第24期雀王決定戦観戦記 2日目(6回戦)

【担当記者:中島由矩】

6回戦(橘-仲林-矢島-西村)抜け番・千貫

観戦記において、実況者や解説者が話題に上ることは、あまりない。

しかし筆者は、近年新しい試みとして導入されたインタビューとともに、観戦記を書く際の頼りにしている。今回は、2人の軽妙なトークが面白かったので、画像入りで紹介させてもらう。

まずは東4局0本場の場面から。

五反地「テンパイしました!すご!国士無双の話してたら!麻雀牌:中待ちのテンパイ!」

浅井「ヤバイ!静かにしたほうがいい、みんな。見てる人も。(うるさいと対局者に聞こえて)バレる可能性ある。バレる可能性ある」

五反地「いやいや、見てるみなさんは盛り上がってくださいね」

浅井「ルーレット始まった」

続いて、すぐ次局である南1局0本場の場面。

五反地「うわ!テンパったよ!」

浅井「役満て2局連続で入ることあんの?」

五反地「さっき(静かにする)練習しといてよかったですね。静かにしなきゃいけないから」

浅井「これはツモだからうるさくしてもいいですよ。さっきの(国士無双)はバレたら終わりだから。これはバレてもツモらなきゃだから」

役満は、麻雀の華である。大三元は白・赤・緑の三色が美しく、国士無双はダマテンで闇討ちし、四暗刻は力強くツモアガる。

野球のライトファンがホームラン集やファインプレー集に心躍らせるように、サッカーのライトファンがゴールシーン集に胸をときめかせるように、すべての麻雀ファンは役満が見たい。

6回戦は、2度あった役満のシーンを中心に振り返っていこう。

【東4局0本場】

東家・西村雄一郎 34600
南家・橘哲也 19000
西家・仲林圭 25600
北家・矢島亨 20800

通常、国士無双は、チートイツやホンイツ、チャンタなどと天秤にかかるケースが多い。矢島は優先順位の順に、①ホンイツ・②チャンタとしていた。5巡目の打麻雀牌:二萬まではホンイツも見ていたが、このツモ麻雀牌:南で完全に国士無双にねらいを定める打麻雀牌:七萬

仲林と橘の河にそれぞれ1枚ずつあり、山に2枚眠っていた麻雀牌:九索を引き入れ、麻雀牌:中待ちでテンパイ1番乗りを果たす。冒頭で解説の浅井が言った「ルーレット」とは、この麻雀牌:中を誰がつかんで放銃するかのくじ引きを表現したわけだ。

そんな中、ルーレットを1回拒否し、テンパイを入れたのは仲林。カン麻雀牌:五筒をチーして麻雀牌:二筒麻雀牌:五筒待ちに。

さらに、親の西村がチートイツでリーチ。山に2枚ある麻雀牌:七索タンキで勝負をかける。西村はのちのインタビューで「無邪気にリーチしちゃって…」と頭をかいた。

山に4枚の麻雀牌:二筒麻雀牌:五筒vs山に2枚の麻雀牌:七索タンキvs山に2枚の麻雀牌:中待ちは、枚数通り、仲林の麻雀牌:二筒麻雀牌:五筒が競り勝った。西村がつかんで仲林が牌を倒す。

大魚を逃した矢島を、スイッチャーが意地悪くねらう。あと1枚が、遠い。

【南1局0本場】

東家・橘哲也 19000
南家・仲林圭 27600
西家・矢島亨 20800
北家・西村雄一郎 32600

4着目で親の橘が、12巡目に先制リーチ。アガって点棒を増やし、連荘を目論む。

「ドラ表(示牌)の麻雀牌:八筒が引けて驚いた」

と、後のインタビューで語った西村が追いつき、こちらはダマテンを選択。麻雀牌:九萬は仲林の河に1枚と、橘の入り目で1枚使われており、山にはない。麻雀牌:九筒は矢島のホンイツに1枚使われていて、残り1枚は山に眠っている。

しかし、矢島にとって、ピンズが伸びたことが災いした。カン麻雀牌:三筒を引き入れて、麻雀牌:五筒麻雀牌:八筒待ちでドラ切りリーチ。

「ロン、12000」

西村は、静かに牌を倒した。2着目の仲林とは、元々5000点差だったが、このアガリで18000点差に。

【南4局0本場】

東家・西村雄一郎 49600
南家・橘哲也 14000
西家・仲林圭 27600
北家・矢島亨 8800

5200点上の橘をかわし、ラス抜けを目論む矢島が、8巡目にメンタンピンで先制リーチ。イーペーコーがつく高めの麻雀牌:五索ならどこからでも、安めの麻雀牌:二索なら橘を直撃できれば、逆転という条件だったが、

矢島は高めをツモアガリ。さらに嬉しい裏ドラも1枚乗せ、3000・6000に仕上げた。

6回戦トップは、西村雄一郎。初日の5回戦を終えて首位に立ったところから、さらにリードを広げた形になる。しかし本人は、「ポイント差は気にせず、フラットな気持ちで麻雀を打ちたい」と語った。

2着は、仲林圭。漫画「スラムダンク」の名セリフを借りれば「まだ慌てる時間じゃない」というところだろうが、西村をこれ以上走らせるのは本意ではない。

3着になったのは、矢島亨。自身は国士無双テンパイを空振りし、ダマテンの12000に放銃し、傷だらけの泥だらけになりながらも、最後に3000・6000を手にして着アップしたところはさすがだった。まずは最終日に残ることを、そしてその向こうに2度目の雀王戴冠をにらむ。

無念の4着になったのは、橘哲也。これでトータルポイントがマイナスに沈み、足切りが気になるポジションになった。切り替えて、立て直しを図りたい。