャンの形で持っていたところに首尾よく三色目が残るツモ。
ツモ ドラ
イ―シャンテンから宍戸が引いてきたのはだった。
ここでの打牌選択こそが、5回戦終了後に自身で「日本オープンの敗着」「観戦記で酷評してください」と語ったシーンだ。
形自体はまごうことなきテンパイ。打牌は、シャンポンに取る打とペンチャンに取る打がある。
シャンポンの場合場風のが高め、ペンチャンの場合は123の三色が確定するものの待ち牌であるはドラだ。
河には、、すべて1枚もなく、ピンズに限って書くと宍戸自身の河にが2枚、荒木の河にが1枚、皆川の河にとある。
ここでモタつくと傷になる可能性があるのでスッと選びたい。宍戸が選んだのはシャンポンとなる打だった。
そして立直後にツモった牌は……。
日本オープンの準決勝を首位で通過して決勝卓についている20期前期同期を観戦記で酷評することなど私にはできないが、イチ宍戸ファンとして書かせてもらえるならば、ドラのを力強く引き寄せ、裏ドラを1枚乗せて6000は6100オールをアガった宍戸が見たかったとだけ記しておこう。
この局は宍戸の1人テンパイで流局したから裏ドラは分からなかったけれど。
南4局開始時点での点棒状況は、
東家・荒木3400
南家・宍戸40000
西家・柴田29400
北家・皆川27200
となっており、2着目の柴田は
■トップ目の宍戸まで満貫ツモで届かないこと
■1回戦トップだったこと
■3着目とわずか2200点差であること
という3つの事情を鑑みて、無理に2回戦のトップを取りにはいかず、自風のから仕掛けて1000/2000ツモで2回戦終了となった。
コロナ禍で人々が集まることを制限される中、当会には19期・20期、そして先日21期が入会している。
競技麻雀ファンのみなさま、また諸先輩方におかれましては、第18回日本オープン決勝の19期・荒木一甫と20期・宍戸涼をどうぞよろしくお願いします。
ししどん、残り3半荘も頑張ってね!